第48話 宮廷魔導師の帰還 登場人物プロフィール(身長)
隠し部屋に入った日から、四日が経った。
あの日以降はアーヴィンとの約束通り、私室から一歩も出ていない。
そして予想に違わず、おはようからおやすみまでリラがすべて世話をしてくれるため、衣食住にはまったく困っていない。
「また、近いうちに顔を見に来る」と言ったアーヴィンは、今のところ一度も訪ねてこないが――。
(べ、別に待ってるとかじゃないし! ほんの少し退屈なだけで……)
油断すると、彼の色々な言動を思い出して顔が熱くなってしまう。とっさに手を扇子代わりにして顔を冷ました。
この動作を何回繰り返しているだろうか。アリアはすでに数えきれなくなっていた。
(はぁ、困った……)
次にアーヴィンに会った時にどんな顔をすれば良いのかと悩んでいると、外開きの窓がバンッと大きく開き、室内に風が吹いた。
(あ、涼しい……、じゃない!)
アリアは、窓枠から優雅に降り立った男を睨んだ。
「マーリン樣! あなたは本当にドアを使えない方なんですね」
嫌味を込めて言ったのだが、彼にはまったく響かないらしい。顔色ひとつとして変わる様子がない。
「やぁ、アリア様! お久しぶりですね! 親友の私がいなくて、さぞ寂しい思いをされたことでしょう」
「いえ、特に寂しくは……」
「そうでしょう、そうでしょう! 気を遣って気持ちを隠すだなんて、私の親友はなんて健気なんだ!」
(そうだった……。この人に、まともな会話を期待しちゃダメだ)
あいにく、今はリラが席を外している。
自力で早々にお帰りいただこうと、アリアは面倒くさい教授や先輩を相手にする時の笑顔を作った。
「もう少し早く帰れる予定だったのですが、いつもよりも魔獣の討伐に手間取ってしまって……。そんなふうに無理に笑わせてしまうとは、私は本当に罪深い男ですね。『会えなくて寂しかった』と詰ってくださって構いませんよ?」
(違うっ!!)
アリアがうなだれながら、拳でテーブルを叩くとティーセットがカチャンッと音を立てた。
「どうされました? ご気分でも?」
近づいてきたマーリンがアリアの手に触れようとした瞬間、バチッ! と強い静電気のような音を立てて火花が散った。
「おや」
アリアには痛みもケガもないが、マーリンの手はまだ火花に包まれ、少しやけどをしているようにも見える。
しかし彼は、そんな状態の自分の手を見て嬉しそうにニヤァと笑った。
(へ、変態っ……!)
しかし、目の前でケガをされては多少は気にかかる。
「痛くはないんですか?」
「あぁ、これくらいなら問題ありませんよ。自分で傷も治せますし」
マーリンの全身を眺めると、討伐に手間取ったというわりには、肌どころかローブにさえ目立つ傷はない。
(自分で癒やしたんだ……)
マーリンはローソクの火を消すように、自分の両手に息を吹きかけた。
すると、線香花火が風に流されるようにして火花は消え、やけどは傷痕も残らずに治った。
「すごい、ですね」
「いえいえ、これくらい簡単ですよ。アリア樣は魔法にご興味が?」
「……少し」
「そうですか。私でよろしければ、いつでも相談に乗りますよ」
「ありがとうございます」
(あれ? わりと普通に話せてる)
「ふふ、それにしても。ふふふふふ……」
「な、何ですか!?」
「いえ、失礼。我が国の王太子殿下はずいぶんと過保護だな、と思いまして。それに……ずいぶんと腕を上げられたようだ」
マーリンは自分の手を見ながら愉快そうに笑った。
しかし、その表情にはどこか優しいものも混じっている。
(「悪い人ではない」……ね。)
アーヴィンやアレクが彼をそう評価する部分は、こういうところなのだろうか。
(……ん? 過保護?)
「さて、久しぶりにアリア様の反応も堪能させていただきましたし、このあたりでお暇いたします」
右手をスッと上げたマーリンを見て、嫌な予感がした。
「ちょっ! 待っ! せめて窓から……!」
アリアの制止も虚しく、図書室の時と同じように、つむじ風を起こしたマーリンは一瞬で姿を消した。
布や紙類が室内を舞い、床やベッドに広がる。
ティーカップは風圧で倒れ、少量ではあるが紅茶がテーブルに溢れていた。
「ほんっっとに質が悪い!!」
アリアは怒りをあらわにしながらも、リラの負担を減らすべく、散らかった室内を淡々と片付けはじめた。
お読みくださり、ありがとうございました。
元々は閑話のつもりで用意していた回ですが、本筋の要素を足して加筆修正しました。
マーリンは面倒くさい人ですが、話のテンポを軽くするにはもってこいのキャラクターです。
次話からは、また本筋の話が進み出します。
◎ちょこっと登場人物プロフィール(身長)
身体的な接触が増えてきたので、情報があるとイメージしていただきやすいかな、と思いまして。
アリア 165cm(ヒール低め、走れる靴が好み)
リラ 168cm(TPOに合わせて何でも履きこなす)
スズ 160cm(ヒール5cm以上の靴が好み。7cmピンヒールも余裕)
アーヴィン 189cm
アレク 189cm
先王アルフォンス 193cm
魔導師マーリン 180cm
現国王リカード 185cm
先王アルフォンスが一番大きいのです。
体格も精神的な器も。そして知識量も膨大。
この人に追いつく、追い抜こうと思うと、アーヴィンは相当な努力が必要だと思います(^_^;)
女性陣はヒールの高さによって見た目が変わるため、スズとリラの背がほぼ一緒の日もあるようです。
ちなみに、私の身長は162cm
身近にいる男性が178cm
それを基準にして、異世界ならこれくらいかな?と決めました。
男性陣、高すぎる……ってことはないですよね?(汗)
日本人でも、プロのスポーツ選手は2メートル近くあったりしますし……。




