いつもの二人
レビューありがとう!!
リハビリでちょっと軽めに。
「ユキ」
「何だ、レフィ」
「儂とお主は、まあそこそこの付き合いとなった。そこそこのな」
「そうだな。そこそこの付き合いで結婚して、子供も出来たな」
「そうじゃ。そこそこじゃ」
お前はホントそういうところ可愛いな。
「ふむ、で、そこそこの付き合いの俺に、何か言いたいことでもあるのか?」
「それはもう、数え切れん程いっぱいじゃ! 全く、お主のようなどうしようもない男に付いて行くのは、儂くらいのものじゃということをもっと理解して、こちらに感謝すべきじゃ」
「おう、ありがとう。とても感謝してるぞ」
「うむ、そうじゃろうそうじゃろう。つまりお主は、儂に借りがあるということじゃ」
「いや、無いが」
「……借りがあるということじゃ! 毎日、儂に世話をされておる訳じゃからの! であろう?」
「おぉ、そうだな! 妻の献身的な愛をいっぱい受けて、ありがたい限りだぜ」
「そういうことじゃ! であるからには、その借りを清算すべく、この一手を『待った』してくれても良いのではないか?」
「ダメ」
「ぬがーっ!」
頭を抱え、吠えるレフィ。
将棋で『待った』してほしいというのを、随分長ったらしく遠回しに言ったものである。
母となっても、相変わらず負けず嫌いなヤツだ。
――現在時刻は、深夜。
我が家の皆はすでに眠り、リウとサクヤもぐっすり夢の中だ。
まあ、我が子達は今が夜泣きのピークの時期っぽいので、それはもう突然起きて泣きまくるのだが。朝も夜も元気いっぱいだ。
だから、最近の夜は二人を旅館の方に連れて行き、こうして俺とレフィで面倒を見ることが多い。俺達は別に、そんな睡眠を取らなくても問題ないからな。
ダンジョンにいる限り俺は、三時間くらいの睡眠で肉体が元気になるし、ぶっちゃけ眠らなくても多分一週間くらいなら行動し続けられる。
ウチの妻軍団がめっきり『母』になってしまったことで、俺のやれることがない状況が続いていたが、今はこれが俺の役割だと言えるだろう。レフィもよく起きてるけど。
夫の面目が保てて、ちょっと嬉しい。
「はい、これでお前の負けだな。じゃ、今日は尻尾枕でもしてもらおうかね? 妻の尻尾は俺のもの!」
「儂の尻尾は儂のものじゃ! ぐ、ぐぬぬ……仕方あるまい、ほれ」
俺達の勝負は大体いつも罰ゲームありきで、こういうことをするのもいつものことなので、特に渋られることもなく差し出された尻尾に、俺は頭を横たえる。
すべすべで、温かく、柔らかく、だがちょっと弾力のある感触……素晴らしい。
「……はむっ」
「うにゃっ――く、咥えるのはやめよ!」
レフィの尻尾の先を咥え、軽く舐めると、我が妻はビクンと身体を捩らせて反応する。
「何を言う、この枕は俺のもんだ! 俺のものをどう扱おうと、文句を言われる筋合いは無いな!」
「くっ……次、儂がうにゅっ、勝った時は、覚えてうひっ、おれよ……?」
「おぉ怖い怖い。それがいつのことになるのか知らんが」
「いいや、それはこの後すぐじゃ! ほれ、準備せよ! どうせ、別に今は眠くもないのじゃろう?」
「お、いいぜ。だが、わかってるな? こうして尻尾枕をしてもらった後だ、次の俺の要求はもっと大きなものになるぜ?」
ニヤリと笑みを浮かべてそう言うと、レフィはちょっとだけ頬を赤くしながらも、引かない。
「フ、フン、言っておれ! りすくを恐れておっては、勝利とは掴めぬもの! さあ、いざ尋常に勝負じゃ!」
「バカめ、レフィ! 時には引くことも大事なのだということを貴様には教えてやろう! ――で、何で勝負する? また将棋か?」
「あー、どうするかのう。しょーぎは楽しいが、一戦やると割と疲れるからの」
「こういうゲーム、本気でやるとマジで頭から湯気出そうになるよな。本当に脳みそが疲れる感じがあって」
「うむ、儂は肉体的には疲れることがほとんど無いが、最も疲労を覚えるのは、こういう脳を酷使した時じゃの。ユキ、甘いもの」
「ちょっとにしとけよ、歯ぁ磨いた後だろ。――まあでも、感慨深いぜ」
「何がじゃ?」
「いや、昔はお前とやっても、こんだけ頭が疲れることなんて無かったからな。楽ーに勝てたカモだったが、今はこうして、脳みそ疲れるくらいの接戦を繰り広げられるようになったからさ」
