第82話 アリアとロードの作戦会議
※2025年2月17日
改稿いたしました。
「オヒメサマガ、イチバン困ッテルコトハ何? 『イイコ、イイコ』シテクレタ、オ礼ニ、オ手伝イシタイ」
「うーん、困ってることかぁ……」
日本に帰りたい、という答えは、ロードの質問に対して適切ではない気がする。
「……毒の判別、かな。犯人をひとり捕まえても、それで解決とは限らないから。複数の犯行だったり、最悪、井戸とか湧き水に毒を入れられたら、この城は壊滅すると思う。政を行う人間が一時でもいなくなれば、たぶん国としても機能しなくなる」
「フーン。ソレガ、オヒメサマノ、困ッテルコト? アーヴィンガ、困ッテル……、ジャナクテ?」
「もちろん、殿下や王家の方々も困ってるけど、私もどうにかしたいって思ってるよ?」
「ソッカー。オヒメサマダモンネ」
「う、うん?」
ロードが言うところの「お姫様」という単語が何を指しているのか、いまいち掴めない。
(お姫様、か。王族は責任感が強い……、とか?)
「殿下たちが使う魔法では、化学物質の毒は分かっても、自然界にある毒は正しく判別できないの。私は、そこを何とかクリアしたい。でも、どうしたら良いのか分からなくて……」
「オレ、全部ノ毒ワカルヨ?」
「え、ほんとに!?」
「ウン。モトモト、動物ダシ。今ハ、魔獣ダシ。人間ヨリモ、ズット感覚ガ鋭イカラ」
「あぁ、そっか。森の中で食べて良いものと悪いものを見分けられないと、生きていけないもんね」
「ソウイウコト。人間ニハ、ワカラナイヨウナ匂イ、色、味デワカル。ソレト、オレハ魔獣ダカラ、チョットクライナラ、毒ヲ食ベテモ、ダイジョーブ」
「殿下もマーリン様もそうだけど、自分の身体で試すのは、あんまり良い方法ではないけどね……。ロードが毒を見抜けること、誰か知ってる?」
「タブン、知ラナイ。マーリンニモ、話シタコトナイカラ」
「ロードが力になってくれるなら心強いけど。でも、殿下たちにどう説明したら良いのか……。しかも、一皿一皿を見て歩くのは時間がかかるし……」
「ゴハン食ベテル人間ヲ、オッキイ所ニ、集メテクレタラ、デキルヨ」
そう言ってロードは羽ばたくと、アリアの部屋の中を旋回してみせた。
「飛びながら見て、分かるの?」
「ワカルヨー。ワカリニクイ料理デモ、ヒトクチ食ベレバ、ワカル」
「ひとくちかぁ……」
(鷹がひとくち食べた料理を、食べられる人ばっかりだと良いけど……。あ、毒見用の小皿に分けたら大丈夫かな?)
「試してみたいけど、新しい環境設備が必要だね。そのためにはロードが毒見できることを、やっぱり殿下に話さないと……」
「オレガ伝エテモ、イイヨ?」
小ぶりなシャンデリアに止まったロードを見上げながら、アリアは戸惑った。
「でも……、殿下と話したことないんでしょ?」
「コノ際ダカラ、話セルコトモ言ウ。タマニ、話シカケソウニナッテ、焦ルコトモアルシ。年貢ノ納メドキ」
「年貢の納め時……。よくそんな言葉知ってるね? 私やスズさんがいた国の言葉だよ、それ」
「ダカラ、言ッタデショー? 懐カシイッテ」
(ロードは日本を知ってるってこと? それとも、他に日本人と話したことがあるの? でも、懐かしいのは血の匂いで、DNAってどういうことなの……。チエさんは私の血縁者じゃないし、スズさんだって……)
「ロードは、スズさんと話したことないんだよね? でも、会ったことくらいはあるでしょ?」
「話シタコトモ、会ッタコトモナイヨー。遠クカラ、チラット見タコトハ、アルケド」
「え、スズさんは一年もこの世界にいるのに?」
「ウン」
「そうなんだ、意外。話さなくても、可愛がってもらえそうなのに」
「オレ、人見知リダカラ……」
「そっかぁ」
人見知りなのに、ほぼ初対面のアリアの部屋でずいぶん寛ろいでるなぁ、とは思うが、ロードの基準が色々とあるのだろう。
そしてアリアは、もうひとつ大事なことを忘れていた。
「ロード、ごめん。私、うっかりしてた。外に漏れちゃいけないような大事な話は、この部屋でしたらダメなんだった」
「ダイジョウブダヨー。アノネー。自分ヨリモ、魔力ガ強イ者ガイル部屋ハ、覗ケナインダヨー」
「そうなの?」
「ウン。魔獣二ナッタオレヨリ、魔力ガ強イ、巫女モ魔導師モ、イナイカラ。……マーリンハ、例外ネ」
「あの人は規格外だもんね」
(規格外の魔導師と、魔力が強くて話せる鷹。もしかしたら、問題を解決するキーパーソンになるのかも)
アリアはロードに一縷の願いをかけた。
「ロード、私は何をすれば良い?」
「オヒメサマハ、オヒメサマノママデ、イテクレタラ、ソレデ良いノ」
「そんな……」
「イイノッ!」
「は、はいっ!」
(メリッサ様にも、同じようなこと言われたんだよね……)
『一番大事なことは貴女が貴女らしく、変わらずにいること』
アリアはこの言葉が示す意味を、ずっと考え続けている――。
お読みくださり、ありがとうございました。
謎はまだまだありますが、毒物事件は解決に向けて動き始めました。
次話もどうぞよろしくお願いいたします。




