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魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする  作者: 流優
魔界へご招待

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使い《2》



「え、何、お前、そんな風に呼ばれてたの?」


 『知識欲の鬼人』て……いや、確かに以前から好奇心旺盛なヤツだとは思ってたけどさ。


「フフ、お恥ずかしい。私が若い頃に呼ばれていたあだ名ですねー」


 頬に手を当て、ちょっと恥ずかしそうに頬を染めて微笑むレイラ。


 若いって……アナタ、確か俺より年下ですよね?


 ……まあ、今世じゃあレイラの方が年上なんだけどさ。俺、生後一年未満だし。


 そういう意味だと、アレだな。俺、イルーナより年下じゃん。

 おねえちゃんとか今度呼んでみようか。喜びそうだ。


「た、確か貴方は、魔界では採れない薬草の採取に人間の治める領域へ向かい、それ以降消息が途絶えていると聞いていましたが……な、何故貴方ともあろう方が、女中の真似事を……?」


 あぁ……なるほど。


 その後にレイラは、奴隷狩りにでも捕まってあの街に囚われ、そして俺がそこに襲撃を掛けて、今に至る、と。


 それにしても、この様子からするとレイラ、結構有名人だったのだろうか。

 

 近衛隠密兵のフードちゃん、レイラを前にちょっと委縮しているようだし。


「まあ、色々あったんですー」


「え、いや、しかし――」


「色々、あったんですー」


「……そ、そうですか」


 にこやかに、しかしただその一言をごり押すレイラに気圧され、フードちゃんはこくこくと首を縦に振った。


 ……俺も、出会うまでに何があったのかちょっと興味あったんだけども、この様子だと聞くの怖いからやめておこう。


「それより、魔王様――ユキ様にご用があってここまでいらっしゃったのではー?」


 相手の仕える者も『魔王』という存在であるため、ユキ様とわざわざ言い換え、そう促すレイラ。


「あっ、そ、そうでした。し、失礼しました。――まず、自己紹介から。私は、ハロリア=レイロートという者です。魔界を統べる魔王様の……そうですね、貴方が仰ったように、メッセンジャーと思ってください」


「おう、よろしく。まあ、もうとっくにわかってるだろうが、俺がユキだ」


 すると、フードちゃんは何から話すかの順番での考えていたのか、少しだけ黙考した様子を見せてから、やがて徐に口を開いた。


「……それでは、我々魔族が治める領域、『魔界』の現在の状況からお話しましょう――」



   *   *   *



「――そして、私がここのことを嗅ぎ付けることが出来たことと同様、旧体制然とした()の一派もまた、貴方のことを嗅ぎ付けていることでしょう。奴らからすれば、完全に貴方にメンツを潰された形になるので、何らかの干渉は確実にあるだろうと思われます」


