表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ずっと一緒に  作者: 川崎 春
隣国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/55

28 お母様の過去

 オスカー殿下とロザミア様の結婚式は、外国からの貴賓も大勢やって来て盛大なものになった。

 その中に母国の王太子殿下が居て、結婚式の後、帰国前にクリス様と共に面会する事になった。母国の王太子、アドニス殿下は実家の事を私に話す為に時間を割いて下さったのだ。


 カイルがもうすぐ跡を継ぐ事、お父様はお母様を連れて領地に戻る事、お姉様が、メイフィーア・ロゼライトと私が同一人物である事にまだ気づいていない事。

「王家としては、責任を感じているのだよ」

 アドニス殿下の表情は暗い。

「陛下には二人の婚約者候補がいた。これには理由がある」

 クリス様は分かっている様子だが、私は分からない。


「子供と同じだ。……我が国は長年、王妃にもスペアを作っていたのだ」

「スペア……」

「かつて、王妃が無事に生きて子を産めない時代があったのだ。急死した場合のスペアは当然必要だと……そう信じられていたのだ」

 伝染病が蔓延していた時代の名残だろう。……世界中でこの伝染病は猛威を振るった。その時、母国は酷い状況に陥ったと歴史で学んだ。しかしそれも百年以上前の話だ。


「陛下は、この慣習そのものを廃止された。シルフィ夫人の事があったからね」

 お母様……。

「王妃教育そのものに無駄が多いから、貴族として勉学に励んでいるなら三年程度で王妃教育は終わる様になった」

「三年ですか?」

 信じられない。

「本当にどうでもいい事が多かった。建国時の地理の地名を古代語で暗記するなんて……王子や王女にも施されない古くて役に立たない教育を受けていた」

 王族の教育は日々改善されていたのに、王妃教育はそうでなかったのだ。


「中に居ると……分からないものですね」

 思わず口に出してしまって、二人に見つめられる。……二人共、私の言葉の意味を理解してしまった。


「その通りだ。……私の妃が東の隣国から嫁いできた人なのは知っているかな?」

「はい」

「彼女が妃教育の内容を見て指摘してくれるまで、我々は全く気付いていなかったんだ」

 アドニス殿下は続けた。

「私が王になったら、妃と共に悪習を見直していくつもりだ。……どうかこの国から見ていて欲しい」


 面会が終わり、私は廊下を歩きながらクリス様を見ないで言った。


「この事、ご存じでしたか?」

「いや、妃教育で考古学の学者が講師をする事は知っていた。ただ内容は全く知らなかったから、疑問に思った事は無かったよ」

「そうですよね。妃教育の内容を調べるなんて、王家を探るみたいですものね」

「……口出し出来る者が居ないまま、新しい知識だけが増えて膨大になっていったのだろう」


 私は立ち止まって廊下の窓の外を見る。クリス様も立ち止まる。


「歴代の陛下や王太子殿下は、王太子妃の教育に全く興味を持っていなかったと言う事ですね」

「王族と教師が別だから、それもあったかも知れない」

 王妃教育の教師は次代の王族の教師になる人達だったそうだ。つまり、王族教育を施す教師より格下で意見を通せる立場ではなかったらしい。


 お母様は幼少期から城に住んでいたと聞いている。

 お母様も王妃様も、王妃教育の中身が無意味である事など分かっていただろう。……でも、それを口にする事は出来なかった。

 王妃様とお母様、どちらがその椅子に座るのかは陛下が決める。教育に異議を唱えると言う事は、それを諦める事と同義だ。他の道を知らない令嬢が出来る事ではなかっただろう。


 お父様に白い結婚を三年願い出たのは、お姉様を口実にしているが、陛下が望んでくれる可能性を捨てきれなかったからだ。しかし三年で王子を二人も産んだ王妃様の立場は盤石だった。

 陛下が、お母様を迎えに来る日は来ない。そして私が生まれた。愛されなくて当然だったのだ。相手が陛下ではなかったし、選ばれなかった自分そっくりの女児だったのだから。


 夫を愛する公平な公爵夫人を装っているが、心は遠い昔に砕けてそのままだ。

 どうにもできない事だと分かっているけれど……酷く悲しい。何がどうと上手く言葉に出来ないけれど。


 気づけば抱きしめられていて、私は何故なのか分からない涙を流してその胸にすがっていたのだった。

後の話で出てきますが、今回のドレスは先代国王の時代のデザインで作る事が決まっていて、それに統一しています。(エリーゼはロザミアが許したので男装でした)


メイフィーの母国は、伝染病が国外からもたらされました。その際、嫁いできた王女の侍女が感染源だった事から王城から感染が広がると言う最悪の事態を招き、人口の二割を失い、王族が途絶えかけました。

それ以後、百年以上国外から妃を取っていませんでした。


一夫多妻を採用していないのは、諍いの種になる上にコスパが悪いからです。スペアにされる女性の人生は全く考えられていない、元々の発想が女性を尊重していないクズ発想です。

結構な数の令嬢が、シルフィと同じ目に遭っています。気持ちを切り替えて幸せになった令嬢が居た半面、シルフィと同じ様に壊れてしまった令嬢も居ました。

ただ、妃教育が壊れを表に出さない方向に作用する為、表面化しないと言う酷い事になっていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