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私、見る目がありますから!〜癖強クランで愛され異世界ライフ〜  作者: 阿井りいあ


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46 二人に相談して本当に良かった!


 とにかく! 今はこの雲行きが怪しすぎる雰囲気をどうにかしないと!


 でも私って、こういうフォローが苦手なんだよね……。

 余計に墓穴を掘りがちというか、よかれと思って余計なことを言ってしまいがちというか……。


 でも、放っておくよりマシ! 主に私の精神的に!


「あの、そもそも! 私に見る目がないせいで招いたことなので! ほいほい騙されるのが悪かったんです! 親友にもいつも心配されて、注意しろって言われていたのにこんな有様で……」

「いや、騙すほうが悪いに決まっているだろう」

「ああ。たしかにルリもぽやっとしてたかもしれねぇが、それで女を利用したり手を上げるなんざ許されるわけじゃねぇ」

「まぁ、それは、そうですけど……」


 い、言い返せない。えーっと、どうしよう。あとは……そうだ!


「散々な目に遭ったのはその通りですけど……神様からはミルメちゃんをいただきましたし、結果としてあのタイミングで死んでしまったからこそ、私は今こうして皆さんに出会えて、楽しく過ごせていますから」


 言い訳よりも、今が幸せってことを伝えたほうがいい、よね? どうかな?


 ちらちらと二人の様子を伺うと、さっきまで怒りのオーラをまき散らしていたのが落ち着いたように見えた。


「お前、それを言われちゃ……」

「はぁ……なにも言えないな。私としても出会えたことには感謝している」


 ああ、よかった。相変わらず納得のいっていない顔はしているけど、どうにか怒りを鎮めてくれたみたい。

 よし、ここからが特に聞いてもらいたい話になるからね。落ち着いてくれて助かった。


「えっと、話を戻しますね。だから私はたぶん……その、キンドリー家の行方不明の娘で間違いないと思います。神様が言っていたことと同じですし。ただ」


 いざ言葉にしてみると少し照れ臭いな。

 でも、気持ちは言わなきゃ伝わらない。


 私は息を吸い込んで、勇気を出して伝えた。


「私は、このクランにいたい、ので……その」

「なるほど、わかった」

「え、わかったんですか?」

「ああ。ルリは俺たちと離れたくないって思ってんだろ? 嬉しいねぇ」

「そっ!? れは、そう、ですけどぉ……」

「なんだ、今さら照れんなよ」


 くっ、意地悪トウルさんだ……っ!

 そりゃあ照れるでしょ。面と向かって、改めてそう言われたら余計にねっ!


 ぷいっとそっぽ向いていると、セルジュが軽く肩をすくめてから話を続けてくれた。


「間違いなく当主はルリを屋敷に迎えようとするだろう。実の父親だ、その気持ちはわかる」

「そう、ですよね。私も、探し続けてくれていた父親の気持ちを無下には出来ません」

「だが、ルリはキンドリー家で世話になりたくはないのだろう? ならばそこは、絶対に譲らない意思を貫いたほうがいい」


 絶対に譲らない意思、か。

 もちろん、私は絶対に貴族にはなりたくない。なぜって? 今さら、そう簡単に生活も意識も変えられないからだよ!


 今の生活を気に入っているし、貴族になったら制限も多くなりそうだもん。

 勝手なイメージだけど、一人で出歩いたりすることも難しくなるんじゃないかな。


 今だってセレか他のクランメンバーが一緒じゃないとダメって言われてるけど。それとはまた違うっていうか……。

 あと、貴族はよくわからないっていうのが大きい。 勉強やマナーなんかも難しそうだし、私に出来る気がしないんだもん。


「当主に泣きつかれて情にでも訴えかけられたらお前、あっさり首を縦に振りそうだな」

「うっ」

「いいか。俺もセルジュも、お前が貴族になりたくないってんなら協力出来る。だがお前が許可しちまったら、それ以上の手は出せねぇんだ」

「はい……」


 痛いところを突いてくるなぁ。トウルさん、私のことをよく理解してる……。

 ぐいぐい押し気味にこられたら断れない、なんてことは何度も経験しているから、その状況が目に浮かぶよ。


 どうしよう。絶対に断るつもりではいるけど、はっきり言えるかな? 申し訳ないって気持ちになっちゃうかもしれない。

 返事はしたものの、やっぱり自信がないや。というかこういう性格だったら、余計に貴族には向いてないんじゃないかな? 不安……。


 そんな私の心情が伝わったのか、トウルさんとセルジュは顔を見合わせてため息を吐いた。うっ、ごめんなさい。


 しばしの沈黙を挟み、セルジュが口を開く。


「ただ断るだけなのも心苦しいだろう。それに、それでは相手も引き下がらない可能性が高い」

「そんなぁ。どうしたらいいんでしょう……」

「折衷案を探すしかないな。我々はルリの意思を尊重すべきだと一貫して主張するつもりだが、ルリだって向こうの望みを真っ向から突っぱねる気まではないのだろう?」

「それはもちろん! 実感はありませんが、私にとってはたった一人の……血の繋がった家族なのですから。あっ、妹や弟がいるんでしたっけ」

「ルリとは半分だけ血が繋がった、な」


 余計に実感がないや。

 血の繋がった家族、か。それってどんなものなんだろう。


 でも実感がないというだけで、関係を全て遮断したいとか、そこまで思っているわけじゃないよ。

 出来ることなら仲良くしたいし、でもそれが貴族籍に入るというなら断りたいだけで。


 良い関係を築けたらいいんだけど……良い折衷案を探せるかな? 結局、私のワガママを通すことにならないかな?


 あー、もうすでに揺れちゃってる。私ってこういうハッキリしないところが本当にダメだよね。ぐぬぬ。


 一人で唸っていると、セルジュがまたしても提案をしてくれた。


「仲違いしたいわけではない、ということだな。それなら、ルリがどこまで許容出来るのかをあらかじめ考えていたほうがいい。交渉は私が間に入ろう」

「心強いですぅ!!」


 頼りきりで本当に申し訳ないけど、おかげで少しだけ対策と方針が見えてきた。


 どこまで許容出来るか、か。

 相手がどんな要求をしてくるかわからないからなんとも言えないけど……キンドリー家では暮らせない、というところだけ断言しておこうと思う。


「でもきっと、話し合いをするまでの間に少し貴族について勉強をしておいたほうがいいですよね。あの、教えてもらえますか……?」

「セルジュのほうが、教え方が上手いぞ。俺は適当になっちまうから」

「トウルは面倒なだけだろう……もちろん、ルリに教えることは構わない。引き受けよう」

「ありがとうございますっ! なんだか、色々とご迷惑をおかけしてすみません」


 しおしおと落ち込みながらお礼を言うと、セルジュにポンと肩を叩かれた。


「血の繋りはないが、一応私はルリの兄だからな。当然だ」

「あ、そっか……」


 兄、か。そっか、セルジュが兄なんだ。


「ふふっ。じゃあ、セルジュお兄ちゃんですね」

「っ」

「お前、そこはお兄様だろ」

「そうでした。でも今さらご令嬢のように振る舞えないですよ」

「そりゃそうだ」


 お兄ちゃんと呼ばれたことで照れているセルジュも、冗談を言って笑ってくれるトウルさんも、ずっと優しかったな。


 ああ、思い切って打ち明けてよかった。

 パニックになっていた心が落ち着いて、私の気持ちは今とても晴れやかだった。


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