第11話 黄昏系女子の園
「アレスめ、余計なことを。もう少しでアテナの奴を……、ねえ」
「まったくでごぜえやす、母上」
大空翔けるヘルメース 羽の帽子とサンダルで
背中に負ぶさるペルセウス 桃を目指してひとっ飛び
ララララララララ ルララララ
ルララルルルララ レラルレラ〜、レロ〜
さてと。
ペルセウスとヘルメスは、いよいよ黄昏系女子の園に上陸したのでありました。
黄昏系女子の園はどのような場所かと言いますと……、芥川龍之介版『桃太郎』から、鬼が島の描写を拝借いたしましょう。
「鬼が島は絶海の孤島だった。が、世間の思っているように岩山ばかりだった訣ではない。実は椰子の聳えたり、極楽鳥の囀ったりする、美しい天然の楽土だった。」
「鬼は熱帯的風景の中に琴を弾いたり踊りを踊ったり、古代の詩人の詩を歌ったり、頗る安穏に暮らしていた。」
(ともに、芥川龍之介『桃太郎』より/青空文庫閲覧)
とまあ、多少の違いはあるにせよ、「鬼」を三人のニュンフェ「黄昏系女子」と入れ替えれば、大方このような環境なのでございました。
「すごいね、ヘルメっち。」
「ここは西の端っこだからね、黄昏時が最高だよう」
さて、黄昏系女子の歓待を受けた二人は、ヘルメス神の祖父にあたるアトラス、ゼウスの命令で天球を支え続けている巨神へ挨拶に行きました。
「ジイジ、久しぶり」
「おやあ、ヘルメスでねえか」
「オツトメ、ご苦労さま」
「だりゃあ、なんのこれしき。ゼウスさ敗れたティタン仲間んなか、地上さ残されたは数えるほどだ。他は地底の国さ行かされて、ヘリオスさまん光ば浴びられねえんだから」
「うん、知ってる。でね、ジイジーー」
***
アトラス神いわく、例の桃はグライアイという三人の老婆が預かっているということでした。
もともと番人を務めていた竜はというと、ヘルメスに桃を奪われたことが発覚した際クビになり、毒蛇の毒を飲まされるというお仕置きを受けた末に体調を崩し、静養中だということでありました。
「ねえヘルメっち、グライアイっていうのは何者なの?」
「ああ、あのお婆ちゃんたちはね、簡単にいうと、一つの目玉を三人で共有しているエコロジー三姉妹ってとこかな」
「それは、どういう比喩表現?」
「比喩じゃないよ、そのまんま。一人がこうやって目玉を手に持って、懐中電灯で照らすみたいにして、映った像を三人で共有してるんだ。わかるでしょ」
「あ、なるほど」
ペルセウスの物分かりの良さは健在なのでありました。
「さ、グライアイのねぐらが見えてきたよ」
「あの穴?」
「エコだから」
「なるほどね」
こうして二人は、桃を求めて穴のなかへと入っていったのでありました。
はい。
今回は強引に終わらせます。次回もお楽しみに。
「ところで、今回も成功しやしたなあ」
「何が?」
「ヘルメス・ゲットアウト・マシーン。……本文のほうには入られちまいましたが」
「……ああ」




