すべてはきっと手の平の上
ヴァイオレットローズ・シークレットガーデン、って言葉に覚えはあるかい?
ない? あ、そう。
じゃあどこから話したものかな……あー、じゃあ恋のキラメキは素敵なプリズム! とかいう真顔で言うにはきっつい言葉は? ない。あ、そう。
なるほど、きみはご存じないタイプの人なんだね。オーケィ把握した。
え? 何の話だ、って? この世界の話だけど。
驚くような事かい? あぁ、まぁ、初っ端第一声、きみって転生者だよね? って質問したんじゃ仕方ないか。
ん? あぁ、違うよ。ワタシは転生者じゃない。あくまでこの世界の住人さ。
そうだね、わかりやすく言うなら神の御使い的な。あ、すっごい胡散臭そうな顔になったね。気持ちはわかる。でも、異世界転生なんてことが既に自分の身に起きてたくらいだ。一切合切何も信じず鼻で嗤う、なんてところまではいかないんじゃないかな。そ、ワタシは決して頭の中が電波で満たされた存在ではないって事さ。
まぁ、この世界について知ってるわ。だってここ前世でゲームとして存在していた世界なんだもの、なんていうやつも、神の御使いだなんて言うやつも、須らく大半のこの世界の住人には頭おかしいとしか思われないだろうけれどね。
ゲーム? あぁうん、そう。ゲームだよ。え、てっきりラノベだと思った? ははぁ、なるほど。きみの世界にはどうやらこの世界に関する事は存在していなかったって事か。
そうだね。何て言えばいいかな。この世界の大元がちゃんとあって、ここはそうだな……並行世界ってわかる? うんそうパラレルワールド。あ、それは知ってる。じゃ話は早い。
ここ、本来の世界のパラレルワールド的なところね。
いや、上から……ん? そう、神様。上から最近異世界からの魂がやけにこっちに流れ着いてくるっていうものだから、どうにかしろって言われてて。
とはいっても魂なんてこっちでも扱いに困るからさ。とりあえず本来の世界に面倒ごとが行きつかないように並行世界側に魂が流れ着くようにしたってわけ。
そしたらなんとこの世界の事を知ってる転生者が複数いたってわけなんだよね。
そう、今しがた言ったやつ。ヴァイオレットローズ・シークレットガーデンと恋のキラメキは素敵なプリズム! どうして二つあるのか? そうだね、世界の断片だから、と言ってしまえばそれまでだけどこの世界の大元部分も決して一つというわけじゃなくて。細分化されてる……うーん、説明が面倒だからそこは省くよ。
その中でとある姉妹に注目をあてた話があるんだ。
ここまで言えば大体察したかな。そうそれ。
話の内容は大元の話とあとは並行世界で起こり得たいくつかのもしもを合わせた感じで異世界ではゲームとして流れ着いたって感じかな。恋愛アドベンチャーとか恋愛シミュレーションだとか。女性が主人公だと恋愛も絡みやすいんじゃないかな。
話の内容としてはそう難しいものじゃない。
主人公は身内に虐げられていたけれど、それをものともせずに乗り越えて素敵な男性とくっつく。ほらね? 身も蓋もない話だろう?
ただ、タイトルが二つある通り、主人公も異なる。ヴァイオレットローズ・シークレットガーデンは姉が、恋のキラメキは素敵なプリズム! は妹が主役になってる。
え? それはおかしい? そうかな。
どちらかがどちらかに虐げられているというのであれば、両方が主人公になるのは不可能?
元の話になってる、とはいうけど、元ネタが一つとは言っていないよ。そう、確かに実際に大元の世界に存在していた話をちょっと脚色したりしたものではあるけれど、主人公はあくまでも伯爵家の令嬢、そして姉、もしくは妹がいる、というだけでその条件が当てはまるのが長い歴史の中一つしかない、なんてわけもないだろう?
