魔力操作習得6 ~維持~
『羅刹ベンジャミン...』
「カイン、なんかいったかい?」
冷たい笑みを浮かべたベンジャミンが見ていた。
「な、何にも言ってないよ。次は何をすればいいの?」
カインは慌てて取り繕う。
『ベンジャミンは、心までも読めるのか?』
全身に嫌な汗をかきながら、次の指示を待っていた。
「一度 ”魔力”が抜けてしまえば、大丈夫だろうから少し手を離して輪を作って”循環”をしてみてごらん」
ベンジャミンはお手本を見せた。
ベンジャミンの離した手と手の間を透明な何かが右手から出て左手に入っていくのが朧気に見えた気がした。
カインも真似をして行うと出る時と入る時に少し抵抗があるが"魔力"のかたまりを"循環"する事が出来た。
「うん、うん、いい感じだね。じゃあそのまま”循環”をし続けて」
ベンジャミンは、またカインをジッと見つめながら指示した。
2時間後、休憩も無しで続けた。結果、手のひらであれば何処からでも"魔力"を出し入れ出来る様になった。
「よし、今日はここまで。明日また続きをしよう」
ベンジャミンは、訓練を見ながら読んでいた本を片付け始める。
「まだ、まだ出来ます。ベン兄さま、続けさせてください」
夕食までまだ、3時間程時間があった。
「休むのも訓練の内だよ。それに”維持”は、最初だけ外で練習しないと危ないんだ。だから明日は、一日城壁外に出て訓練するからね」
「ベン兄さま、今なんて?今なんて言いました?」
「休むのも、訓練の内?」
「その後です!」
「ああ、カインは城壁外にまだ出た事が無かったんだね。明日は、城壁外に出て訓練するよ」
「よし! よし!」
カインは、ガッツポーズを何度も行った。
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次の日、ベンジャミン、カイン、護衛の兵士2人で城壁外に来ていた。城壁外と言っても城門から500mも離れていない。それだけでもカインにとっては、初めてでかなりのハイテンションだった。
「さて、この辺でいいかな? 正面には...誰もいなそうだね」
ベンジャミンは、前方を注視してからつぶやく。
「カイン、これから”維持”の訓練を始めるよ。これは最初とても危険を伴うから十二分に気を付けてね。絶対に途中で集中を切らさないように。万が一、集中が切れそうになったら両手を前方斜め上に上げるんだよ」
ベンジャミンは、訓練を始めてから一番真剣な表情で言ってきた。
「はい。分かりました」
『これは、かなり真面目に取り組まないと駄目な様だな』
「まず、”循環”を始めて十分に”魔力”を練ってから”放出”に移ってみて」
カインは、言われたように”循環”を行い、いつもより熱量をあげて”魔力”を練って、”放出”に移った。
大分”魔力”を練ったので手から手に移る際に、”魔力”の形がいつもよりはっきり見える。
「いい感じだ。それを両手の間で止めて球状に丸めて。 集中してね」
カインは、3周ほど”放出”状態で”循環”させた後、両手の間で止めるようにイメージをした。
”魔力”の塊が両手の間で止まり、放出され続ける”魔力”がまとまってくる。それと同時に”魔力”が身体から抜けていく感じが続く。
『あれ、これなんかやばい感じがする』
どんどん、”魔力”が抜けていく。
「あっ」
カインは、”魔力”の抜けが大きくなり集中が切れてしまった。
”パンッ” 両手の間にあった”魔力”の塊が2mくらい前方に落ちた。
『ヤバい』と思った瞬間 ”魔力”の塊が弾けた。
”ドカン” 鈍い音と共に地面が爆ぜて小石や砂が飛んできた。飛んできた小石で額と頬が切れ血が流れる。そして、衝撃と共にカインはバランスを崩し後ろに倒れた。
「まったく、集中を切らす時は前方斜め上に上げろと言っただろう」
そこには、砂を被った羅刹ベンジャミンがいた。