「……なる、ほど」


 フードちゃんの言葉に俺は、ゆっくりと相槌を打つ。


 ――話としては、そんなに難しいものじゃない。


 簡単に言ってしまうと、魔族の領域である魔界にて、強大な二つの派閥がぶつかり合い、日々鎬ぎを削っているようだ。


 まず、現魔王――分かりにくいから略さずに行こう。魔界の王一派。


 コイツらは、魔族の中では革新的な一派であると言える。

 それは、今日に至るまでの、魔族の『力』至上主義の価値観に危機感を覚え、力以外の手段を用いようと画策し始めたヤツらだからだ。

 人間一人勝ちの現状を良しとせず、他種族と協調し、融和的な政策を以て魔族を統括し、そして生存を試みようとしている。


 そしてもう一つが、『悪魔族』を頂点とした、保守的な一派。別名脳筋一派。


 今までと同じように力を第一とした、敵は全て圧倒的な力で粉砕すれば良いという信念の、分かりやすいヤツら。

 実際、魔族は強力な身体能力と高い魔力を有しているため、その力のゴリ押しで他を圧倒するのが可能であるのがタチの悪いところだろう。


 で、その目的までは計り知れないが、王都アルシルにちょっかいを出し、俺が遭遇したのは、こっちの一派。

 脳筋集団じゃないのか、と聞いたところ、力を頂点とする価値観に縛られながら、なおそういう裏工作を得意とする一族も敵内部にいる、とのこと。


 魔界における勢力的には、やはり今までの価値観を「是」とした脳筋一派の方が強く、魔界の王一派は劣勢なのだそうだ。

 ただ魔族以外、獣人族や亜人族は魔族が敵であるよりは味方である方がマシなので、魔界の王一派の支援を行なっており、今のところは均衡を保っているらしい。


 ……アレだな、これ、その内盛大に戦争でもおっ始めるだろうな。


 今はまだ、裏の暗躍、あって小競り合い程度だそうだが、現在の魔界は、言わばたんまり火薬の詰められた火薬庫に、火が点いたようなものだ。


 近々爆発するのは、目に見えている。前世のバルカン半島みたいなところだな。


 そうして魔界内部で全面戦争となった場合、不利になるのは……当然、魔界内部では劣勢勢力である魔界の王一派だろうな。


 なるほど、そうなってしまってはマズいから、少しでも味方を増やそうと、ご苦労なことにわざわざ俺のところにもやって来たのだろう。


「……レイラ、どう思う?」


 近くで控えていたレイラが、少し考える素振りを見せながら、口を開く。


「そうですねー……私が以前魔界にいた時に得ていた情報と、大差はないように感じますねー。ここまで対立が深刻化しているとは知りませんでしたが、確かにあの悪魔族であれば、そういうことをしでかすのも十分にあり得る話ですー」


「そうか……」


 しばし、思考に耽る。


 ……俺としては、どっちの派閥が勝とうが、その辺りはぶっちゃけ、どうでもいい。


 どっちの価値観が良くて、どっちが正しいかなど、そんなのはクソ程どうでもいいことだし、戦乱が起こっても勝手にやってどうぞ、という気分なのが正直なところである。


 が――コイツの言っていることを仮に信じるのであれば、悪魔族は俺にとっても、絶対に相容れない敵となる。

 

 ヤツらはレフィを殺戮の道具として使おうとした前科があり、それは俺にとって絶対に許せることではない。

 そうでなくとも、ヤツらが今後、面子を潰された報復のため俺にちょっかいを出して来る可能性が高いとなれば、今後の安寧のためここらで潰してしまうのは大いにアリだ。


 こちらから、積極的にぶっ殺しに行くに値する敵だ。


 ――あくまで、このフードちゃんの言葉を信じるなら、という注釈が付くが。


「我々としては、同じ敵を有する貴方と友好関係を築き、有事の際に少しでも協力していただければ、と考えています。それが、私がここに来た理由です」


「……アンタらの言い分は、わかった。わかったが、まだ信用し切れないってのが正直なところだな。仮に俺がアンタらに協力する場合、こっちにどんなメリットがある?今の言い草だと、特に俺の方にメリットを感じられないんだが?」


「我々が提供出来るものとしては、やはり情報ですね。ヤツらの動きは、逐一監視していますので。……申し訳ありません、ハッキリ言って我々は、勢力としてはあまり大きくない。提供出来るものが、少ないのです」


 キュッと唇を締め、内側の感情を表に滲ませながらフードちゃんは、そう言った。


「……まあ、そうだろうな」


「こちらとしては、その辺りのことも話し合うため、取り急ぎ王に会っていただきたいと考えています。ですので、非常に厚かましいお願いですが、出来ることなら一度、魔界へご足労願いたいのです。本当は、王がこちらから足を運ぶべきところであるのは、重々承知しているのですが、ゴタゴタしている今、流石に国を空ける訳にもいかず……」


 まあ、ここ辺境だもんね。

 来るにしてもかなり時間が掛かるだろうことは想像に難くないし、何より魔物いっぱいで危険だし、そんなところにトップを連れては流石に来れないだろう。


「いち協力者に対して、随分親身にするんだな?」


 一応現在の魔界を治めている王が、わざわざ一人のためにそこまでして会おうってんだからな。


「いえ、我々も、全ての協力者に対しこう言っている訳ではありません。貴方が相手だからこその話です」


「……へぇ?」


「魔王ユキ、貴方の実力の程は伝え聞いています。その身一つで人間の国における悪魔族一派の企てを潰し、そしてこの、覇龍の治める過酷な地である『魔境の森』にて生存出来る実力。さらにはその覇龍と友誼を結び、こうして彼の伝説の存在の支配領域内でダンジョンを構えることが出来ていることも、貴方の実力の内であると言うことが出来るでしょう」


