シールズ辺境伯爵領でのお仕事
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「おぉー!高いなぁー街が一望出来ますね〜」
「カイン様、そんなに身を乗り出さないで下さい。落ちたらどうするんですか?」
「あれ?ウェインは、高所恐怖症?大丈夫だよー」
カインは、ウェインの制止を聞かず物見台から半身を乗り出しながら、シールズ辺境伯爵領都を観察していた。
ここは、シールズ辺境伯爵領都のほぼ中心に立つ時計台兼物見台だ。カインがシールズ辺境伯爵領都の道を”石畳”化するにあたり街を模型化する為だ。シールズ辺境伯爵領都にもかなり精巧な地図があったが、やはり立体模型を作成する為には全体が見たかったのだ。半分くらいは高い時計台に上りたかったと言う理由もある。
シールズ辺境伯爵領都は、楕円形の形をしており城壁もサンローゼ領街よりも高かった。5万人もの人々が暮らす都市なので区画整理がされている部分は、道も広く直線が多かったがされていない区画は道も曲がりくねっていた。また、この都市には下水道があるらしく、サンローゼ領街の様に排水路を作る必要が無い事が分かりほっと一安心だ。
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「おかえりなさい、時計台はどうだった?カイン」
視察隊が屋敷に戻り、割り当てられた会議室に戻るとリディアから声を掛けられた。
「はい、とっても高くてびっくりしました。上るのは少し大変でしたが、あの景色が見られるなら毎日上りたいです」
「気に入って貰えて良かったわ。高い所が苦手だと上る事も出来ないから。私も小さい時は、時々上ったのよ」
昔を思い出してリディアが優しく微笑んでいた。
「リディア母さまが、そんなにお転婆だったなんて意外です。もっと本とか編み物とかをされていたのかと想像していたので」
「カインの中の私はずいぶんか弱いのね。実際はアリスの様に活発な子供だったわ。だからなのかアリスが余計可愛くって。もちろん、カインはもっと可愛いわよ」
あふれだす感情を表す為にカインを抱きしめるリディアだった。
親子のスキンシップが終了した後、都市整備局の担当者数人とリディア、シールズ辺境伯爵、シールズ辺境伯爵家令が見守る中、シールズ辺境伯爵領都の立体模型の作成が始まった。
「それでは、これから立体模型を作っていきます。修正は後からでも出来ますので遠慮なく言ってくださいね。【クリエイトクレイ】x沢山」
作成する前は、半信半疑だった都市整備局の担当者も、カインが作った精工な立体模型を見てテンションが上がったらしく細かい修正を要求してきた。シールズ辺境伯爵達が呆れる中、細かな修正がされてついに完成した。
「リディア、サンローゼ領街の模型を見た時は吃驚したが、自分の領都の模型となると何故か感慨深い物があるなぁ」
「そうですね、ご自身で発展させていった街ですからより一層でしょう」
リディアとシールズ辺境伯爵の話を聞いて、都市整備局の担当も家令の人も涙を流していた。
それから、どの道を”石畳”化するか、どの順番で行うかなどを決めていった。サンローゼ領街でもあったが”石畳”化するに当たり人や馬車の通行を制限しなくてはならない為、明日から行うことになった。それであればと屋敷内の門から玄関までの道を”石畳”化を午後に行うことになった。
「いいですかぁ? 始めますよー。少し離れててくださいね。【ストーン】x【魔力】マシマシ」
カインが手を付いた地面を起点に屋敷の前の道が”石畳”化していく。昼食時にどうせ”石畳”化するならとリディアとアリスにデザインを考えて貰って、アイシャの好きなユリのデザインの模様にした。
「素晴らしいわ、こんなに奇麗になるのね。それにこのユリのデザインがとっても良いわ。リディア、アリスありがとう」
「喜んでいただき、嬉しいです」
アリスはペコリとアイシャに向かって会釈した。
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夕食後、客間にてシールズ辺境伯爵、アイシャ、リディアが眠る前のお茶を楽しんでいた。
「リディア、アリスとカインは素直に育っているようで安心した。リノールが亡くなった時は、養子に出した方が良いと言ったのは間違いだった。すまなかった」
シールズ辺境伯爵がリディアに謝罪した。
「良いのです、お父様。お父様の心配も今となっては良く理解できます。血の繋がっていない子供を育てるのは一般的に大変とされていますからね。私が幸運だったのは、あの子たちがとても素直で良い子達という事です」
「それにしても、アリスも良い素質を持っているけど。あのカインはどこか超越しているわ。あなた、カインを守ってあげる事は出来ないかしら?」
アイシャは、お茶を口に含み目をつむって考える。
大人達のカインを守る方策会議は、深夜まで続いたのだった。
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