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異世界の年越し

すみません、魔法は明日からでした。ちょっとだけ寄り道です。

【魔力操作】の訓練が終わった次の日は、今年最後の日だった。所謂、大晦日だ。この国?この世界の暦は、1月が30日で、12月あり、1年が360日。1週間は、6日で5週間ある。地球より少し短い。73年で1年違うだけだから、あまり気にしてもしょうがないかな?


一応、四季もあるけれど、夏が長く他が短いようだ。作物が良く育つから夏が長い方が良いみたい。このサンローゼ子爵領の年末は、短い冬なのに結構寒い。領街がある平野にはあまり積もらないが、毎年5-10cmくらいの積雪もある。この積雪で毎年2-3人は凍死したりする厳しい異世界である。


話が逸れたので戻すと、今日は大晦日だ。日本の様に、大掃除や年越しソバ、歌合戦などのイベントはない。それこそ、年末の休暇だってない。


サンローゼ家で働いている人々は、交代で休暇を取っているので決してブラックな家では無い事をご報告?します。


とはいえ、1年の最後の日に何もしないかと言うとそうでもない。領民に毎年、ルークからお酒と少しだが食べ物が振舞われる。


それを持ち帰ったり、持ち寄ったりして領民達は、年越しを祝っている。


サンローゼ家では、この日だけは大広間でみんなで食事をする。何時もの食事より大分豪勢で、いつものパンとスープとサラダだけではなく、パスタみたいな麺料理と肉料理が並ぶ。


少量だが、お酒も振る舞われるのでみんな凄く楽しみにしている。


今年は、ベンジャミンが訓練の合間に狩りに行っていたようで、メイド達が騒いでいた。


カインは、訓練でぼろぼろだったので、何が獲れたのか知らない。アリス姉さまも興奮してたから、よっぽど凄いのだろう。


---

夕食の用意が出来たので、大広間に行くと大きなテーブルに大量の食べ物が載っていた。一番目に付くのは、体長2mもあるワイリーボア(どこぞの猪か?)の姿焼き。その周りには、ホロホロ鳥の丸焼きも。

料理長達がんばったなぁ。肉だけでなく、ワイリーボアのベーコンとホウレン草に似た葉物野菜とのパスタ。ミネストローネの様な具沢山のスープと角ラビットのクリームスープ。シェフの気まぐれサラダ?、ドライフルーツのパウンドケーキとデザートまであった。


若いメイド達が料理の数々を見てはしゃいでいる。その中を家宰のランドルフが、ワインを注いで回っていた。従者達がかしこまりながら、ワインを注いでもらっていた。


ワインが皆に回った頃、ルークがリディアと現れる。

「今年も一年、皆ありがとう。今年はベンジャミンと料理長が頑張ってくれたので、豪華な晩餐会になった。楽しんで食べて、飲んでほしい。 乾杯!」


ルークの掛け声と共に、年越しの晩餐会が始まった。カインは、アリスと共にホロホロ鳥を取りに行き思いっきりかぶりつく。今夜だけは、無礼講なのでテーブルマナーに厳しいランドルフも見逃してくれる。スープ、パスタと色々食べて、いつもはあまり話さないメイドや従者と話をした。


「カイン」

リディアとルークが、カインを呼んでいた。カインは、パウンドケーキを皿に取り2人がいるテーブルに座る。


「ベンジャミンに聞いたぞ、毎日訓練を頑張ったそうだな。えらいぞ」

ルークは、素直にほめてくれた。


「ベンジャミンは、口数は少ないけどカインの事が大好きだから、優しく教えてくれたんじゃない?」

何も知らない、リディアが言ってくる。


「...」カインは苦しく、痛かった記憶が蘇り固まった。

「「どうした(の)、カイン?」」


「い、いえ。ベン兄さまは丁寧に教えてくれました。そのおかげで、昨日【魔力操作】のスキルを取得できたんです」

カインは、努めて明るく答えた。





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