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ずっと一緒に  作者: 川崎 春
出国編

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1 デビュタントの前

出国編を一気に投稿します。隣国編からは毎日一投稿になります。

 お姉様はとても可哀想なのだと、お母様は言った。

 くりかえし聞かされるのは、先妻様がベランダから飛び降りた際にお腹にお姉様が居たと言う事。

 それでも無事に生まれ、お父様が泣いて喜んだ事。しかし先妻様は、そのまま(はかな)くなってしまった事。


「あなたは両親が揃っています。それはとても幸せな事なのです。……ディアナに見せつける様な真似をしてはいけませんよ?」


 親が揃っている。それは確かに片方しか居ないよりはいいだろう。けれど同じ家に住んでいて、見せつける様な事をするなと言われても、どうすればいいのか分からなかった。

 そんな場所に生まれた時から居る。息苦しいけれど、それが私の当たり前で日常だった。

 学園に入ってからも同じだった。仕立ての良い服を着て馬車で通い、昼食にはデザートまで付く。最高位の貴族の暮らし。これで不満など言える訳がない。


 私は欲しいと思っていないのに与えられている。そう思う様になったのは、季節や誕生日。お祝いの贈り物からだ。

 私とお姉様にはリボンや宝飾品。少し色が違うだけで全く同じものばかりだった。

 私はそれを全てお母様が手配していると思っていた。公平になるようにと。


「ディアナ、もうすぐデビュタントね。どんなパリュールにしましょうか」

 お母様の言葉にお姉様は目を輝かせ、嬉しそうに意見を交わしている。

 その話を聞いていて気付いた。今までもらったもの全てにお姉様の好みが反映されている事に。


 私は何も聞かれていない。


 目上の人に自分から何かを言うのは失礼で、贈り物に不服を言う事は、淑女のする事ではないと教わった。だから、そのままにした。お母様が私の話をきいてくれないのは分かっていたから。


 黙っているのは別に構わなかった。

 お姉様はセンスがとても良くて、顔立ちが全然違うのに私にも似合うものを選んでくれた。お姉様は私が大嫌いな筈なのに。お姉様だけに似合うデザインだってあるのに。

 お礼は言えなかったけれど、そういう所でお姉様を尊敬していた。


 お母様が同じだったら良かったのに。そう何度も思った。だからデビュタントでは、お姉様のパリュールを使わせてもらえるか、似た様なものを作ってもらえるのだと思い、密に楽しみにしていたのだ。


 そして、私のデビュタントが近づいてきた。


「これは私がデビュタントで使ったものよ。陛下が似合うとおっしゃって下さったものなの」


 衣装合わせの際に出てきたパリュールは、お母様のお古だった。

 その様子を、お姉様が傷ついた顔で見ている。

 私に見せつけるなと言ったお母様が、どうしてそれを出してきたのかもわからず、私は混乱したまま言葉を口にしていた。


「私、お姉様のパリュールがいい……」


 お母様もお姉様も固まっていた。そして自分の失言に気が付いた。

「ごめんなさい!」

 私はそのまま立ち上がり、部屋に逃げ込んだ。……厳しい顔をしたお父様とすれ違ったが、気にしている余裕はなかった。


 その翌日、私はお父様と一緒に出かける事になった。

「突然、どうしたのですか?」

 お母様が聞くとお父様は言った。

「デビュタントのパリュールくらいは好きなものを持っていてもいいだろう?お前達は茶会に行きなさい。丁度時間があるから、私が一緒に見繕って来るよ。……ディアナだけ特別扱いは良くないだろう?」

 お母様は唖然としているが、お父様はそんなお母様に背を向けると私をエスコートして馬車に乗せた。

 お父様と一緒に出かけるのは緊張したけれど、王宮でのお仕事の話をしてくれてちょっと楽しかった。


 そして……私は何一つ選べず、お店の人と父のアドバイスで選んでもらう事になった。お母様のお古でもお姉様のお古でもないパリュールはとても嬉しかったけれど、何が欲しいのかは分からなかったのだ。

 その後、誕生日の贈り物などを聞かれ、お父様の顔色が悪くなり不機嫌になってしまった。

「ごめんなさい」

 私が謝ると、更に悲しそうになった。


 帰りの馬車でお父様はぽつりと言った。

「仕事にかまけて、またやってしまったのだな」

 お父様が泣きそうだったのでハンカチを渡そうとしたら、その腕を引っ張って抱きしめられた。

 御者は気を利かせて、遠回りをして家に帰ってくれた。

 宝飾品のデザインは、シルフィにも気に入られる(シルフィにも似合う)ものをディアナが選んでいただけです。

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