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レベルアップ!アップ!アップ!

 前回までのあらすじ

 レベルアップでは知力は伸びなかった。


「タロー殿、レベルが上がっても知力だけは上がらないんじゃよ」


 タバサ先生にそう聞かされた時は少し凹んだが、自分を保ったままでいられると考えれば悪い事ではないと思い直した。

 何しろ、たった6レベル分のステータス上昇で力が2倍になってしまった。

 具体的に言うと向こうで64キロだった握力が、128キロになった訳ですよ。

 世界記録が192キロだから今は2/3、次で世界一に並ぶという事。むしろ世界記録持ってる人が凄いね。


 少し脱線したけど、他の能力と同じように知力が上がってしまえば

「生態系を破壊する人類を滅ぼさなくてはならない」とか言い出して討伐される側になったかも知れない。

そう考えると馬鹿な自分のままで良かったと思える。贅沢を言えば、記憶力とかコミュ力に補正がかかるようなスキルは欲しい。 




「タロー殿? 呆けておるようじゃが大丈夫かの?」


 完璧超人しかいない世界より、いろんな人がいる世界の方がいいな等と考えていたが、タバサ先生の声に我に返る。

 先生はいつのまにか近づいてきてこちらを見上げていた。三角帽子から猫耳を出すのは良いアイデアだよな。

 走っても帽子が落ちそうにない。


「いや、少しレベルアップについて考えてましたが、知力が上がらないのは良い事なのだと気付けました。先生のおかげです」


「そうなのか? よくは解らんが良かったの。レベルが1になったからスキルが増えたじゃろ? セットするとよいぞ」


「はい。ありがとうございますタバサ先生。でも副業のスキルはそのまま使えるんですよね?」


「うむ。じゃがの、補正を掛けるタイプのスキルは効果が重複するから付けて損は無いのじゃよ」


 先生に言われて確認してみるとスキルが5つ増えていた。

 表示されたスキルから契約魔法を選び更にタップするとスキルの詳細が表示された。

 【契約魔法】《スキル枠にセットする事で契約魔法を使用できる》と書いてある。

 まさか、レベル1で自由に魔法が使えるようになるとは。



「先生、このスキルは今付けても意味がないのではありませんか?」


「うむ。レベル1のスキルは魔法を一通り使えるだけで補正は掛からんよ。タロー殿、わしのステータスを見てみてくれんか?」



【タバサ】【種族:ケット・シー】

【職業:賢者LV:30】

【HP:70/70】

【MP:41/41】

【SP:36/36】

【力 :30】【技 :38】

【知力:28】【魔力:40】

【速さ:35】【幸運:40】

【守備:30】【魔防:35】

【スキル1:連続魔法 】

【スキル2:MP回復 】

【スキル3:付与魔法M(マスター)

【スキル4:錬金術M(マスター)

【スキル5:契約魔法 】


 お許しが出たのでステータスを拝見。なるほどタバサ先生は上級職のレベル30か。

 知力が高いな。ついでに、連続魔法とMPオート回復の詳細を見ようとしたが、どうも他人のスキルは見られないようだ。




「先生のステータスを見ましたが、自分以外の人のスキル詳細は見られないんですね」


「うむ。言い忘れたがステータスを見ると相手も気付くから、他人の秘密を除き見るような事は止めるのじゃぞ」


「マジですか? 良かった勝手に使わなくて。

 ……ところで、先生は契約魔法を何に使っているんですか?」


「マジじゃよ。因みにわしの鑑定は開発者特権でバレぬ。

 契約魔法はイチローと旅をしていた時に、魔族等に奴隷にされた者を解放する為に学んだのじゃよ。

 手続きの為に街へ戻っていたらキリが無いからの」


 人体実験の被検体を確保する為とかのマッドな理由かと思ったけど違った。先生結構、正義の味方系なのかな?


「そうなんですか。魔族も契約魔法を使うんですね。レベル上げないと不味いな。

 あ、付与魔法と錬金術の後ろのMはマスターのMですか?」


「その通り。職業レベルが最大になった時に得られる特別なスキルじゃよ!

