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90日目の夜:絶対に君がいてくれないと

「莎楼、怒ってたよね……」


 自分の言葉選びというか、語彙力のなさに絶望する。


 でも、だからといってログボがないと生きていけないなんて言うわけにもいかないし、でもお休みでも大丈夫っていうのは余計だったかも。


「うぅ〜」


 制服のままベッドにダイブして、枕に顔をうずめて脚をばたばたと暴れさせる。


 ログインボーナス、つまりキスとかがお休みでもギリギリ耐えられるけど、もしかしてテストが終わるまで会わないという意味で取られたかもしれない。


 もっと他の伝え方があったハズ。それこそ、ちゃんと莎楼と話し合ってから決めるべきだった。

 あんな風に一方的に、しかもログインさせてもらってる立場のボクが言うことじゃなかった。


「どうしよぉ、莎楼に嫌われちゃったかも……」


 今日のキスの後の表情、とても悲しそうだった。

 全部ボクのせいだ。


 電話して謝ろうか。いや、それすら拒否されるかもしれない。でも時間が経てば経つほど溝は深まるかもしれないし、早めに話しておいた方がいいかも。


 言葉にしないと、想いは伝わらないんだから。


「まぁ、その伝え方を間違えちゃったんだけど……」


 制服のポケットからスマホを取り出して、通話履歴から莎楼を探す。センパイと莎楼くらいしか通話相手がいないから、すぐに見つかる。


 ボクの親指が莎楼の名前を押そうとした瞬間、電話がかかってきた。突然の着信音とバイブの振動が、ボクの心臓を停止寸前に追い込む。


「びっ……びっくりしたぁ……!」


 画面を見ると、なんと莎楼からの着信だった。こんなにタイミングがいいことってあるのかな。


「も、もしもしぃ」

『先輩。ちょっと良いですか』

「うん。どうしたのぉ?」


 もしかして、ログボがお休みのことを莎楼は気にしてなかったのかな。

 それでも、莎楼の話が終わった後でちゃんと謝ろう。


『どうしたもこうしたも無いよ、勝手にログボ休みとか決めて』


 前言撤回。気にしてるどころじゃない。怒ってる。


「ご、ごめんねぇ。あのね、今ボクもそれを謝ろうと思ってたところでね……?」

『もう、私が居なくても大丈夫ってことですか』


 ボクが思っているより、数億倍怒ってる。

 少しでも言葉を間違えたら、その瞬間に関係が終わってしまいそうな雰囲気に、手足の先が冷えていくのがわかる。


 深呼吸をして、間違えないように、震えないように言葉を紡ぐ。


「絶対に君がいてくれないと、ボクはダメに決まってるじゃん」

『……じゃあ、どうして先輩の方からログボを休むなんて言ったの?』

「それは今朝言った通りだよ。君の順位が下がったら……えっと、がんばりを無駄にしたくなかったから」

『それは……まぁ、先輩の優しさだとは思いますが』

「あ、あのね。他にも理由があってね。ボク、言葉にして伝えるのがヘタクソだから……あの、ね」


 上手く言葉がまとまらない。頭の中にある『伝えたいこと』を、そのまま言語化できない。もしくは、そのままストレートに伝えるとまた莎楼を悲しませてしまいそう。


 慎重に言葉を選んでいる間、莎楼は静かに待っていてくれた。


「……このままログボをもらってたら、テスト前に100日目になっちゃうでしょ。君のことだから、きっと特別なログボを考えてくれてるんじゃないかなって」

『……そうですね。考えてます』

「でも、テスト前にそんな特別なログボをもらうのはなんだか悪い気がして。だから、お休みにしよって提案したの」

『最初から、そう言ってくれたら良かったのに。私、ココさんの前で泣いちゃったんですからね』

「うっ、うぇえ!?」


 怒りではなく悲しみ、しかも涙するほどだったなんて。どうしようどうしよう、莎楼のことを泣かせちゃったなんて。しかもココの前で。


「ごめんねぇ……本当にごめん。ログボが休みでも大丈夫なんて、強がりというか……。君がいないと、ボクは生きっ……」


 生きていけない、は重すぎるって。

 そんなことを言う人が、しばらくキスはしなくても平気なんて説得力が無さすぎる。


『……イキ?』

「え、えっと」

『生きていけない?』

「……うん」

華咲音(かさね)先輩。私も、あなた無しでは生きていけないので。責任、取ってね』

「はっ、はい!」

『ふふ。では、ログボ休業の件は納得したので。おやすみなさい』

「おやすみぃ。また明日ね」

『キスしないのに会えるの?』

「会えるよぉ!」


 やっぱり誤解させてしまっていた。でも、会えるなら別にキスをしてもいいのかな。だって、別にそこまで時間を取るわけじゃないし。


 いやいやダメダメ、それだと100日目に到達しちゃうから。


『ログボに縛られすぎていたのかもしれませんね。私も先輩も』

「そうだねぇ。いや、それは完全にボクのせいなんだけどね」

『順序が逆になってしまいましたね。普通、最初は会うだけで、関係が発展してからキスするものですよね』

「そうだねぇ……」


 毎日キスする関係から、キスをしなくても会う関係に。なるほど、確かに順序が逆だ。


 それくらい無茶な要求を飲んでくれた莎楼には、感謝してもし尽くせない。


『では、今度こそおやすみなさい』

「おやすみぃ」


 通話を終了して、活力の戻った体を起こす。

 まずは制服から着替えて、お風呂にも入らなきゃ。


 明日も好きな人に会える。

 たったそれだけの事実だけで、ボクは生きていける。


 だから、絶対に君がいてくれないとダメなんだからね。

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