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第8話 「うわ、ひでえ」の喜劇

「えー、サブタイトルのいじわるう。僕がひどいだなんて、なんてひどいことを言うんだ」


  大地をけるアルゴス 黄昏系女子ヘスペリデスの園目指し

  背中に乗ったペルセウス ムチの代わりに応援歌

  ララララララララ ルララララ

  ルララルルルララ レラルレラ〜、レロ〜



「おう、いい歌だなあって、なんだそりゃ」

「さっきヘルメっちと歌った歌。歌詞は違うけど」

「おう、そうかって、俺たちゃ今からそいつを倒しに行くんだぜ」

「うん、知ってる。でもさ、ヘルメっちは嫌な奴だけど、この歌に罪はないもの」

「なんだ、それ」


「僕は物分かりのいい人間なんだ。それとこれとは別、っていうのがちゃんとわかるんだよ」

「ほうお」

「例えば、不倫歴のある女優さんの芝居はどんなにうまくても見られないっていう人、いるでしょ。僕はそうは思わない。だって、観客が女優さんにモラルを求めるなんてさあ」

「一理あるかもな」

「ファストフード店の店員さんは絶対年上の背が高くてほどよく日焼けしたお姉さんがいい、っていうのとはわけが違うよ」

「……は?」



 これまでのペルセウスの境遇から見て、彼が観劇をしたり、ファストフード店へ出向いたりといったことは考えられないことであり、この物語の本編における最大のミステリーともいえるわけですが、私が語りとして、あえてひとつの解釈を提示せんとするならば、


 美の女神アフロディテから解放されて自由の身となったヘルメスが、空の上からペルセウスの脳にいたずらをして遊んだ結果


 という説が、もっとも理にかなっているといえましょう。



 それでは早速、そちらの様子を見てまいりましょうか。


「何か、飛んできた?」

「誰か、かもね。ふふふ」






 波の間に顔を出したアレスは、必死に手足をバタつかせておりました。


「おうい、アフロディテ、ヘルメースッ。たーすけてくれーい……、たーすけろよーお……」



「あれえ、アレス、泳げないの?」

「そ……」

「ほらほら、ここまで来なよ。あはは」

「ヘル……、てん……ッ……」

「ねえねえ、ひょっとして、足、つくんじゃなーい?」

「へっ……? う、アブブブブ……」

「ははっ、嘘だよーう。あはは……って、あー、アフロディテー、僕の帽子ぼうし、返してよーう」


「返してったらーあ」

「じゃあ、私の言うこと聞いてくれる?」

「うーう、わかったよう。じゃあ、どんなお願いか言って。僕、なんでもやっちゃうから」

「ペルセウスのところへ戻りなさい」

「えー……」

「だって、あなたがこのままここにいたら、アレスを助けられないじゃないの」

「どうして?」

「だって、助けられた次の瞬間に『ヘルメス、てんめえッ!』ってことになって面倒じゃないの」

「じゃあ、口もきけないくらい衰弱すいじゃくさせてから助ければいいじゃないか」



 そこまで言ったところで、世にも恐ろしい形相ぎょうそうをした残忍な戦争の神が、自力で岸へと上がってきたのでした。


「うわ、すんごい。僕、行くね」



 ヘルメスはアフロディテから帽子を受け取ると、東の方角へと飛んでいきました。






「あ、ペルセウスがアルゴスを飼いならしてる。ちょうどいいや、海岸まで彼を運んでもらおーっと」






「大丈夫よ、アレス。あなたの任務は完了したから」

「え……、任務……?」


「アテナのお使いで来たのだと思ったんだけど、勘違いかしら?」

「……あ……」




「あなたの次の任務。ヘラ女神の前で、私をかばってね。『俺のせいでヘルメスは逃げたんです』って」

「ううう……、任しとけい……」





「ひどいって、僕のことじゃなかったのか。良かったーあ」

「一体どう解釈したら、そうなるんじゃいっ」

「ヘファイストスには言われたくないよう」←ギリシャ神話好きならわかる正論。

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