「か、かもは言い過ぎじゃろう! そ、それよりほれ、何をやる? ぼーどげーむか?」
「あー……いや、今日は新しいおもちゃでも出すか? 今あるもんはどれもこれも結構遊んでるし、たまにはいいだろ?」
「……そうじゃな。まあ今回は良かろう。お主のいつものがらくたとは違う訳じゃし」
「ガラクタじゃないですー。よし、そんじゃあ――次にやるのは、これだ!」
ででん、と俺が新しくDPで出したのは、ミニビリヤード台。
ミニなので、テーブルの半分も使わないサイズで、野球盤とかより一回りデカいくらいだな。
ただ、ものは一通り揃っているので、ゲーム自体は問題無く出来るだろう。
「ほう? 見たことのないおもちゃじゃな。これはどうやって遊ぶんじゃ?」
「これはビリヤードと言って、こうして玉を並べて、棒で……」
「棒で?」
……そう言えば俺、ビリヤードのルールうろ覚えだったわ。
なんか、九番のボールを取ればいいとか、そんな感じのルールだったはず……。
「……棒でこの白い球を突いて、一番から順番にこの穴にボールを落としていって、最終的に九番を落とした方の勝ち、だったはずだ!」
「ふむ? では、途中で落とした球の数では勝敗が決まらんのか?」
「わからん、忘れた」
「いや何で自信満々に出しておいて、るーるを知らんのじゃ?」
「しょ、しょうがないだろ、俺だってまともにやったことないんだからよ! まあ多分、他の番号のボールは取っても関係なくて、とにかく九番落とせば勝ちのはずだ。で、この穴にボールを落とすのを失敗したら交代だな。……ま、とりあえず一回やってみよう。曖昧なところは俺達でローカルルールを勝手に決めればいいし」
「それもそうじゃな、別に厳格にはやらんで良いか。で、どうやってこのちっさい棒を使うんじゃ?」
「本来はゲーム台がもっとデカいから、こんな感じで持つんだが……ま、こうして、左手を土台にして、右手で押し込む感じでやれれば、何でもいいと思うぞ」
「ふむ、わかった。――では、儂からやらせてもらおう! ユキ、勝負じゃ!」
「おぉ、望むところだ! それはもう、ボッコボコにしてやるぜ!」
レフィは、慣れないながらもキューを構え――そして、手玉を撃ち込んだ。
弾かれた手玉が九つのボールにぶつかり、飛び散る。
台の外に。
「あっ」
「うわっ、バカ、強く打ち過ぎだ!」
バラバラに飛んで行ったボールを、慌てて俺達は拾い集める。
旅館の縁側の窓を開け放っていたせいで、ボールの一つが外まで飛んでいってしまい、真っ暗な中を探してどうにか見つけることに成功する。
「ぐ、ぐぬぬ……ちと力加減が難しいの。今はもう、それなりに手加減というものには慣れたつもりじゃったが……」
「全く、相変わらず不器用だな、レフィ! 棒を貸せ、もっかい最初から、俺が手本を見せてやる」
再びボールを最初の状態に並べ直した後、俺はレフィと同じような感じでキューを構え、打つ。
先程と同じように、弾かれた手玉が九つのボールにぶつかり、飛び散る。
台の外に。
「あっ」
「……ユキ? 先程儂に何やら言っておったが、何か言うことがあるのではないか?」
「……まあ、こういう時もあるな! さ、気を取り直してボールを並べ直すぞ!」
その後俺達は、キューではなく代わりにデコピンを用いることで、どうにかゲームを成立させた。
うろ覚えのルールでやったビリヤードだったし、というかこれをビリヤードと言っていいのか微妙なラインではあるが、これはこれで楽しかったし、割と盛り上がった。
きっと俺は、レフィと一緒ならば、何でも楽しいのだ。
17巻、本日発売!
多分、今巻が最終巻になる可能性が高いかな……いやけど、17巻まで出せれば割と十分では……? ぶっちゃけ、結構満足はしてる。
みんな、ここまで付き合ってくれて、本当にありがとね。皆さんが読んでくださったおかげで、ここまで出すことが出来ました。17巻もどうぞよろしく!
ちなみにWEB版は、まだ全然書きます。前程の頻度では更新出来ないかもしれませんが、サクヤ達のことで書きたいものはまだまだあるので、今後もお付き合いいただけると幸いです!
あ、今書いているもう一作品の、『彼方へ紡ぐ』も二百話を超えて書いているので、そちらもどうぞよろしく!
まだまだ全然書いてくぜ!




