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魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする  作者: 流優
闘技大会『デステア・トルム』

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作戦開始



 ――ユキが酒場で暴れている頃。



「――どうだい、ハロリア。君から見てユキ君は」


 玉座の上で魔界の王、フィナルは、眼前に佇む部下へとそう声を掛けた。


「……そうですね、ここまでの道中を共にした身として、言わせていただくとすれば――良くも悪くも、チグハグな男、という印象を受けます」


「へぇ?どういうことだい?」


 ハロリアの意外な評価に、魔界の王は少しだけ驚いた表情を浮かべ、彼女に続きを促す。


「ダンジョンの魔王らしく少々力に対する自負心があり、自己陶酔気味の面があるかと思いきや、言う程高慢さは感じられず、身内にもとても甘い姿。また、思考が素早く、王の話も意図もすぐに理解するだけの頭脳があるのにもかかわらず、大して交渉して来ようともせず、話を吞んでしまう浅慮さ。そういう、矛盾した面が彼には多く見られます」


「ハハ、確かにそんな子だね、ユキ君は」


 よく観察している彼女の言葉に、笑い声を上げる魔界の王。


「恐らくは、我々と大事にするものが少々ずれているのでしょう。そんな独特の感性をしているが故に、良くも悪くもチグハグ、と」


「うんうん、言いたいことはよくわかるよ。君の言う通り、多分彼には僕達とは少し違った価値観があるんだろうね。何と言うか……考え方が、僕達とは別の所にあるイメージかな」


 うーん、と首を捻りながら、魔界の王は話を続ける。


「僕の知っている『魔王』という種族からも、魔族という種からも、彼は大分外れているように感じるし……あれかな。ユキ君は別の世界からでも来たのかな」


 ユキが異世界人ということを知らないはずの魔界の王は、しかし彼の異質さから、ほぼ正解を見抜いていた。


「お戯れを」


「ハハ、そうだね」


 と、二人が話していたその時、ススス、と魔界の王の下へ近づく、一つの影。


「――フィナル様。内部工作、終了いたしました。いつでも協力者を送り出すことが可能です」


「お、ようやく終わったかい。仕込みの調子は?ちゃんとユキ君達が安全に動けるように手配してくれたね?」


「ハ、全て指示通り、順調にございます」


「よかったよかった。僕も、彼のことは敵に回したくないし、これからも出来ることなら長く付き合っていきたいんだ。その辺りはしっかり頼むよ」


「畏まりました。――それと、もう一つご報告が」


「何だい?」


「魔王ユキが、酒場にて人間の勇者と接触いたしました。どういたしますか」


「あぁ、前に魔界への侵入報告があった勇者ちゃんか。まあ、それは気にしなくていいよ。彼、多分監視してた君の存在にも気が付いていたでしょ?」


 王の問い掛けに、こくりと頷く彼の部下。


「一度、隠れていたこちらに視線を送って来ましたので、まず間違いなく」


「なら、つまり彼は勇者と接触したことを僕にバレても問題ないと判断したんだ。それに、その勇者ちゃん達一行は多分、僕らと敵が一緒だからね。敵の敵が味方だとは言わないけど、敵にとっての敵が多いのであれば、それに越したことはない。彼女らのことは、ユキ君に任せてしまおう」


「ハ、了解いたしました」


 頭を下げる部下に、魔界の王はうんうんと満足そうに頷いてから、言葉を続けた。


「報告ありがとう、それじゃあ――明日になったら、彼らを呼ぼうか」



   *   *   *



「――ユキ君。君には、闘技大会に出てもらおうか」


 レイラに正座をさせられ、酒場の件について色々と小言を言われた翌日。


 再び玉座の間に呼ばれた俺は、玉座に座っていた魔界の王から、にこやかにそう言われた。


「闘技大会?」


「うん。魔界の力自慢の子達が、近々ここレージギヘッグにある闘技場に集って、まあ、何でもありの力自慢大会をやるんだ。数日掛けて行われる予定なんだけど、結構大規模な大会だから、その時期は街全体がお祭り騒ぎになるんだよ」


「へぇ……楽しそうだな」


 出店とかやってるのだろうか。エンに、面白いものを見せてあげられそうだな。


 ……だが、まあ、力自慢大会ね。


 随分とマイルドに表現したもんだ。


「それで、その大会には悪魔族の子達が、自分達の力の権威を見せつけて支持者を増やすために、自慢の選手をいっぱい送り込んで来るようでね。だからユキ君には、彼らを試合で倒して、出来る限りで目立って欲しいんだ。――つまり、優勝してくれ」


「……随分簡単に言ってくれるな。今更こんなことを言うのもアレだが、俺、ハッキリ言ってそんなに戦闘の心得がある訳じゃないんだけど。そんな簡単に負けるつもりはないし、出るからにはきっちり全員ぶっ潰すつもりではあるけど、確約は出来ないぞ?」


