第15話 迫りくるアテナ
「しーっ。僕が目を覚ましたことは、内緒だよーう」
さて、せっかく黄昏女子の園までやってきたペルセウスでありましたが、ヘラ女神の陰謀により、メドゥーサを退治する大義名分が奪われてしまったのでありました。
「でもさあ、女神さま」
「あ、ああっ……?」
「やっぱり僕、メドゥーサの首を取ってきていい?」
「……なんでよ。戦意を失った怪物は、もはや退治すべき怪物じゃないのよ」
「でもそれじゃあ、アンドロメダが僕と結婚してくれないよ」
「は? てめえ、人間の分際で、自己中なこと言ってんじゃねえよ」
「えー、ダメなの?」
「ダメに決まってんだろうが」
「じゃあ僕、鯨さんとも闘わないよ」
「は?」
「それじゃ、困るよね」
「てんめえ、ぶっ殺すぞ」
「あれあれ、知恵の女神さん。僕を誰だと思ってるのかなあ。最高神ゼウスの息子だよ」
「ああ? 知るかよ。てめえなんざあ、第五話で空から落ちたときに、地面にぶち当たって死んじまえばよかったんだよ」
「え……」
物分かりの良いペルセウスは、ここでようやく、命の危機を悟ったのでございました。
「死ねーっ」
「助けてヘルメっちーっ」
***
「おーい、大丈夫ーう?」
「あ……、う……、ヘ……っち……?」
ペルセウスが目を覚ますと、ヘルメスが羽の帽子を使って扇いでくれていたところでした。
「……あれ?」
近くには、縄で縛られたアテナの姿が。
ヘルメスは、不思議そうに見つめるペルセウスにハデスの兜を見せつけながら、自慢げに言いました。
「これを使って姿を消して、背後から襲いかかったんだよーう」
「あ、なるほど」
捕まったアテナは、力なく口を開きました。
「ヘルメスてめえ、汚いことしやがって」
「先にやったのはそっちでしょ」
「うう……。でも……、おかげで早まらずに済んだ」
「そういう素直さは、アレスに見せたほうがいいよ、お嬢ちゃん」
「ヘ……、ヘルメス、てんめえ……っ」
「そうそう、メドゥーサの首のことだけどね、ゼウス神の許可をもらってきたから、安心して取っといで」
「え?」
「ゼウス神の愛人であり、君のおっ母さんでもあるダナエちゃんから、お口添えしてもらったんだよう」
「あ、なるほど」
「あっちに見える洞穴がそうだから、頑張ってきな。黄金の盾をうまく使ってね」
「え、ヘルメっちは来てくれないの?」
「僕はまだ、アテナに踏みつけられた傷が癒えてないんだよう」
そこでヘルメスはパタリと倒れ、たちまち寝込んでしまったのでありました。
「言っとくけど、私も無理よ」
「え?」
「この縄、ヘルメスじゃないと解けないから」
つづく……
「……スヤスヤ……、調子乗ってからかってたら、体力使い果たしちゃったよう……」




