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ずっと一緒に  作者: 川崎 春
隣国編

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23/55

20 癒しの時間

 私にも口座と言うものがある。

 学園の副学園長になってお給料をもらうようになったからだ。クリス様が生活費を出して下さるので使った事が無かった。それを今回使う事にした。

 往復と滞在で三ヵ月。王都に戻るまでが決められていたのでジョセフも反対しないで見送ってくれたのだと思う。


 一週間かけて移動した時に、エリーゼ様に驚かれてしまった。平気で過ごしていたからだ。

 普通の令嬢や夫人は道の悪さや宿での待遇で体調を崩す人が多いと言う。今回、公爵家からついてきた者がいなかったので、私が一番心配されていたらしい。確かに道が悪かった。


「隣国から一か月移動してきた事もありますから。……食べて寝ていれば、体調は崩さないものですよ」

 あの時も侍女は体調を崩したが、私は大丈夫だった。

「……そう言えば、食事の好みもあまりないのですね」

 食べ物に感想を持たずに淡々と食べる癖が役に立った様だ。


「選べないなら食べるしかありませんので」

 エリーゼ様は一瞬目を丸くした後で言う。

「そんな事ありません。メイフィーア様はその、好き嫌いが無いというよりも興味が……」

「おいしい物や特徴的な毒の味は分かるのですが、不味さは感じません」

 かつて、私の好みを聞いて来る人はいなかった。淑女はどんなものも綺麗に食べる。それを求められて応えた結果だ。

「お母様に……嫌な顔をされたくなくて……」


 今まで、私はクリス様以外に、過去を詳しく話した事がなかった。

 エリーゼ様にならと思って話をした。お母様の異常性、お姉様の思い込み、多忙が故にお父様の心が家庭に向かなかった事、弟が唯一の味方だった日々の小さな安らぎ。

 クリス様との出会い。お姉様の為の茶番劇。


「私は、クリス様の婚約者になったから母国と縁を切ったのではなく、母国からクリス様に婚約者として連れ出してもらった身なのです。帰る場所なんて、何処にもありません」


 エリーゼ様は暗い表情になって俯く。


「エリーゼ様?」

「始めてお会いした時、どんなご令嬢なのか見たくて行ったのです。男女と私を(あざけ)った元婚約者に似た様な人なのではないかと、勝手に悪意を募らせていました。だからあの日はわざと一番使い古した男装で(おもむ)きました。それなのに、あなたは私の男装に一切触れる事なく普通に振舞われて……」


 エリーゼ様は目を潤ませて一瞬黙った後、続けた。

「私はロザミア様にとって子分でしかなく、他の令嬢とはうまくいかなくて……友達など居ませんでした。あなたが、初めての友達なのです。失礼な事をしてすいませんでした」

 驚いて私は言ってしまう。

「ロザミア様の子分だったのですか?」

「引っ掛かるのそこなのですか?!」

 エリーゼ様は大きく息を吐いた後で苦笑する。

「赦してくれますか?」


「勿論です。とても……嬉しいです。私も母国で友達がいなくて、エリーゼ様が初めてのお友達なのです。颯爽(さっそう)と屋敷のエントランスに現れたあなたを見て、あまりに美しいので一瞬言葉が出なかったのです」

「そんな風に言ってもらえるなんて。もう王都に戻らないで、私と一緒にここで暮らしましょう!」

「さすがにそれはいけません」

 ちょっといいなと思いながらもそう言った。


 私とエリーゼ様は、時間を合わせて一緒に出掛けたりお茶をしたが、砦の慰問などがあったので私にも一人になる時間が結構あった。

 知っている人の居ない場所で、親切にされて過ごす感覚は、この国に来た当時を思い出す。癒されると同時に、また逃げてしまったのだと思った。母国を出た時と違って、ロザミア様やジョセフを始め、優しい屋敷の使用人達、学園の先生や生徒……多くの人々に何も言わずに来てしまった事に心が痛んだ。


(このままではいけない)


 私はロゼライト公爵家の養女だ。今の当主はクリス様。未来の妻として一緒に暮らしていたけれど、違うのだとしたらあの屋敷を出なくてはならない。

 クリス様は言った。貴族が裕福な暮らしをするのは貴族の義務を果たしているからだと。だから婚約者で居られないならその先を考えなくては。

 取り乱して逃げてしまったけれど、今なら話が出来る。そう思った。


 婚約を破棄されたら……学園の副校長だもの。教師寮にいれてもらえばいいわよね。

ロザミア情報。


「いい?あなたは今日から私の、お……子分よ!」

「はい」

 お友達といいたかったのに言えなかったロザミア。後にメイフィーに聞いて子分のままだった事にショックを受けます。


 ロザミアがメイフィーの事情を知っているのは、王家に移籍時の調査書(クリスが書いたもの)があるからです。オスカーの婚約者に内定した後でロザミアが読みました。

 聞いたと言う言い回しは、ロザミアの「メイフィーの友達」アピールで見栄です。

 メイフィーも生粋の公爵令嬢なので、王家に事情が筒抜けなのは了承しています。だからロザミアが知っている事は、当然だと思っています。


「私も行きたかった!それもこれも全部、宰相がメイフィーアを放置するからよ!」

「まぁまぁ、俺といちゃいちゃしよう。な?ほらこっち来いよ」

「う……そ、それとこれは別なの!」

 ロザミアは、クリスをかなり恨んでいます。

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