 これだけ入れて置けば、そのジョブのスキルが全て使える凄いスキルなのじゃ!」


「それは凄いですね。是非とも楽に身に付けたいです!」


「そう思うじゃろ! タロー殿にそこまで言われたら、わしが一肌脱がんとイカンの。ちょっと待っておれ」


 タバサ先生はそう言うと懐からなにやら図鑑を取り出しパラパラとめくり始めた。

 少し見せて貰ったが召喚獣の図鑑のようだ。色々なモンスターの絵が描いてある。


「まだゴーレムがありますけど、アレではダメなんですか?」


「タロー殿の健やかな成長の為には、強敵を用意せんといかんのでな。

 最初は心理的な負担にならぬ無生物を選んだという訳じゃ」


「その口ぶりだと次は生き物と戦う訳ですよね。

 まだ初心者なんで、臭かったり粘液塗れだったりしないのでお願いします」


「臭いがしない、カッチリした奴じゃな? 次は召喚獣との訓練じゃよ。

 なに、召喚獣は死なずに消えるだけだから、怖がる事は無いのじゃ。

 言われずとも、日本人が殺生を好まぬのは承知しておる。

 少しずつ戦いに慣れてもらうから安心するがいいぞよ」


 なんか先生のテンションがおかしいな。気負ってる感じがする。


「それは……勇者王さんから教わったという事ですか」


「そうなのじゃ。わしらは先代の勇者、イチローの時に失敗したのじゃ。

 召喚初日に捕獲しておいた魔物の首を、次々に刎ねさせる事でレベルを上げようとしたのじゃが、それがイチローのトラウマになってしもうてな……」


「そんな事をさせられたらトラウマにもなりますよ。暫く立ち直れなかったのでは?」


「うむ。イチローは立派な男じゃったが、機嫌を直して貰うのに1週間も掛かったのじゃ。

 魔物といえど人に似た姿の生き物の命を奪うのは堪えたと言っておった……」


「……立ち直りが早い方だと思いますよ。勇者王さんは。

 ところで先生は何故、リストに無い召喚魔法が使えるんですか?」


「わしは賢者だからの。使えぬ魔法はほとんど無いんじゃよ。

 では説明も済んだ事じゃし、夕餉の時間まで特訓をしようかのタロー殿。

 お主に相応しい召喚獣が決まったぞ!」


 タバサ先生は図鑑をしまうと芝居がかった動作で召喚魔法を使った。


「出でよ! 召喚獣スパルタンアント!!」


 声に応えて蟻の大群が姿を現した。

 黄金の輝きを放つ金属のような外殻、燃える様な真紅の羽根、頭頂部に赤いモヒカンのようなものが生えた巨大な蟻だ。

 4トントラック程の大きさのアリの群れが詰めになっていた。



「数が多くないですか?」


「30体おる。こやつ等は仲間が倒れる度に強くなる。特訓相手に最適じゃぞ?」


「召喚獣は死なないんじゃなかったのですか?

 それに少しずつ慣らすって言ってましたよね?」


「人型の魔物は抵抗があるじゃろ?

 だからゴーレムから始めて、蟻で慣れてもらおうと思ったんじゃが、わし等は、また間違えてしまったのかなタロー殿?」


 シュンとした顔の先生に下から見上げられた。善意の行動っぽいから起こり辛い。

 まあ召喚獣も死ぬ訳じゃ無いしやるしかないか。ここでゴネても結局やる事は一緒だろう。

 それなら今やった方が良い。明日って今さ。


「タバサ先生は何も間違っていません。さあやりましょう」


「そうなのか。少しステップアップして、歩行中のスパルタンアントを倒してもらうかのう。

 わしが見本を見せるからよく見ておくのじゃぞ!」


 タバサ先生はそう言うと、アイテムボックスから総金属製の巨大な両刃斧を取り出した。

 見た所、2メートル以上はある両刃の斧を肩に担ぐと、手近な蟻の方に歩きながら語り始めた。


「タロー殿、自分より大きな物が相手ならまず脚を折って膝をつかせるのじゃ。

 この時、付与魔法で体力を底上げするのを忘れんようにな」


 喋りながら蟻の正面に立つと、体ごと回転しながらの横薙ぎの斬撃で2本の前足を斬り飛ば、その勢いのまま蟻の首の真下に移動した。


「敵が固い場合は、こうして相手の自重を利用すると楽じゃぞ」


 先生は前足を無くして、崩れ落ちる蟻の首目掛けて斧を振り上げた。

 残り4本の脚では上体を支える事が出来ず、タバサ先生の斧に自ら刺さりに行き絶命した。

 モヒカン重そうだもんな。あ、死んでないわ。なんか光になって消えた。




「先生、なんと言うか、戦い方に賢者らしさが欠片もないです。あと俺には無理です」


「タロー殿、やってみない内から諦めていてはイカンよ?」


「だから無理ですって、まだレベル低いんであんな蟻に伸し掛かられたら絶対死にます。

 もう据物斬りで良いんで先にレベル上げさせて下さい」


「おお、やる気はあるんじゃな。確かに先にレベルを上げた方が安全じゃのう。

 よし、スパルタンアントよ順番に首を出して勇者の糧になるがよい」


 スパルタンアントはタバサ先生の命令に従ってオレの前で伏せて首を差し出した。

 切り落とし易いように頭を奥に曲げている。


「先生、何か切れ味が良い刃物を貸してもらえませんか? さっきの斧のようなのじゃなく軽い物を」


 こんな巨大生物を、手持ちの道具で切れる気がしなかったので、素直に道具を借りることにした。

 色々考えて日本から持ち込んだ物が、悉くこっちより劣ってるから困る。

 日本人が勇者として活躍したという情報から、自分の為に衣食住は整えてる可能性が高い事に気付くべきだった。

 武器防具は言わずもがなだよな。


「タロー殿、それならこのチェーンソードを使うと良いぞ。『テキサス』という呪文を唱えれば、高速で回転する刃がどんなものでも真っ二つにするのじゃよ」


「お借りしますテキサス。待たせたな蟻さん。済まんが俺の経験値になってくれ」


 俺はチェーンソードを振り上げて、全てを受け入れ、死を待っていたスパルタンアントの首に振り下ろした。

 剣は抵抗無く首を切り落としたが、頭が地面に落ちる前に噴出した体液も、残った胴体も全てが光になって消えた。

 返り血を浴びて俺の記憶も消えた。


【ヤマダ・タロウ】【種族:人間】

【勇者LV:021】

【HP:256/256】

【MP:242/242】

【SP:246/246】

【力 :253】【技 :245】

【知力:008】【魔力:243】

【速さ:244】【幸運:241】

【守備:245】【魔防:241】

【奴隷商人LV:20/20】

【神聖魔法LV:20/20】

【召喚魔法LV:20/20】

【付与魔法LV:20/20】

【死霊魔術LV:20/20】

【スキル1:経験×30】

【スキル2:鑑定    】

【スキル3:        】

【スキル4:      】

【スキル5:   】


 …………次に気が付いた時、俺はカレーを食べていた。

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