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ティータイム

9月に『勿論、慰謝料請求いたします!3』が発売されます!

色々なことがあったラオファン国での旅行は無事に終わりを迎えようとしていた。

誘拐されていた獣人達もすぐに解放され、無事に獣人の国に送り返されたことも確認できて一安心である。

ラオファン国王はだいぶ怯えていて、私達を丁重にもてなしてくれた。

ラオファン国の流行りも自分の目で見て確認することができた。

連日、ムーラン様がお茶に誘ってくれたり街を案内してくれたことも大きい。

今日はシュナ様とミーヤさんは街に買物に行き、私と殿下はムーラン様とジュフア様に誘われてお茶会をすることにした。


「ユリアス様、やっぱりお兄様と婚約してくださいませんか? ユリアス様が我が国にいて下さったら毎日楽しいのに」


優雅な昼下がりのティータイムにムーラン様が不満そうにそうこぼした。


「そう言ってもらえると凄く嬉しいのですが、私も自国に店を構える身ですのでそろそろ戻らなくては」

「残念ですわ! お兄様が不甲斐ないばかりにユリアス様がお帰りになってしまいますわ!」


ムーラン様に突然話を振られ、ムーラン様の隣に座っていたジュフア様が苦笑いを浮かべた。


「俺だって、ユリアス嬢が帰ってしまうなんて考えたくない」


私は静かにジュフア様お手製のお菓子を口に運んだ。

いつ食べてもジュフア様のお菓子はクオリティが高い。


「ユリアスは俺の婚約者だと言ってるだろ」


ジュフア様お手製の団子を食べていた殿下が不満そうにそう言った。


「ルドはユリアス嬢を大事にしないから早く婚約破棄したらどうなんだ?」

「しないぞ」


婚約破棄しないという言葉に私がどれだけ嬉しく思っているか、殿下は知らないだろう。


「早く帰らないとローランドに変な疑いをかけられて殺されそうだからな」

「ローランドはそんなことしないわ」

ムーラン様は少々お兄様に夢を見過ぎだ。

「ムーランは本当のローランドを知らないんだ。知ったらきっとフラれて良かったと思うに決まっている」


殿下が遠くを見つめながら団子を口に頬張った。

殿下は本当に団子が好きなのだ。

こんなに殿下が夢中になる団子を作れるジュフア様に少なからず嫉妬心が浮かぶ。

嫉妬心などと思っている時点でもうかなり殿下のことが好きじゃないか。

私はお茶を飲んでからフーっと息を吐いた。

そんな私を殿下が不思議そうに見つめた。


「流石のユリアスも疲れたか?」


そんな風に聞いて笑う殿下に私は笑顔を向けた。


「いえ、疲れてはいません。有意義な時間を過ごせたと思っています。ただ……」


先を濁す私に殿下が首を傾げた。


「ただ、なんだ?」


しばらく言うのを躊躇った後、私は深くため息を吐いてから言った。


「ただ、少なからず自分の気持ちを認識したといいましょうか?」

「気持ち?」


殿下が更に私の顔を覗き込む。

私は殿下の耳を両手で覆うと小さく囁いた。


「ルド様が……好き」


言い終わって殿下から離れると殿下は耳まで真っ赤に染まっていた。


「そ、それは……こんな人前で、卑怯だろ!」


卑怯だと言われても催促したのはそちらだ。


「すみません。お茶のおかわりをお願いします」


そのまま何事もなかったようにお茶のおかわりを催促した。


「ルド、何を言われたんだ?」

「……秘密だ!」


殿下は赤い顔でそう言い放った。

ジュフア様は呆れたように息をひとつ吐き出した。


「でも、まさかインスウがシュナイダー王子に恋をしているなんて思わなかった」


ジュフア様は話を変えてくれようとしたのか、そんな話題を投げかけてきた。


「シュナ様は本当に可愛らしいですものね」


私がしみじみというと、ムーラン様がクスクスと笑った。


「インスウ兄様はシュナイダー様へのショックが抜けず未だに寝たきりですし、パオもノッガー伯爵家に牙を剥いたと有名になってしまって部屋から出られないみたいですわ」


私はゆっくり首を傾げた。


「我が国でも、ノッガー伯爵家公認と言われたら高級品と皆が知ってます。そんなノッガー伯爵家に喧嘩を売ったとなれば他の貴族達はとばっちりを食いたくなくてパオを腫れ物扱いし始めたみたいです」


それは、あまりにも可哀想ではないだろうか?

私はお茶を口にしてから言った。


「では、パオ様に会いたいですわね」


周りが信じられないと言いたそうな顔をしたのがわかった。


「ユリアス様はあの子の態度を許すの?」


ムーラン様は眉間にシワを寄せていた。


「勿論、許しますわ」


周りがシーンと静まり返ったが、殿下だけは呆れ顔だ。


「ユリアス、また何か企んでいるのか?」


私はわざとらしく驚いて見せた。


「まあ! 殿下は私を疑うのですか?」

「いや、そういう訳では」


私はニヤリと口を釣り上げたのだった。


読んで下さりありがとうございます!

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