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チートで怠惰な聖女様のために、私は召喚されたそうです。〜テンプレ大好き女子が異世界転移した場合〜  作者: 櫻月そら
【第1章】異世界ものは大好きですが、フィクションで間に合ってます。
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第91話 ロードの食堂 5

 マーリンに案内された部屋は、前室よりも少し小さな空間だった。手入れがされていない部屋独特の埃っぽい匂いに、薬草やアルコールの匂いが混ざっている。


(長時間いるのは、ちょっと辛いかも)

 

 アーヴィンは火を使わない魔法のカンテラ、マーリンは手のひらに球体の光を作って、辺りを照らした。


「ここは……、実験室も兼ねてたのか?」


 試験管にフラスコ、注射器や遠心分離機など科学の研究に用いる道具が乱雑に置かれている。

 床に置かれた大量の箱の中身は、おそらく薬草や薬品の類だろう。

 アリアは、軟禁中に読み漁った医学書の内容を思い返した。


(たしか、この国でも科学的な治療方法もゼロじゃない、って医学書に書いてたはず)


「おそらく、私の父や、ニールたちの父親が使っていた部屋なのでしょうね。あの二人は片付けが下手でしたから。本人たちは、どこに何があるのか把握しているらしく、勝手に触ると怒るんですよ」


「マーリン殿の部屋も似たようなものだろうが」 

 

 アーヴィンがそう指摘すると、彼は口角を上げながら目をそらした。


「それにしても、ここから探すのは骨が折れるな」


 アーヴィンが腰に手を置きながら、辺りを見渡して軽くため息をつく。


「あのー、まずは、あの光ってる箱から開けてみませんか?」

 

 アリアがおすおずと二人の間に入って声をかけると、アーヴィンとマーリンは同時に首を傾げた。


「光ってる? 何も見えないが……。ライトの光が反射してるんじゃないか?」


「いえ、違いますよ。あの、オレンジ色に光ってる木箱です」


 アリアがひとつの木箱を指で示したが、周囲の反応が薄い。


「……本当に見えないんですか?」


 アリアの問いかけに対して、全員が首を振った。


「じゃあ、とりあえず、私が開けてみますね。あまり時間もありませんし」


「ま、待て! それなら俺が開ける。危険な物だったら、どうするんだ」


(出た、過保護)

 

 心配してくれるのは嬉しいが、あれも駄目、これも駄目と言われるのは、やはり息苦しい。


「大丈夫ですよ、たぶん」


「たぶんって……。保証はないってことだろ」


「いえ、何となくですけど、大丈夫だと思うんです」


「何となく、か……」

 

 やはりアーヴィンは、巫女である祖母や母がよく口にする「何となく」という言葉を特別に感じているらしい。


「わかった。だが、俺も隣にいるからな」


「ありがとうございます」


 そして、二人はそろりと木箱に近づくと、ゆっくり慎重に蓋を開けた。すると、目がくらむほどにまぶしいオレンジ色の光が部屋中に放射される。さすがにこの強烈な光は、全員が感じ取れたらしい。


『ふあぁ。苦しかった……。あなたがアリア? 助けてくれて、ありがとー』


 そう言うやいなや、オレンジより少しだけ赤みがかった鱗を持つ、サラマンダーの子どもがアリアに抱きついてきた。

 

 体つきは人間の生後半年ほどの大きさ。重さは米袋ひとつ分くらいで、わりとずっしりと負荷がかかる。飛びつかれたため、なおさら衝撃があった。

 驚きと重さで転びそうになったアリアを、サラマンダーごとアーヴィンが抱き留める。そして、アリアの腕に抱かれた子どもを凝視し、ぽつりとつぶやいた。


「これは……、火蜥蜴(ひとかげ)というよりも火竜(かりゅう)だな。翼が大きい」


 それを聞いたマーリンも息をのんだ。


「…………まさか、ドラゴンとは。ずいぶんと大物が来てしまいましたね。しかも、オスですか」


 火蜥蜴も火竜もサラマンダーの別称とされる説もあるが、この世界ではトカゲと(ドラゴン)では格が違うらしい。

 特にオスは力が強く、攻撃性も高い。


 しかし、人間たちの焦りをよそに、火竜(サラマンダー)は猫のようにアリアの胸にすり寄っている。泣き疲れた上に安心したのか、うとうとと今にも眠ってしまいそうだ。


「今のところ、攻撃してくる様子はありませんが、今後のために、城の内側の結界も強化しておいたほうが良さそうですね」


「頼む」


 承知しました、と応えたマーリンが両手を天井に向けると、結界の膜が張られていく。

 これで、城の中で火を吹いたり暴れたとしても、被害を最小限に抑えることができるらしい。


「さて、無事に見つかりはしたが、これからどうするかな……。保護することもできるが、やはり、親元に返すのが最善か?」


 しかし、現状では城の外も荒れている。

 ファイの城周辺では、まだ兵士とサラマンダーたちが争っているかもしれない。


 だからといって、ブルームの城内のほうが安全というわけでもない。いまだに未解決のことが多く、信用できる人間も少ないため混沌としている。


「お前はどうしたい?」


 アーヴィンが腰を折って、優しく問いかけると、火竜も彼に視線を向けて口を開いた。

お読みくださり、ありがとうございました。

やっと、サラマンダー(火竜)のチビちゃんを登場させることができました〜!


12月〜1月にかけて、2度目のコロナや副鼻腔炎で苦しんでいましたが、少し話を進めることができました。


また、ゆっくりとですが更新していきますので、お付き合いいただけましたら幸いです(ꈍᴗꈍ)

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― 新着の感想 ―
おかえりなさい( ´∀` ) やはり聖女などの特殊な人間は見ている世界が違うんですね……この辺りの事実をさ、ちゃんと曲解せずにありのままを後世に伝えないとね。 でないと……私が最近読んだ小説のように…
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