 俺が出来るのは、喧嘩殺法ぐらいだからなぁ。

 武器とか魔法とか、基本ごり押し戦法だし。


 故に相手もパワーファイター型だと戦闘もグッと楽になるんだが、武術の達人とか出て来られたら、ちょっと手も足も出ないかもしれない。


 その場合は……そうだな。飛んで逃げて、空から一方的に空爆をかまし続けるか。


 相手も翼持ちだったら……まあ、また考えよう。


「大丈夫。君を出場選手として無理やり捻じ込む時に、出場選手は王の権限で全部確認したけど、まず君より強いのはいなかったから」


 うわぁ……好き勝手やってやがるぜ。


「でも、数人だけ、要注意人物がいるから、その子達の情報、使用武器や戦闘スタイルに関しては後ほど詳細に伝えよう」


「よろしく。……あぁ、なるほど、そうやって俺が表で相手のメンツを潰してる間に、お前らが裏で攻撃でも仕掛けるってか?」


「フフ、よくわかってるじゃないか。――あ、それと、顔を隠す仮面は持っているんだったよね?だったら、はい、これあげる」


「何だこれ?」


 そう言って魔界の王から手渡されたのは、一つの指輪だった。


「それを付けると、目の色と髪色を自在に変えることが出来るようになる魔導具だよ。それは君にあげちゃうから、今回のことが終わっても有効に使ってね」


 変化の指輪:魔力を流し込むことで、対象の髪色と瞳の色を自在に変えることが出来る。品質:A+ 


 へぇ、なるほど、変装用の小道具か。

 なかなか性能は良さそうだし、見破られる可能性も低そうだな。


「それじゃあ、ありがたく」


 早速、俺はレフィの指輪が嵌まっている左手の薬指以外のテキトーな指に、その魔導具を装着する。


 色としては……そうだな、やっぱり変装用で、普段の俺とは乖離(かいり)した姿の方がいいだろうから、派手な色がいいだろう。


 とすると――。

 

 頭に一つの色を浮かべた俺は、今しがた嵌めた指輪に練り上げた魔力を込めていくと、呼応するようにして俺の頭部と瞳がどんどんと薄く魔力を帯びていき、やがてそれが完全に覆って、変化を完了させる。


「へぇ……面白いもんだ」


 ススス、と寄って来た魔族のメイドさんが用意してくれた鏡で、自身がどうなっているかを確認した俺は、そう興味深い声を漏らす。


 ――銀色の髪と、銀色の瞳。


 俺の黒髪と、黒と赤のオッドアイは、銀一色に変化していた。


 ふむ……これで、ステータスも偽装ステータスに変更しておけば、正体が魔王ユキとバレる可能性がグッと下がるだろう。


 と、まじまじと自身の姿を確認していると、その時小さくクスリと笑う声が耳に届く。


「あ?何だよ?」


 笑い声の発信源――レイラの方に顔を向けると、彼女はニコニコと笑みを浮かべながら答えた。


「フフ、いえ、レフィ様とお揃いの色だと思いましてー」


 そうやって言われてから俺は、派手な色と考えながらも赤色や金色などではなく、自身が無意識の内に銀色を選択していたことに初めて気が付く。


「あっ……い、いや、これは派手な色にしようと思ったから、自然とこうなっただけだ。べ、別にレフィがどうとかじゃねぇ」


「えぇ、わかっていますともー」


 グッ……やめろ、そんな生暖かい目で俺を見るな。


 コホンと咳払いをしてから俺は、指輪から魔力を抜いて元の髪と瞳の色に戻し、再び魔界の王と向き直る。


「まあ、わかった。出来るだけのことはやろう。そんで、その闘技大会ってのはいつなんだ?」


「五日後だよ。何か練習とかしたいだろうから、練兵場を貸してあげる」


 ……練習か。


 俺、別に武術の訓練とかしたことないので、練習と言われても正直あんまりすることないんだが……何か、闘技大会なんてお祭りに合わせた派手派手な魔法でも開発してみようか。


 いいな、そうしよう。


 こう……複数の魔法を組み合わせて、一つの技として見せる、みたいな。

 イメージとしては、アレだ。ポケ〇ンコンテストの技を競い合うヤツ。


 うむうむ、何だか俺も、この王への協力とは別に、闘技大会が楽しみになって来たぞ。


 魔王の力を、存分に見せつけてやるとしようか。




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こちらもどうか、よろしくお願いいたします……! 『元勇者はのんびり過ごしたい~地球の路地裏で魔王拾った~』



書籍化してます。イラストがマジで素晴らし過ぎる……。 3rwj1gsn1yx0h0md2kerjmuxbkxz_17kt_eg_le_48te.jpg
― 新着の感想 ―
[良い点] ポケコンテスト懐かしくて泣いた
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