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ずっと一緒に  作者: 川崎 春
隣国編

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25 再会

 戸惑う私をクリス様は抱きしめたままで言う。


「何処にも、行かないで」


 風が吹いて、クリス様の髪がなびく。


「私、他の人がいいって言われたら……諦めなくてはいけないって思っていました」

「そんな事は言わない」

「今は、そうかも知れません。でも、同じ様な事が起こったら……私は何も持っていないから」

 クリス様の腕に更に力が入った。


「前にも言ったはずだ。何も持っていなくても人は人を好きになる。理屈じゃない。……僕は君が好きだ。これからは何度でも言うよ。だから、そんな事考えないで」

 理屈じゃないのは分かる。だって、どうしたって私はクリス様が好きなのだから。


 腕の力が苦しくて、少し大きく息を吸ってから言う。

「私だけが、好きなんだと思っていました」

 腕の力が緩み、クリス様は私を話すと目線を合わせた。

「僕が良心(つま)になって欲しいと願ったのは、後にも先にも君だけだ。信じられない?」

「いいえ。……でも怖い」

「ごめんね、一人にさせてしまったから不安だったね。僕もメイフィーが辺境に行って、その気持ちが分かったよ」


 クリス様は少し困った顔をした後、馬車の中に目線をやってから言う。

「メイフィーが世話になったね。ありがとうエリーゼ嬢」

「は、はいぃ」

 変な声がしたので振り向くと、エリーゼ様が首まで真っ赤にしてこちらを見ていた。

 人前で抱きしめられた事に気付き、私も思わず顔が赤くなる。

「では、メイフィー、帰ろう」

 ただ頷くと、腕を差し出されたので手を添えてエスコートされたまま、ロゼライト公爵家の馬車へと移動する。


 帰ると、ジョセフだけでなく、母国から連れて来た専属侍女のミリアに泣かれてしまった。

 ミリアはこの国に来るときに馬車に酔って体調を崩した。だから置いて行く事にしたのだが……想像以上にやつれていた。私の為についてきてくれたのに、私が居なければ仕事がない。辛い日々を過ごしていたのだと思う。申し訳なさで一杯だ。


 さんざん謝ってから着替えさせてもらい、クリス様と食事をとった。


「これからは、できるだけ一緒に食事が出来るように仕事を調整するよ」

 今まで都合が合う時しか一緒に食事をしていなかったのだ。朝の早いクリス様にあわせられず、夜も遅いので先に食べていたのだ。

 手紙の時と同じだ。私はまた勢いよく答えていた。

「頑張って起きます!」

「いや、もうあんなに早く登城しないよ」

「そうなんですか?」

「うん。もう国の軌道は正されたし、他の者達が居るって気が付いたんだ」


 クララ様の話も聞かせてもらった。法務大臣様と婚約したと言う。

「では、文官を辞めてしまわれたのですか?」

「うん。でも秘書としてエルリック殿に同行するそうだ。彼女は類整理や資料まとめで飛び抜けた才能があった。使えるなら使うだろうね」


 ちょっとだけ嫌だった。顔に出ていたのか、クリス様は言う。

「嫌なら、登城禁止も出せるけれど」

「そこまでは結構です!もう婚約されたのなら、十分です」

 クララ様の事は解決したと区切りをつける事にした。必要以上に人を疑うのは疲れてしまうし、自分を嫌いになってしまう。できればあまりしたくない。


「やはり、君は優しいね」

「いえ、誰かを好きになる気持ちって、とっても我儘でまわりが見えなくなるものです。私も分かるから……その……」

 赤くなってもじもじしていると、クリス様が言った。


「実は君が学園で泣いた後、エリーゼ嬢とあっと言う間に居なくなったから……婚約が無くなるのではないかと思われているそうだ」

「えっ」

「そろそろ、結婚の準備をするかい?」


 結婚……。


「正直に答えて?どう思った?」

 クリス様はじっと私の様子を見ている。

「周囲を納得させる為の結婚は……嫌です。それにお父様以外の人と踊った事がないのです。だから……」

 デビュタントの日、踊る暇など無かったのだ。……ずっとレオニス殿下を探して歩き回っていた事を思い出す。茶会はお母様やお姉様と行く事があったけれど、夜会は一度だけ。


「いいよ。夜会で一緒に踊ってから結婚式にしよう」

「でも、夜会はこの国ではまだ開けませんよね」

「いや、そろそろ開くつもりでいる。そろそろ社交もできそうだから」

 クリス様が上機嫌でそう言った。

メイフィーの優しい雰囲気にすっかり毒されていた使用人の一人であるフットマンは、ヤヴァイ奴(財務大臣の次男)に情報を与えてしまった事を心底悔んで、自ら辞職しましたが、領地で仕事を斡旋されて再出発しました。

フットマンの友人の方は次男にお金をもらっていたのでギルティ。裁かれました。

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