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チートで怠惰な聖女様のために、私は召喚されたそうです。〜テンプレ大好き女子が異世界転移した場合〜  作者: 櫻月そら
【第1章】異世界ものは大好きですが、フィクションで間に合ってます。
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第59話 魔導師の塔を探しに 1


 アーヴィンがスズの部屋に入っていく瞬間を見かけてから三日が経った。

 

 私室に戻ってから、メリッサにもらったフィナンシェを少しずつ食べていると、不思議と気持ちが落ち着いていった。


『甘いもので少しは元気になってくださると良いんだけど』


 メリッサの言葉を思い返し、今の状況のことを言っていたのだろうか、と改めて巫女の力を思い知る。


(メリッサ様は、巫女の中でも特別に力が強いんだっけ……)


 他の巫女は、ここまでのことはできないのかもしれない。


 あの日以降、アーヴィンの顔は見ていない。

まだ謝罪できていないことについてはすっきりしないが、不思議と寂しいと思う感情は湧かなかった。

 連日、臨時の会議が続いていると、アレクから報告を受けているからだろうか。


 たしかに、ここのところ部屋の外が騒がしい。

 聖女が二人、そして何より、王太子の執務室と寝所を含めた私室がある棟のため、出入りできる使用人は限られている。

 信用でき、かつ仕事が早く的確な者たちが選ばれている。そのため、大声で話したり、不快な音を立てるようなことは決してない。

 こんなことは初めてだ。


 城の中で、何かが起きているに違いない。

「連日の臨時会議」というのも、アリアに気を遣った方便ではなく、おそらく本当のことだろう。



 メリッサから得たヒントをもとにして、早く行動に移さなくては、とアリアは少し焦っていた。


 アーヴィンとスズの恋を応援しようとは決めたが、アーヴィンを助けたいという気持ちは消えていない。


(黒魔術について、早く答えを見つけないと……)




「あ、アレクが来たみたいね」


 ドアを見つめていたアリアが突然立ち上がった。


「え、まさか……」


 アリアがドアを開けると、今まさにノックをしようと手を上げていたアレクが固まった。


「アレク、いらっしゃい。待ってたのよ」


 今の流れから、やはりアリアは、防音室の外の音や気配を感じ取ることができるのだとリラは確信した。

 

 彼女の不思議な力についてはアレクも、アーヴィンとリラから聞かされていた。

 その話を聞いた時は半信半疑だったアレクが、パッとリラの顔を見ると、それに応えるようにリラは小さく頷いた。


 二人の様子に首を傾げたアリアに気づき、アレクは何事もなかったかのように尋ねる。


「アリア様、私に何かご用でしたか?」


「図書室に行きたいの。アレクが一緒なら大丈夫かな?」


「アリア様、それは……」


 今すぐにでも行きたい、という様子のアリアにリラが制止の声をかけた。


「まだ、だめ? まだ準備が整っていない? それとも……、お城の中で何かがあった?」


 矢継ぎ早に質問をするアリアの瞳に見つめられると、考えを見透かされそうで、アレクは思わず視線を外した。


「で、殿下に確認して参りますね」


「それはだめ。メリッサ様とのお約束のための調べ物だから、殿下には知られたくないの」


「メリッサ様との……?」


 メリッサの名前を出すと、さすがに無下には断れないようだ。アレクの中で、王妃と王太子の考えを天秤にかけているのだろう。


「…………図書室に滞在する時間は、どのくらい必要でしょうか?」


「すぐに済むわ。城内の見取り図が見たいだけだから」


「見取り図、ですか?」


「うん。何かあった時のためにね。今、お城の中が忙しないみたいだから」


 アレクの眉がぴくりと動いた。


「分かりました。そのかわり、滞在時間は15分までです。……今すぐに向かわれますか?」


「十分よ。今すぐにお願いします」


「承知いたしました」


 アレクの答えを聞いたアリアは、にこりと笑うと小さなカバンにアルフォンスの懐中時計、そして、スマートフォンをしまった。

 そして、図書室の鍵と隠し部屋の鍵は首から下げて、服の中に隠した。

 念のため、隠し部屋の鍵部分は、小さな桜色の巾着袋に入れている。

 何も知らなければ、チェーンの先にシルク素材の巾着袋が付いているだけのように見える。





「こんな時に部屋の外に出て、大丈夫なの?」


 リラがアレクの袖を引っ張った。


「ほんの少しの時間なら大丈夫だろ。メリッサ様とのお約束と聞いてしまっては簡単には断れないし……。それに本当に何かあった時のために、城内の通路なんかを知っておいたほうが良いだろ」


「まぁ、それはたしかにそうだけど……」


「殿下の……、この前のことで何か変わったご様子は?」


「何もないわよ。それが、かえって心配になるくらいに」


「おっしゃらないだけで、何かを抱えているのだとしたら、この外出で少しは気が晴れると良いな」


「そうね……」



「お待たせ。行こっか」


 アリアの晴れやかな顔を見ると、二人は何とも言えない気分になった。

お読みくださり、ありがとうございました。


新しいサブタイトルになり、またアリアが動き出しました。

そして、なぜかアレクと話す時はお嬢様の頃の口調が出てしまうアリア。

リラには甘えつつ、頭が上がらない感じなんですけどね……。


「魔導師の塔を探しに 2」に続きます。


次話もどうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ううむ、きな臭く分からないことだらけで……本当にハピエンに行けるのかどうかも心配に(ぇ
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