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114日目/115日目:ツーデイズ⑦

バイトはあるけどイベントは無い。そんな平日。

114日目:水曜日


「……と、いうわけでして」

「なるほどねー」


 放課後、Venti。


 珍しくシフトが被ったココさんに、最近あった出来事を説明した。


 先輩の親戚絡みのことも、掻い摘んで。


「でも、なんでも私に話しちゃって大丈夫なのー?」

「はい。『ココになら話してもいいよ』って言ってました」

「意外だなー。信頼されてるんだ」

「アキラ先輩と仲がいいみたいですし、それ繋がりじゃないですかね」

「お兄ちゃんも、私とほぼ同じようなスタンスだからねー」


 夏休みにプールに行った時に、兄妹揃ってプールに入らず、私たちのことを見守っていたのは記憶に新しい。


「ということは、アキラ先輩も恋愛をしないんですか?」

「えっ、さすがにお兄ちゃんの恋愛事情までは知らないよ」


 実の兄の物語には興味が無いのか。


 それとも、ココさんなりのプライバシーに対する配慮なのかな。私にはそんなに配慮していない気がするけど。


 そんな会話をしていると、扉の鈴がチリンと鳴った。


「いらっしゃいませ。……あ、笹さんじゃないですか。気に入ってくださったんですか?」

「こんにちは、茶戸先輩。はい、美味しかったんでヤマダにも教えてあげようと思って」

「ど、どうも。ヤマダです」


 笹さんの後ろから、ヤマダと名乗る女の子が顔を出した。


 眼鏡をかけていて、髪色は明るい茶色で、ショートとボブの中間のような髪型をしている。


「前に笹さんがお話していた方ですね」

「はい。例のヤマダです」

「わ、私の話なんてしたの?」


 どんな話をしたかは、もちろん内緒だけど。それこそ、プライバシーに配慮しないと。


 カウンター席に座った2人に注文を訊ねようとしたら、マスターがやってきた。珍しい。


「あ、あの……佐々木(ミドリ)さんですよね……?」

「はい、そうですけど」

「前に来ていただいたことが……噂になっていまして、その……サインとかいただいても……」

「はい。もちろん良いですよ。なんだったら、マスターさんと一緒に写真とか撮るのも大丈夫ですけど」

「あ……ありがとうございます……!」


 マスターが笹さんのファン……という可能性より、お客さんに笹さんのことについて訊ねられることが増えたから、証拠としてサインを飾りたいのだろう。


 依然として、私は笹さんがどれくらい有名な人なのかわかっていないけど。


 敢えて検索とかはしなかったけど、これをきっかけに調べてみようかな。流石に本人には訊けないし。


 撮影を終えサインも貰ったマスターは、ホクホク顔で注文を聞いてから厨房へ消えていった。


「茶戸先輩。これからもまた、このお店に来ても良いですか?」

「もちろん。是非また、ヤマダさんといらしてください」

「ね、ねぇササキ。この人とどういう関係なの……?」

「えーと。秘密を共有する関係……かな」

「言葉のチョイスが絶望的ですね、笹さん」


 確かに、私が先輩と第二理科準備室を使っている秘密と、笹さんがヤマダさんに片想いしている秘密を共有してはいる。


 けど、その表現は誤解が加速すると思う。世界が一巡するくらいの速さで。


 口を開けたまま呆然としているヤマダさんに、なんて言葉をかければ良いんだろう。どうフォローするか悩んでいると、ココさんが口を開いた。


()……ヤマダにもさー、先生にバレたら困ることくらいあるでしょ?」

「えっ、まぁ、はい……」

「2人の秘密なんて、その程度のことだよ」

「なるほど」


 ヤマダさんは納得したようで、ウンウンと頷いた。


 ココさんは第二理科準備室のことは知らないハズなのに、随分と的確な例えで少し驚いた。


「お待たせしました……アップルパイのセットです」


 マスターが料理を運んできた。


 しまった。今日は私もココさんも居るのに、シンプルに仕事を忘れていた。


 それを察したのか、マスターは軽く微笑んだ。


「良いんですよ……。お店の空気が明るくなるので、お二人はたくさんお客様とお話してください……」

「ありがとうございます、マスター」

「私はクグルちゃんと違って、そんなにお喋り上手じゃないんですけどねー」

「ど、どの口が言ってるんですか」


 なんて話しながら、カウンター席で楽しそうに会話をする笹さんをちらりと見る。


 常連になってくれたら嬉しいし、ヤマダさんと上手くいってくれたらもっと嬉しいな。


115日目:木曜日


「明日、デートしない?」


 朝、いつもの第二理科準備室で先輩がそんなことを言った。


 明日は普通に学校だけど、放課後デートということだろう。


「良いですよ。でも珍しいですね、金曜にデートなんて」

「土曜は用事があってさぁ」

「なるほど」

「日曜はさ、ボクの家でハロウィンパーティーしようよ。ほら、31日は平日だから」

「あ、もしかして私も何か着る感じですか」

「うんっ。なんでも貸してあげるからねぇ」


 先輩の服は、主に胸の辺りのサイズが合わない。だから、借りても着られるかはわからないけど。


 まぁ、先輩の家ならどんな服でも着れる。どれほど恥ずかしい仮装でもドンと来いだ。


「では、ハロウィン当日は何も無い感じですかね」

「そうだねぇ。普通に学校だし」


 でも、一応お菓子は用意しておこう。……いや、先輩的にはイタズラの方がおいしいのかな。


 先輩って、普段から色々してはくるけれど、イタズラって言うとしてない気がする。


「じゃあ、予定も立てたことですし。今日のログボをどうぞ」

「なんか久しぶりな気がするねぇ」


 もちろん、キスが久しぶりという意味ではないハズ。

 はっきりとログボって言うのが久しぶり、という意味だろう。


 惰性でログインするようになったら、ゲームはおしまいだし。今日もログインしてよかった、って思ってもらいたい。


 キスするだけのログボでも、この後は何も予定が無い日でも、きちんと丁寧に先輩と向き合う。その大切さを、改めて認識した。


「……ふぅ。じゃあ、また明日だねぇ」

「はい。明日のデート、楽しみにしてるね」

「あはぁ。期待にこたえられるよう、がんばるねぇ」


 特別なことが無くても、先輩と一緒に居られるだけで楽しいけどね。


 第二理科準備室を出ると、予鈴が鳴った。


 先輩に手を振って、自分の教室へ向かう。そんな私の頭の中は、既に明日のデートのことで一杯になっていた。

更新が遅くなってすみません。生きてます。書いてます。

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[良い点] 最高です!!! 次のお話も楽しみに待ってます!!!
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