 ……そうやって言われると何か、俺がすごい優秀なヤツみたいに思えて困るな。


 実際のところ、それ、全部成り行きの結果なのだが。

 「覇龍と友誼を結び――」とか言ってるけど、俺がレフィと出会ってしたことって、チョコで餌付けしただけだし。


 ……それにしても、マジでよくこちらのことを知ってやがる。近衛隠密兵の面目躍如といったところか。


「それ程の実力を持つ貴方をこちら側に引き込めるのであれば、王も実際に会って話をするのに吝かではないと考えたのでしょう。恐らく実際に話していただければ、貴方にとっての何らかのメリットを提供していただけるはずです。それだけ、貴方個人に我々は味方になっていただきたいと考えている」


「……なるほど、ね」


 魔界、か……。


「……魔界観光、いいな」


「え?」


「いや、こっちの話だ」


 ……魔界って言うぐらいだし、何か見たことのないヘンなものとかありそうだ。


 ちょっと、いやかなり楽しそうだし、この際皆と一緒に旅行に出掛けるのもいいかもしれない。


 ……いやいやいや、待て。


 今魔界の情勢が不安定だから、こうして俺のところにも協力要請が来たのだ。


 流石にそんな、内紛勃発数秒前!みたいな危ないところに子供達を連れて行けない。なので、エン以外の幼女組はお留守番決定だ。


 他の面々に関しても、子供らを残すのであればレイラとリューも残ってもらう必要がある。

 リューも……うん、いたら助かる、ぐらいには家事が出来るようになってきたしな。


 すると、後はレフィだが……俺としては、彼女は連れて行きたい。

 

 実はずっと、レフィと新婚旅行したいと思ってたんだよね。


 この辺りは相談しないと決められないが、アイツも最近はデレることが多くなってきたし、悪い返事は言わないはずだ。


 ……新婚旅行。良い響きだな。


 ダンジョンの守りに関しては、こういう時のために罠を張ったり新たな配下を召喚したり、ここのところずっと防衛の強化に努めていた訳だしな。

 

 悪魔族のヤツらが襲いに来る可能性もあるが、しかし今のリルであれば、西エリアの最奥の魔物のようなヤツらが出て来ない限り、恐らくほとんどの敵を撃退可能なはず。


 よっぽどヤバいヤツが出て来たらわからないが、悪魔族一派は今魔界の王一派と緊張状態にある。

 そんな実力者を、面子を潰されたとは言え、こんな辺境に送る暇などありはしないだろう。


「……ま、いいや。とりあえず嫁さんと相談してから決めさせてくれ。その後にどうするか決めることにしよう」


「えっ?……ダンジョンの魔王に、嫁がいるのですか?」


「おう、自慢の嫁さんだ。――それより、アンタ、どうする?多分、明日には俺達もどうするか決めてるだろうし、一度帰ってもっかい来るのも面倒だろうから、泊まってくならここ、貸してやるぞ?」


「……お言葉に甘えさせてもらっても、いいでしょうか。実は、ここに来るまでに幾度か魔物に襲われまして……」


 申し訳無さそうな表情で、そう言うフードちゃん。


 あぁ、ここの魔物見境ないもんね。きっと追われに追われて、ようやく俺のダンジョン領域まで辿り着いたのだろう。お疲れ様だ。


 ……いや、魔物は元々、凶暴で見境ないから魔物なんて呼ばれてるんだったな。


「よし、そういうことだ。レイラ、すまんが、客人が泊まるための準備、頼むぜ」


「はい、畏まりましたー」 


「あっ、そ、そんな、も、申し訳ないです、場所だけ貸していただければ――」


「いえ、ユキ様のご指示ですのでー」


 有名人らしいレイラにそんなメイドの仕事をさせるのが申し訳ないのだろう、慌ててそう言うも、我が家の頼れるのほほんほんわかさんに、にこやかに一蹴される。




 ――そうして、その日の話し合いは終了した。


 ……それにしても、アレだな。


 レイラ物知りだし、多分知ってるんじゃないかと、軽い気持ちで「近衛隠密兵って知ってる?」って聞いてみたのだが……。


 よくよく考えてみると、娯楽や資料の溢れた現代ならともかく、ロクに情報源のないこっちの世界において、一般人が『近衛隠密兵』なんて役職のこと、知っているはずがないのでは……。


 ――レイラ、マジで何者なんだ。

 

 また一つ、謎が深まったな……。


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こちらもどうか、よろしくお願いいたします……! 『元勇者はのんびり過ごしたい~地球の路地裏で魔王拾った~』



書籍化してます。イラストがマジで素晴らし過ぎる……。 3rwj1gsn1yx0h0md2kerjmuxbkxz_17kt_eg_le_48te.jpg
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