最終話 ずっと一緒に
私のウェディングドレスは、ビスチェタイプと呼ばれる肩部分がない形のドレスに、レースのケープを付ける。ケープを留めるブローチはダイヤモンドと真珠で出来ている。それに合わせて真珠の付いた紐を髪の毛に編み込んで、白い生花も飾っている。
ケープの模様はブローチから放射状に広がる様にデザインされている。
クリス様の希望でビスチェタイプに決まったものの、肩も隠せるショールも欲しいとお願いしたらケープが付き、このデザインになった。
クリス様はビスチェに映えるネックレスをしたかったそうだが……恥ずかしかったので頑張った。
この頃、私達は大きなダイヤモンドの原石を手に入れて困っていた。
エンキーの霊峰から出たと言うそれは、別の神様(仮)との契約でエンキーの商人によって届けられた。お代はいらないと笑顔で置いて行かれて驚いた。
「もらい過ぎな気がする」
「でも、返したらあの商人は契約不履行の代償に記憶を失います」
「……仕方ないな。神様の好意だ。もらっておこう」
クリス様が納得してくれた事に密に安堵する。
ロザミア様の出産時の手助けで、ピンチがチャンスに変わった彼らは、神様(仮)の総意として私に礼をする事にしたのだろう。今契約を食べているであろう神様(仮)以外は、私に話しかけて来ない。出来ないのだろう。だから憶測でしかないけれど、間違っていないと思う。
結局、ブローチにする事にした。男性でも使用可能にする為だ。
「ロゼライト家の家宝にしよう」
家宝にするしかないとも言う。多分この世界で最大のピンクダイヤだ。
賓客で目の色を変えている外国の方も居たが……これはいわく付きだからやめた方がいいと思う。
国内貴族は分かっているのか、ダイヤを見る顔がひきつっている。
今学園にも王都にも地方にも、エンキーの若者が結婚相手を求めて訪れている。
彼らの人知を超えた力を目の当たりにする機会が増えた昨今、国を傾ければエンキーに支配されるかも知れないと言う認識が生まれているのだ。……彼らはそういう事に興味がないのに。
このダイヤが盗まれ、盗難に関わった者が全て破滅してから私達の元に戻って来る事になるのは、私の子供達が結婚する頃の話だ。……このダイヤはロゼライトダイヤモンドと呼ばれ、世界最大の呪われたピンクダイヤと怖れられる事になる。
式には母国からカイルが参加してくれた。立派になった姿に思わず涙ぐんでしまった。カインは通行証を持っている。また来ると約束してくれた。
母国の義両親も私達の式に駆けつけてくれた。もうすぐ引退するそうで、お二人で旅をするのだとおっしゃっていた。
エリーゼ様は、物凄く泣いていて言葉が出ない様子だった。ローエル様がそんな彼女の涙を拭いている。
ロザミア様は泣くのを我慢して変な顔になっていた。オスカー陛下はそんな彼女を担いで控室に行ってしまった。きっと大声で泣いているに違いない。
多くの人に心から祝ってもらえたこの日を、命尽きるその日まで私は忘れない。
……この国に来て十六年の月日が流れた。
「おかえり、どうだった?」
娘のレイフィと一緒に帰ってくると、クリス様が階段を降りて来て出迎えてくれた。私達は、今日ロザミア様のお茶会に招待されていたのだ。
「ロイド殿下とハイゼがまた暴れまわって大変だったのよ……」
ロイド殿下はロザミア様の息子で、ハイゼはエリーゼ様の息子だ。二人は会うと城の庭で騎士でも追いかけるのが大変な程に走り回る。エンキーであるハイゼと同じ様に遊べる時点でロイド殿下はちょっと人とは違う。
エンキーの様に人や物にまで作用する程の力はないけれど、自分だけは強くできると本人は言っている。……一部を除いてこの事は伏せられている。私も「不思議ですね」と言うだけに留めている。
「レイフィはどうしていたの?」
「エリミア殿下と遊んでいましたよ」
ロイド殿下と双子の王女であるエリミア殿下は、レイフィと仲良しだ。
「お父様みたいな方と結婚したい。乱暴な子は嫌いよ」
そう言うレイフィに、クリス様は嬉しそうに手を差し出し、レイフィは迷いなくその手を握る。
たったそれだけの事なのに、ふいに涙が出そうになる。
幸せは今ここにある。
神様(仮)は波長の合う人としか話が出来ません。なのでメイフィーと対話できる神様(仮)は食事中で対話できません。実は、ロザミアの娘のエリミアは、この能力があって密かに霊峰の神様(仮)と話をしています。この事をレイフィだけに打ち明けています。
レイフィが結婚式で着用予定だったダイヤが盗まれて大事件になるのですが、エリミアが神様と交渉した事で戻ってきます。盗んだとある国の商人とその配下、それを盗品と知りながら買った侯爵夫人は一晩で廃人になり(記憶を全部食われた)、王に連れられて侯爵がガクブルで返しに来ました。
これで完結となります。読んでいただきありがとうございました。




