魔力操作習得2
「ベン兄さま、おかえりなさい」
道雄は、満面の笑みで兄ベンジャミンを出迎えた。
「やあ、アリスもカインも大きくなったね」
目を細めながら、ベンジャミンは迎えに出ていたアリスとカインに声をかけた。
「ベンジャミンお坊ちゃま、ルーク様とリディア様が客間でお待ちです。一度お部屋で着替えをされてからお越しください」
ランドルフがベンジャミンを迎えながら伝える。
「ああ、ランドルフありがとう。しかしまだ「お坊ちゃま」は取れないんだね」
「はい、成人までは「お坊ちゃま」です」
「これ、いつもの”魔石”です。結構時間があったから、10個あるからね」
「いつも、ありがとうございます」
ランドルフは、ベンジャミンから少し大きめの革袋を受け取っていた。
『あれは何だろう? ”魔石”って言っていたな? 後で教えてもらおう』
道雄は、ベンジャミンとランドルフのやり取りを聞いて思った。
「さあ、アリスお嬢さまとカインお坊ちゃまは、先に客間へ向かいましょう」
ランドルフに促され、2人は客間に向かった。
・・・
”トントントン”客間の扉がノックされた。
「旦那様、ベンジャミンお坊ちゃまがお越しになられました」
「いいぞ、入れ」
ルークが返答する。
扉が開き、旅装から着替えたベンジャミンが入ってくる。
「父上、母上、お久しぶりです。只今戻りました」
「うむ、ベンジャミン良く戻った。元気そうで何よりだ」
「おかえりなさい、ベンジャミン。道中大丈夫でしたか? 少し髪が伸びてますね、後で切りましょう」
ルークとリディアが久しぶりに帰宅した息子にねぎらいの言葉をかける。
「お茶でも飲みながら、近況を教えてほしいわ」
リディアがソファーに掛けるように、ベンジャミンに声をかける。
ベンジャミンが座ると、メイドがお茶とお菓子を配膳する。
家族団らんが始まる。
ルークから領内の事を、ベンジャミンからは魔法士学院の事などの話がされた。
ベンジャミンは、14歳で”導師”になったとか。
「父上、手紙でご連絡いただいた件ですが、少し詳しく教えてください」
情報交換が一息ついたところで、ベンジャミンが切り出した。
「そうだな、事の始まりはカインの”洗礼の儀”の時だ。カインが5歳になり、ちょうど領街に司教様が訪問されたので”洗礼の儀”を受けに行ったのだ。そこまでは通常の事なのだが授かった【スキル】があまり聞かない【スキル】だったのだ」
「それが、手紙で連絡を貰った【魔法陣魔法】ですね」
「そうだ。それにカインには【土魔法】と【回復魔法】の【スキル】がありベンジャミンに”魔力操作”を指導してもらおうと思ってな。それで【魔法陣魔法】について何かわかったか?」
「はい、魔法士学院の大図書館で調べてみました。王国一の蔵書を誇る大図書館なのですが【魔法陣魔法】に関する本は1冊見つけました。しかし少しの説明だけしかありませんでした」
「その本によると、【魔法陣魔法】とは、魔法を魔法陣に変換してスクロールに写し魔法のスクロールを作れる【スキル】とだけ記載されていました。魔道具作成【スキル】の【魔法刻印】の上級スキルのようです。勇者様の時代に保有者がいたようです」
ベンジャミンは、カインに少し視線を動かしながら説明をした。
『ふーん、【魔法陣魔法】ってかなりレアスキルなんだなぁ』
道雄は、他人事の様にベンジャミンの説明を聞いていた。
「そうか、使い方等が書いてある本はなかったか。ベンジャミン、ご苦労だった。魔道具を作れる【スキル】と分かっただけ良しとしよう」
ルークは少し残念そうにしながら、続けた。
「それよりも、ベンジャミンの滞在中にカインに”魔力操作”方法を取得できる様にして欲しい。先日も無理やり”魔法”を使用して怪我をしたのだ」
「分かりました。明日から早速始めます」
ベンジャミンは、口元に笑みを浮かべながらカインを見つめた。




