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チートで怠惰な聖女様のために、私は召喚されたそうです。〜テンプレ大好き女子が異世界転移した場合〜  作者: 櫻月そら
【第1章】異世界ものは大好きですが、フィクションで間に合ってます。
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第95話 騎士団の不祥事

 火竜が先ほどと同じ内容を伝えると、アーヴィンの眉間にも深いしわが寄った。


「脅シタ奴ノ声ハ? 男ダッタカ?」


『わかんない。変な声だった』


「薬で声を変えてたのかもな」


「どこに連れていかれたのか分かる? さっきの倉庫みたいに音とか匂いとか……」


『えっと……、袋に入ったまま、固い床に寝かされてたよ。時々、ピチョン、ピチョンッて水の音がしてた。あとは――、足音と一緒にカシャンカシャンッていう音が響いてたのと、遠くで誰かが話してる声も聞こえてた』


「タブン、地下牢ダナ」


 おそらく、見張りの騎士が歩く音と、彼らの話し声のことだろう。


「ただ、あそこは隠せる場所もないし、見慣れない物があれば警戒するはずなんだが……。誰もお前に気づかなかったのか?」


『たぶん。見えてないみたいだった』


「袋に認識阻害の魔法でもかかってたか? でも、宮廷医は魔力を持ってないしな……。あの人が犯人っていう考え自体が間違ってるのか? いや、でも――」


 アーヴィンは、ひとりごとを呟いたり唸ったりしながら腕を組んだ。


(判断するには、まだ情報が足りない)


 それについてはアーヴィンも分かっているだろうが、焦っているためか視野が狭くなっている。


「やけどしたのは、いつ?」


『わかんない。甘いジュースと、お腹が熱くなる薬を何度か飲まされたのは覚えてる』


(腹痛の原因はそれかな。甘いジュースは薬の苦みをごまかすため? いや、こんなことをする人間がそんな配慮はしないはず)


「薬だけじゃなくて、ジュースも何度も飲まされたの?」


『うん。飲むとくらくらするけど、悲しい気持ちがなくなるの』


(え、それって……)


 アリアが絶句していると、アーヴィンが目を見開いた。


「そのジュースって、これくらいの赤い瓶に入ってたか!?」


 勢いよく立ち上がったアーヴィンが火竜の肩を握り、親指と人差し指で瓶の大きさを示す。


『う、うん。赤かったよ』


 アーヴィンの剣幕に、アリアも火竜も呆然とする。彼の肩にとまっているロードは、急に体を揺らされて少し不機嫌そうだ。


 椅子に座り直したアーヴィンは、テーブルに両肘をついて頭を抱えた。


「甘いジュースな。はぁ、そういうことか……」


「あの、殿下?」


 説明を促されると、アーヴィンは長く息を吐いて顔を上げた。


「昔な、疲労回復に効果があるっていう栄養ドリンクが、騎士の間で流行ったんだ。俺が十四、五歳の時だから三年前くらいか」


 スズが転移してきたのは約一年前。それよりも前の話だ。


「ポーションではないんですよね?」


「魔法で作られたものではないから、栄養ドリンクって呼ばれてたな。見慣れない形の赤い瓶に入ってた」


「『悲しい気持ちがなくなる栄養ドリンク』って、嫌な予感しかしないんですが……」


「あぁ。おそらく、アリア殿が考えてるもので合ってる。軽い酩酊状態になり、多幸感が得られて普段よりも能力が上がる。その時の功績で出世した者もいた」


(つまり、その時に出世した人が、騎士団の中間もしくは上層部にいるかもしれない、と)


 三年前に出世したということは、その後に降格していなければ、現在はさらに上の地位にいる可能性もある。

 宮廷騎士団ともなれば、高位貴族の子息も多く所属しているだろう。

 たしか、厨房に臨時で入ったスタッフは、伯爵家以上からの紹介状を持っていたとマーリンが言っていた。


(また、厄介な)


「もしかして、殿下も飲んでたんですか?」


「毒の反応はなかったから、試しに一本だけな。そのあと、すぐに禁止令を出して、国内にあるドリンクはすべて破棄した。幸い、流行りだしてから、あまり時間が経っていなかったし、著しく健康を害した者は少なかった」


「少なかった――。つまりゼロではない、と。症状が重かった方は、今どちらに?」


 痛いところを突かれたというような表情で、アーヴィンは視線をそらした。


「実家に帰ったり病院で療養してから、全員が社会復帰してる。さすがに王城勤めはできないが、今も国で経過観察してるし、問題行動を取ったという報告もない。ただ――、販売していた城下町の薬屋は国外に逃亡して、今も捕まってない」


 アーヴィンは再び頭を抱えて、うなだれた。


「そうだよ、ちゃんと経過観察してるし、報告も受けてる。なのに、なんでこんな重要なことを忘れてたんだ……?」


「その栄養ドリンクのことを話さなかったということは、アレクたちも忘れてしまってるんでしょうか?」


「それは確認してみないことには何とも。しかし、あいつらも忘れてるとなると、さらに状況が悪くなることは確実だ。当時、宮廷医も魔導師の塔の医師も関与していないと判断されたが、こうなったからには、そこから調べ直す必要がある」


 そう言いながら、ずるずると前傾したアーヴィンは、昼寝をするような姿勢で頬をテーブルに乗せた。


 火竜が短い前脚を必死に伸ばして、アーヴィンの頭をポンポンと撫でる。

 こんな時だが、その様子を見たアリアはくすっと笑ってしまった。

お読みくださり、ありがとうございました。


前回いただいたご感想で、ちょうど200件となりました。いつも本当にありがとうございますm(_ _)m

誤字脱字報告もありがとうございます。


推敲中のストックがありますので、次話もあまり時間を置かず投稿できる予定です。


引き続き、お付き合いいだけましたら幸いです(*´ω`*)

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― 新着の感想 ―
熱いと火竜を抱けない。 聖女パワーや魔力の薄い膜を体表に、空気を挟んで二重三重に張れば大丈夫じゃないですかね? ルフィだってメチャ熱くなった(比喩ではなくガチで)元四皇・百獣のカイドウ相手に似たよう…
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