魔力操作習得3 ~集中~
「分かりました。明日から早速始めます」
ベンジャミンは、口元に笑みを浮かべながらカインを見つめた。
翌日の朝食後、カインはベンジャミンの部屋に呼ばれ、”魔力操作”の指導が始まった。
「さて、カイン始める前に少し教えてほしい。父上から聞いている内容では、カインが授かったスキルは【魔法陣魔法】、【土魔法】、【回復魔法】の3つでいいかな?」
ベンジャミンがカインを見つめながら聞いてくる。
「はい、その3つで合っています」
道雄は、ポーカーフェースで答える。
「あとは、ステータスの数値を聞くのはタブーだけど、大切な事なので今回は正直に教えてほしい。今、魔力(MP)はいくつある?」
真剣な目つきでベンジャミンは聞いてきた。
『ここで隠すと何か後で影響が出そうだから正直に答えておこう。まだ【魔力量無限】のスキルが非作動だから数値があるし』
「えっと、「ステータス・オープン」MPは1800です」
道雄は、現在の数値を素直に答えた。
「もう一度、言ってもらえるかな?」
「1800です」
「1800...予想の10倍とは...私でも320なのに、私の約6倍とは。これは、教え方を変えないと」
少し考え込むように下を向き、ベンジャミンはつぶやく。
ベンジャミンは、荷物がある部屋の隅に移動し何かを持ってカインの所に戻ってきた。
「これから、”魔力操作”の訓練を始めるけど”魔力操作”が出来るようになるまで、これを腕に着けて外さないように」
ベンジャミンは、そう言いながら時計の様な物をカインに手渡した。
「これは何ですか?」
道雄は、質問しながら左腕に着けた。腕に着けると何かが吸い取られる。
「ベン兄さま、何か吸い取られている感じがするんですが、大丈夫ですか?」
道雄は、腕に着けた物を外しながら聞いた。
「カイン、外してはダメだ。それは私が開発した”魔吸器”だ。魔法士の犯罪者に魔法を使わせないようにする装置で、通常版は、装着者のMPを全部吸い取るのだが、この特別版は、装備者のMPを残す設定が出来る。今着けた特別版はMPが10になるまで吸い取る」
道雄は、再度”魔吸器を着け直した。しばらくすると”魔吸器”に付いている蒼い石が光る。
「よし、MPが10になったね。じゃあ始めようか。カインは立っておへその下あたりに両手を重ねて。これから始めるのは、”魔力操作”の取得法で4段階ある。集中、循環、放出、維持だ。時間が無いから大変だけど頑張るように」
道雄は、少し悪寒がした。『あれ、結構やばいかな?』
「カインは、すでに魔力を感じる事が出来ていると思うけど、違うかな?」
「はい、何となく感じられます」
「よし、それでは感じている魔力を両手を置いている所に集めてみて」
ベンジャミンの指示通りに、魔力らしきものを両手の下に集めようと意識をする。
『あれ、魔力があまり感じられない?なぜだ?』
道雄は、いつもより希薄な魔力を集めるイメージをし始める。しばらくすると両手を置いている下腹のあたりが温かくなってきたような気がした。
「何か、変わってきたかい?」
ベンジャミンがカインの変化を見取り聞いてきた。
「何か、えっ?」
道雄が、集中を切らすと熱が霧散してしまった。
「両手の下が温かく感じたのですが、なくなってしまいました」
「うん、いい感じだね。その熱が意識を切らしても維持できる様になったら次に進めるから頑張ってね。今日から朝起きてから、1時間訓練をして、1時間休んで、1時間訓練してを寝るまで続けるように。訓練は私のいる所以外では行ってはダメだからね。じゃあ、続けようか」
「はい、頑張ります」
道雄は、元気に返事をした。心をすり減らす辛い訓練の始まりだった。