転生してこの世界の事を知ってる人はね、何の疑いもなく自分がその主人公だと信じて知ってる知識を駆使して行動を起こすんだけど……そう。だから並行世界。大量にあるんだそういうの。
例えば自分が悪役側だと思った相手はどうにか断罪イベントとやらを回避しようと足掻いてみたり、はたまた主役側は自分の目当ての相手とくっつこうとしたり、本来攻略対象にいなかった相手を狙ってみたり。
型にはまった人生って虚しいものだよね。
不幸な人生にならないようにそれらを回避しようと足掻いたり、はたまた流れに身を任せてみたり。先の事を知ってるからそれなりに対処できるだろう、なんて思って余裕かましたもののそう甘くなかったり。
うん? そうだね、先の事なんてわからなくてもやってる事はそう変わらないと思っているよ。
きみの妹さんもね……きみと同じく転生者だったわけなんだけど。
タイトルが二つ存在する中で、でも一つのタイトルしか知らない転生者は当然自分が知ってる世界線だと思い込む。並行世界だから別にどっちってわけでもないんだけどね。
あー、うん。そうだよ。きみの妹さんは婚約者と結ばれて幸せに……なるつもりでいたんだと思う。でも、間違えた。色々なものをね。大まかには知ってるゲームの内容とやらに沿ってたんだと思う。でも、じゃあ仮に妹さんが主人公だったとして、姉であるきみは悪役たりえただろうか?
だよね。だってきみ、この世界の事知らなくてもラノベにありがちなやつ、とかは思ってたんだろ?
いや、うん……ワタシがきみを転生者かどうか確認したのはこの世界を知ってるっぽい感じがした、ってのもあるけど……あー、うん、そう。最初に言ったタイトルね。そっちだと姉が主人公で妹からそれはもう酷い目に遭わされてる感じなんだ。物はとられるし婚約者も奪われる。一応該当してるだろう? けど本来はそれでも抗って最終的に自分から奪い続ける一方の妹はとうとう両親からも見限られ、かつての婚約者も周囲から白い目で見られるようになる。そこで姉に味方してくれていた素敵な素敵な男性と結ばれてハッピーエンド、ってのが一応の流れだったんだけど……
うん、そうだね。きみにそういった相手はいなかったね。そもそもきみは妹に虐げられているという認識すら抱いていなかったね。実際仲が良かった? うーん、まぁ、きみがそう思うならそれでいいんじゃないかな。はは、だってワタシからすればそれはどうでもいい事だからね。あぁ、すまない、気を悪くしたというのなら謝ろう。
ところで、素敵な誰かと結ばれました、という話以外にもその手のゲームだと他のルートってのがあるんだろう? きみはもちろんその内容を知らないだろうけれど、ワタシがきみに声をかけたのは念の為ってやつさ。
本来のルートでは妹を断罪してハッピーエンドなんだけど、別のルートだときみは妹に負けて失意のまま修道院へとやって来ることになる。そこで知り合った男性と淡い恋に落ち、実はそれが王家の人間で――なんていう、見ようによっては逆転エンドなんてものがあるんだけど……最初はね、それ狙いかなって思ってたんだけど……うん、違ったよね。だってきみ、全然そういう恋愛に興味ありますって感じですらないし、ましてや王家の人間と知り合うだろう場所に近づくそぶりもなかったし。
他の並行世界できみと同じ立場に転生した人のうち何名かはこのルートにやってきたりもしたけど、きっちり手順踏んで王子と恋に落ちて返り咲いていったわけだし。返り咲くっていうのも何だかおかしな表現かもしれないけどね。
ここまで来てあとは王子と出会うだけ、みたいな状態なのに知り合おうって感じしないから、ちょっと気になって出てきただけさ。そうだね、今からでも王子と知り合おうと思えば知り合えるんじゃないかな。
大半の人はもっと早くに戻って妹相手にざまぁしてたみたいだけど。
え? 妹が投獄されたって手紙が届いた?
