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チートで怠惰な聖女様のために、私は召喚されたそうです。〜テンプレ大好き女子が異世界転移した場合〜  作者: 櫻月そら
【第1章】異世界ものは大好きですが、フィクションで間に合ってます。
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第56話 すれ違い 1


「アリア様。また、いつでもいらしてね? 私のことは母だと思って、いくらでも頼ってくれたら嬉しいわ。本当のお母様には……、とても敵わないでしょうけど……。でも、こちらの世界の母とでも思っていただけたら……」


(両親のこともお見通しか……)


「ありがとうございます。頼りにさせていただきますので、こちらこそよろしくお願いいたします」


 アリアが両手を太ももに添えて礼をすると、メリッサの顔が、ぱぁっと明るくなった。


 この世界で生きていくためには、メリッサの力や経験値の高さが必要だと実感した。


 未来を予知できたり、人の心がわかるから、というわけではない。もっと深い、言葉にはできない何かをアリアは感じていた。


 メリッサに見送られ、帰り道は庭園の花を愛でながらゆっくりと歩いた。なかなか進まないアリアの歩調に嫌な顔ひとつせず、リラとアレクも一緒に歩いてくれる。


(濃い時間だったなぁ……)


 さぁっ、と頬を撫でるような風が吹き、アリアの目の前に淡いピンク色の花びらが舞い降りた。


(……桜? 違う、アーモンドの花か)


 桜は春にしか咲かないが、この国のアーモンドの花は常に咲いているとリラが言っていた。


(似てるけど、やっぱり桜とはちょっと違うかも……)


 手のひらの上に乗せた花びらを眺めていると、少し高めの女性の声が聞こえてきた。


「――――スズさん?」


 アーモンドの樹は、温室から少し離れた場所にある。それよりもずっと奥まで進むと、アルフォンス夫妻が住まう離宮があらわれる。


 遠目ではあるが、樹の下でスズがはしゃぎながら花びらを掴もうとしている様子が見える。

 そして、スズの隣にはアーヴィンの姿が……。

 スズ付きの侍女の姿は見当たらず、どうやら二人きりらしい。


 アーヴィンが空気の渦のようなものを手で操ると、ふわりと花びらが舞い上がる。


(あぁ。殿下が、魔法で風を……)


 アリアたちがいる場所では、会話までは聞こえない。

 しかし、楽しげな二人の雰囲気は伝わってくる。


 アリアがぼんやりと二人を眺めていると、スズの黒髪に付いた花びらをアーヴィンが笑いながら払った。


(……スズさん、お元気そうで良かった。あんなに優しく笑う殿下も初めて見たかも……。そっか、別件ってスズさんのことだったんだ)


「リラ、アレク、帰ろ? 邪魔しちゃ悪いし」


 アーヴィンとスズに気づかれる前に、この場所から離れなければいけないと強く思った。

 今の自分はひどい顔をしているに違いないと、アリアは二人に背を向けて歩き出す。

 そして何よりもアリア自身が、二人の様子をこれ以上見ていたくはなかった。


「アリア様、お待ちください! アーヴィ……、殿下はそんなつもりでは!」


 アレクが焦った声でアリアを引き止めようとする。


「えー? そんなつもりって、どんなつもり? 何でアレクがそんなに焦ってるの」


 アリアはクスクスと笑いながらも歩調を緩めない。むしろ、どんどん早くなっていく。


「王太子と聖女の仲が良いことは、国にとっても良いことでしょ?」


「たしかに、それはそうなんですが……」


「でしょ? だから、私たちは邪魔しないように早く帰ろ」


「しかし……っ!」


 「殿下が想っている女性(ひと)はアリア様です!」と叫ぶことができたら、どんなに楽だろうかとアレクは奥歯を噛みしめる。


 その時、まるでアリアを押し留めるかのような強い風が吹いた。アリアは立ち止まり、慌ててワンピースの裾を押さえる。

 振り返ると、アーヴィンが焦ったような表情でアリアに向かって手を伸ばしている。今の強風は、明らかにアーヴィンが発動させた風魔法だ。

 その隣で、スズもオロオロとしている。


(……どういうつもりよ、何がしたいの?)


 アリアの苛立ちは、スズではなくアーヴィンに向けられている。


「アリ……ッ!」


 アーヴィンが自分の名前を呼ぼうとしていることに気づいたアリアは、その声を振り切るように走り出してしまった。


 その一部始終を見ていたリラは呆れたような視線をアーヴィンに送り、アレクは残念なものを見るような目をした。

 そして、私室の方へと走っていくアリアを二人は急いで追いかけた。






「…………殿下、ごめん。まずいことになった気がする」


「スズ殿も、そう思うか?」


「っていうか、そうとしか思えない」


「はあぁぁ……」


 アーヴィンは、思わずその場にしゃがみ込んだ。


「ドンマイ」


 アーヴィンが上目遣いでスズを睨む。


「冗談だよ。……この状況は私も悪かったから、できるだけフォローしてみるね」


「頼む…………」


「あんた、そういうとこよ」


 アーヴィンが「何が?」と尋ねると、「ハッ……」とスズが呆れながら笑った。

お読みくださり、ありがとうございました。


本格的に両片思いが始まってしまいました。

とりあえず、アーヴィン頑張れ!


スズとアーヴィンが二人でいる時は、だいたい姉と弟のような関係です。

でも、今のアリアには、そうは見えない……。



そして、ヒーローとヒロインがこんな状態の時に何ですが……。


おかげ様で、PVが2万を超えました〜


今後も頑張りたいと思います!


「すれ違い 2」もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] うはー(;'∀') こいつぁねぇ……大ダメージやん(;'∀') いったいどうなっちゃうの(;'∀')
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