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チートで怠惰な聖女様のために、私は召喚されたそうです。〜テンプレ大好き女子が異世界転移した場合〜  作者: 櫻月そら
【第1章】異世界ものは大好きですが、フィクションで間に合ってます。
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第73話 ひとくち 5


 アリアとアーヴィン、料理長の三人で食材をチェックした結果、厨房では水仙の球根は見つからなかった。


 しかし、食料庫を調べると、約三分の一が水仙の球根にすり替えられていたことが判明した。

 

 一つ、二つの混入なら違和感を感じるだろうが、三分の一の量となると、そのような形の出来(でき)だと思ってしまうかもしれない。サイズも少し小さな玉ねぎと変らなかった。


 しかし、くし切りなどにすれば、さすがに料理長や副料理長、ベテランの料理人は玉ねぎではないと気づくだろう。

 そのため、みじん切りや薄切り、ペースト状にしたものを、本物の玉ねぎの中に混ぜたのではないかと推測された。オニオンスープも、そのひとつだろうと。


 食料庫の中身をすり替えられた時期は分からない。

 仕入れた際のチェックでは、全て玉ねぎだったそうだ。そして、食料庫から運んで洗い、皮を剥いたりする下準備は見習いの仕事らしい。

 それらの行程の中での犯行だったと考えるのが自然だろう。


 わざわざ食料庫にある玉ねぎもすり替えたのは、厨房内でポケットなどから球根を出せば、誰かに見つかる可能性を危惧したのではないか、という考えに至った。


 捕らえたメイドと見習いの料理人が関与していることは、ほぼ間違いないだろうが、副料理長の自作自演に加担したという可能性も視野に入れなければいけない。

 しかし、それはないとアリアたちは信じたかった。


 そして、これだけの量の球根が混入している状況で、被害者が約十人で済んだことは不幸中の幸いだろう。


 しかし、体調不良を引き起こす原因は食中毒以外にもある。


「あの、料理長。いくつかお伺いしたいのですが」


 アリアの検分の手際の良さと、食料庫の実態にあ然としていた料理長がピクリと反応した。


「何でしょうか?」


「この混乱した状況の中で、新しい料理人、しかも即戦力ではない見習いを雇ったのはなぜですか?」


「それは……、元々いた見習いの少年が風邪をこじらせて、もう三週間以上寝たきりでして。どうしても人手が足らず、伯爵家からの紹介ということもあり、雇うことになりました。幼い頃から宮廷料理人を目指していたらしく、まだ十五歳のわりには作業も早く助かっていたのですが、こんなことになるなんて……」


「まだ子どもだったんですね……」


「はい。年齢で甘く見て、油断していた部分もありました」


「そうですか……。事情は分かりました。では次に、倒れた方たちの既往歴や服用していた薬。それから、飲み物を含めて、口にしたメニューは分かりますか?」


「お召し上がりになったものは、全てこちらで把握しております。既往歴やお薬は、ご本人か宮廷医にお尋ねになったほうが確実かと……」


「そうですね……。では、お名前と身分、召し上がった物のリストをいただけますか?」


「承知いたしました。しかし、それらが何か関係あるのですか?」


「私たちの世界では、服用する薬の量や、飲み合わせに気をつけているんです。治療のための薬でも間違った飲み方をすると最悪の場合、命を落とすこともあります。そのため、『用法、容量を守って正しく使いましょう」という言葉が広く知られています」


「なるほど……」


「特にアルコールと、グレープフルーツには注意が必要ですね」


「グレープフルーツを召し上がる方は少ないですが、アルコールは騎士も貴族の方も、体調が優れない時でも召し上がりますね。お止めすれば、機嫌を損ねる方もいらっしゃいますし……」


「まぁ、そのあたりはご本人の裁量次第で。危険だと知っていても飲酒するのであれば、何か起こっても自業自得です。注意しても聞き入れないなら、料理長がお気になさる必要はありません。ただ……、飲み合わせに関する注意事項がこの国にはないのなら、それは見直したほうが良いかと」


 止められても飲酒する者の体調不良は本人の自業自得だ、とピシャリと言い切ったアリアに料理長は少し驚いた顔をした。


 アーヴィンはアリアの性格をおおよそ理解し始めているため特に驚くことはないが、料理長の顔色を見て苦笑する。


「料理長、この件に関しては、我が国の文化や知識では対応が追いつかない。私はアリア殿が動きやすいように補佐に付く。事態の収束のために、あなたにも手伝ってもらいたいのだが」


「もちろんでございます。 アリア様、殿下。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」


「早く解決して、皆さんが安心して食事ができるようにお手伝いしますね。私も料理長のお料理を楽しみにしているひとりですから」


「ありがとうございます……」


 アリアの柔らかな声音と言葉に、料理長は肩の力を抜いた。




 今後の話を一通りした後、アリアとアーヴィン、リラとアレクの四人は、アリアの私室に戻った。


「はぁ……」


 椅子に腰掛けると、アリアの口から思わず吐息が漏れる。


「アリア殿、疲れただろ? 付き合わせて、すまなかった」


「いえ、それについては構いません。強制ではなく、自分から関わりたいと思ったことですから。……たしかに、疲れは出ますが」


(これから何があるか分からないから、もう少し体力付けないと。最近、引きこもってたし……。この部屋の中でできるトレーニングメニュー考えようかな)


 魔導師の塔に向かうために、庭園までダッシュしただけで筋肉痛になり、少しショックを受けていた。


「じゃあ、今日はもう遅いし、この後はゆっくり休んでくれ」


 そう言って背を向けたアーヴィンの腕を、アリアはギュッと掴んで振り向かせた。


「殿下、今夜はまだ帰しませんよ?」


 アリアの挑むような瞳と勝気な笑顔に、アーヴィンは嫌な予感がした。

お読みくださり、ありがとうございました。


事件の裏側……まではいきませんが、少しずつ明らかになってきました。


さて、アーヴィンがアリアに掴まりました(笑)


次話も、どうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ああー。飲み合わせかぁ。 確かにそれもあるかぁ……そして今夜は帰しませんよ!?(;゜Д゜)
[良い点] 飲み合わせ! 重症化するのは、そういう理由もあるね。 しかし、そんなこと知らなかったろうし、不特定多数に水仙の球根を食べさせて、一体どんな得があったんだろ。 子どもを使う意味は、油断さ…
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