あぁうん、さっきも言ったろ。間違えたって。その結果だね。
本来なら姉が王子と出会って国に戻った時点で、妹は婚約者と既に結婚して幸せな毎日を送っているところだった。それどころか侯爵夫人の身だ、今まで以上に好き勝手できるようになっていたから、それはもう……ね? けどそこに戻ってきた負け犬だと思ってた身内が、王子と結婚するときた。自分の方が上だと信じていた妹はそれに激怒して姉を害そうとする。けれどその目論見は失敗し、処刑される。
え? そりゃそうでしょ。次期国王の妻を殺そうとしたんだから。
けど、きみは特にそういう展開を望んだりするわけでもなく、日々を修道院で過ごしているだけ。
仮に今から王子と出会って恋に落ちたとしても、今から戻っても妹は既に投獄された身。本来の展開からはそれなりに離れてしまうのも仕方ない、というわけ。
え? 王子と知り合う気はないし、ましてや恋に落ちる気もない?
どうして? 少なくとも暮らしには困らないと思うんだけど。
え? 窮屈? あぁ、そっか。なるほどね。そもそも前世の暮らしの方が自由気ままだった? 修道院は規律が多少厳しいけれど、貴族の家で礼儀作法だのなんだの動作一つ気にしないといけないのに比べればまだマシ、なのに王家に嫁入りとか今まで以上に気の抜けない日常になる? そうだね。それは否定しないよ。
あぁうん、実際にね。王子様と結ばれてハッピーエンドかどうかは微妙なところなんだよ。
結婚はゴールじゃない。ある種のスタート地点だ。
結婚したからって人生そこで終わるわけじゃない。その後だって続いていく。
実際にきみと同じ立場に転生した並行世界の皆々様方は礼儀作法だマナーだと厳しいレッスンをクリアしてきてるから城での暮らしも問題ないけど、たまーにね、いるんだ。
目先のエンディングしか見えてなくていざ実際そのルートに入ったらとても苦労する事になった、なんてのが。
多分、きみの妹さんもこのパターンだったんじゃないかな。
妹は助かるのか? どうだろうね。投獄された時点で夫がどう動くか、にもよるけど……侯爵家は味方も確かに多いけどその分敵も多い。立ち回り方次第では無理じゃないかなぁ。
そもそもきみの妹さん、侯爵家に嫁いだ後もそっちの家で日々色んな作法を叩き込まれていたようだからね。侯爵夫人として家を取り仕切る、までには至っていなかった。
投獄された時点で侯爵家の中にも妹さんの事をよく思わない人物はそれなりにいたようだし……だって他にも家柄や家の利点になり得る状態の婚約者候補はいたんだから。なのに実際に結婚して妻になったのがよりにもよってまだ一人前のレディとは到底言えないような子猫、とくれば……ねぇ?
虎の牙を引っこ抜くのは難しくても子猫の牙を引っこ抜くのは容易いだろう? ま、実際の子猫にそんな事をするのは流石のワタシも心苦しくはあるけれどね。
けど、邪魔者を排除するなら敵が弱いうちであれば簡単な話だ。
夫の方は半人前のレディであっても愛はあったからこそ助けようとしてるけど……それもいつまで続くか……
更には妹さんが投獄された事できみの本来の家、伯爵家も旗色が悪くなってきてるんじゃないかな。
ま、既に家を出てこうして修道院暮らしをしてるきみの方にまで何らかの手が及ぶ事はないだろうけど。
どうする? 今からでも遅くないよ。王子と出会ってすぐさま恋にでも落ちて引き返してみるかい? もしかしたら救えるかもしれないぜ?
しない? へぇ、妹さんが死ぬかもしれないのに?
今から王子と出会ってすぐさま恋に落ちて国に婚約者として連れていってもらうにしても、確かに時間がかかるだろうからそりゃまぁ、手遅れだろうけど。
なんだ、そこは冷静なんだ。ふぅん?
それじゃあ、きみはこれからどうするんだい?
大半の転生者はハッピーエンドとやらを目指して見事勝ち取るか、失敗してバッドエンド行っちゃったけど。
どうもしない? とりあえず修道院暮らしを続ける?
は、それはそれは。それで本当にいいのかい? いい? はは。……いいね。
え? あぁ、そうだね。正直に言おう。今の返答でワタシはきみを気に入った。
なんていうか、ワタシを見て色目を使う事もなく媚びる様子もないのがいい。
え? 最初の時点じゃ不審者だったのに色目使うような奴なんているのか、って?
いたさ。だって見てくれよワタシのこの姿。控えめにいって綺麗だろう。こんなだからね、転生者全員の前に姿を見せたりするわけじゃないけど、それでもきみの前にも何人か会いにいったのさ。
え? 男か女かわからないのに、色目を使う奴なんていたのか? いたよ。
むしろどっちでも構わないとかいう猛者がひい、ふう、みい……あ、いや。数えるのはやめておこう。
原作知識とやらを知ってる転生者はね、ワタシの姿を見てまずまっさきに何て考えたと思う?
ははは、正解だ。そう、隠しルートきたー! 馬鹿じゃないかと思ったね。そんなものあるはずないだろうに。そりゃあ、大元の世界の出来事を模した状態で原作知識とやらがそれなりに通用しそうな世界ではあるよこの並行世界は。けれどそれはあくまでもそのヴァイオレットローズ・シークレットガーデンと恋のキラメキは素敵なプリズム! の内容に関する事だけで、それ以外はルートだのなんだのがあるはずもない。
だからこそワタシが隠しキャラだなんてあるはずがないのにまったく……
人間てのは欲深い生き物だよ。知ってる知識でもって自分が掴める範囲の幸せで満足しておけばいいのに。王子ルートに行こうとしていたきみと似た立場の転生者のうち数名はワタシを見て更なる隠しルートの存在を考えて言い寄ってきたからね。全くなんとも度し難い……
ん? あぁ、きみを気に入ったって言った事か。いや、単純に思った事を言っただけなんだけど……そうだな。それじゃ折角だ。きみ、修道院を抜けてウチで働かないかい?
あ、凄い顔してるぞきみ。え、怪しい宗教施設? いやまさか。神の御使いだぜ? 修道院の上位互換みたいなものじゃないか。え? 全然違う? まぁそう細かい事はいいっこなしだぜ。
いや、さっきも言ったろ? 他の世界から大量に魂が流れ着いてるって。しかもよりにもよって生前の記憶持ちの状態でだ。正直それってあんまりよくないんだよなぁ。
ほら、きみだって今回ではなく前回の生を受けた時に、もう一つ前の生前の記憶なんてなかっただろう? 本来はそれが普通なんだよ。つまり、前の記憶を持った状態でこうしている時点で異常なのさ。
勿論うちの世界だってそんな異常な魂を大量に受け入れたくはない。厄介ごとの気配ばかりがたっぷりだからな。だからこうして並行世界を大量に用意してそっちに流してる状態なんだよ。
ヴァイオレットローズ・シークレットガーデンという存在があった世界と恋のキラメキは素敵なプリズム! があった世界だってそもそも違うんだ。しかもその世界は二つだけとは限らない。調べがついちゃいないけど、もしかしたら別のタイトルがついてる可能性のある世界から流れ着いてる、なんて事もあり得る。
ま、とりあえず今回の人生が終わって次の生を受ければ流石に二つ前の記憶は薄れてなくなるだろうし、一つ前のをまだ覚えてたならもう一度同じ人生を歩ませればいい。ループしてると勘違いするかもしれないが……ま、そんな事はワタシの知った事ではない。
ん? あぁ、話が早いじゃないか。そう、魂ロンダリング。何度か繰り返せば前の記憶もすっぱりなくなって次の生には通常に戻るだろうよ。
本来の世界の方に魂を戻さないのか? いや~、それは無理だろう。きみ、結構簡単に言ってくれるけど世界がどれだけあると思ってるんだ。この世界だって本来の世界の他に複数の並行世界を用意してあるくらいなんだぜ? 他の世界にだってもちろんあるさパラレルワールド。
で、誰の魂がどの世界の魂か、ってのをきっちり見分けて元の場所に戻すだなんて、可能だと思うかい?
そう、並行世界3くらいの世界の出身の魂だったとして、並行世界267くらいの世界に間違えて戻す方がよほど可能性としては高い。並行世界同士の間違いならまだいいけど、そうじゃないともっと大変な事になる。
あと、それはこっちの仕事ですらないんだよなぁ……だからどれだけ頑張ってやったとしても無駄な作業。仕事としての評価は一切されない。
苦労ばっかりした割に上からの評価は遊んでないで仕事しろ、になるんだぜ? やってられないだろ。それなら普通に何度か輪廻転生繰り返させてまっさらな魂にする方が面倒が少ないし仕事もしているという事になる。
へ? だったら尚更自分を勧誘するのはどうなんだ? ま、確かにそう思うのも仕方ないか。
いやぁ、原作知識有りの相手を引き入れるとあれこれ面倒そうな事になりそうだから推奨されてないけど、きみは知らなかったわけだしそこは問題ない。
色恋沙汰にがつがつしてないのもいい。そういうの勧誘しちゃうと本当に後が面倒だからね。うん、随分昔にあったんだ。いや、あれは酷かった。
あとは何だかんだ真面目に働いてくれそうだし。
どうだい? 悪い話じゃないと思うんだけど。
好き勝手他の世界にでかけたりはできないけれど、それでもきみが前に住んでいた世界に近いところから品物を取り寄せるくらいはできるだろうし、仕事は忙しいだろうけど少なくとも修道院で一生を終えるよりはいいと思う。
うん? 取り寄せる品でそのヴァイオレットローズ・シークレットガーデンと恋のキラメキは素敵なプリズム! は手に入るか? ゲーム機本体も含めて? えぇ、もしかしてそういうの興味あるやつかな? 違う? 単純に話の内容気になってる? 話の内容知りたいだけだから別に自分でプレイしなくてもいい? あー、じゃあ映像だけ記録されてるやつでもオッケー? でも今更知っても戻れないんだけど。
あ、そういうんじゃない。正直知らないうちにゲームの登場人物になってたらしいと言われてもピンとこない。だよねぇ。
他の攻略対象とかそういう存在も何も知らないからツラだけ拝みたい……え、あの、きみ本当に誰とも出会ってなかったの? 婚約者以外で。え? 知らない? そもそも誰がそうなのかもわからないから、出会ってたとしても気付かない……そりゃそうだ。
あれ、じゃあもしかして王子に興味なかったのも? ていうか、王子の顔くらいは知ってるよね? 知らない? 王家の人は身分的に上だから滅多に顔を見る事がない。あぁ、侯爵家とか公爵家ならまだしも伯爵家だと……確かに何らかの機会がないと難しいか……家を継いだとかならまだしも。
そういや国王や王妃はともかく王子は滅多に人前に姿を見せなかったもんなぁ。
原作にあたるらしいゲームも気になるけど、個人的には前世で途中までしか読めなかった本の続きがあるかを知りたいし、入手できるならそっちがいい? きみ案外現金なやつだって言われないかい? まぁ、世界なんて大量にあるから探せばあるとは思うけど……ただ並行世界が大量にある世界だときみの言うその本の内容がタイトルだけ一致してるけど中身は別、とかもある可能性が……それでもいい? 色々読み比べるの楽しそう? 本を読む時間とか休憩時間はあるか? いやそりゃあるよ。忙しい職場とはいえそこはちゃんとあるとも。
え、えぇ~、そんなあっさり決めてしまうのかい? いやまぁ、きみがいいならいいんだけど。
しっかり報酬を得るためにがっつり働く、ってそのやる気は有難いけどくれぐれも根を詰め過ぎないでくれよ?
ところで一度修道院に戻ったりしなくても平気かい?
ん? 戻ってどうする? ここを出て行くにしても理由に困る。
それもそうだな。ふむ、ならば置き土産の一つくらいは残しておくか。
何、この国で神の使いとされてる鳥の羽だ。中々に貴重らしい。ま、他の世界に腐る程いるけど。
これでよし。
さて、本当にいいのかい? いい? むしろ早く行こう、って随分と積極的だなぁ。
ワタシの存在よりも本とかゲームとかそっちに比重が傾いてるのが何とも言えないけど……まぁ、いいか。
それじゃ、これから末永くよろしく頼むよ、きみ。




