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私、見る目がありますから!〜癖強クランで愛され異世界ライフ〜  作者: 阿井りいあ


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31/46

31 とんでもないデートに連れ出されました


 それはあまりにも唐突なお誘いだった。


「おう、ルリ。デートに行こうぜ」

「へ?」


 朝食の忙しい時間帯が過ぎ、私もこれからのんびり食べようと思っていた矢先にトウルさんにそんな声をかけられたのだ。


 理解するのに少し時間がかかった私は、数秒後に恥ずかしさがこみ上げて顔が熱くなってしまう。


 なんなの、急にっ!? デ、デートってどういうことぉ!?


「ほれ、あとの片付けはそれぞれがやんだろ。今から行くぞ」

「ちょ、ちょっと! 私まだ食べてないのにぃ!」

「外でなんか食わしてやる。ほら早く」

「説明が足りなさすぎます、トウルさんっ!」


 そんな私の抗議もなんのその。

 トウルさんは私の腕を引っ張ると、あろうことか軽々と私を抱き上げた。


「きゃっ!?」

「急ぎなんだよ。後で説明する」

「急ぎって……っていうか、デートって都合のいい言い方しただけですね!?」

「バレたか。よし、行くぞ。舌噛まねぇように気をつけろ」

「な、なにを言、っ!? きゃ、あああああっ!!」


 トウルさんは私を抱き上げたまま勢いよくクランの建物から出ると、一気に跳躍。

 なんと、屋根の上に飛び乗ってしまった。人間業じゃなくないですか!?


 クランの中を駆け抜ける際、スィさんの笑顔とモルガンさんの同情の眼差しを見た気がした。


 ◇


 どれほど連れまわされただろうか。

 気づけば町の端にあるのどかな丘の上にいて、私は散歩道に設置してあるベンチに座ってぐったりしていた。


「ルリ、大丈夫か?」

「大丈夫なわけないでしょ!? 建物から建物へと跳んでましたよね!? どう、ど、どうしてっ」

「元気そうだな」

「いいから説明してくださいっ!!」


 もう、朝からずっと叫んでる気がする。途中からは悲鳴を上げる気力さえなくなっちゃったほど。

 叫び続けてたら今頃声がガラガラだったかもぉ……。


 朝ごはんも食べ損ねたし、いきなり連れ出されるし、とんでもないアトラクションに無理矢理乗せられたようなもんだし……。


 酷い。今日は散々だ。あっ、涙が滲んできた。


「お、おい。あー……悪かったよ。泣かすつもりはなかった」


 ついに鼻をすすりながら泣いてしまった私に、さしものトウルさんも悪いと思ったらしい。この前とは違って素直に謝ってきた。


 初めてクランに連れてこられた時もそうだったけど、私ったら驚くと涙がこみ上げてくるタイプみたい。初めて知ったよ……。


「俺が悪かった。な? 泣き止め」


 そうだよ、トウルさんが悪いよ。

 でもハンカチなんか渡して優しい声をかけるなんてずるい。ちょっとかっこいいって思っちゃうじゃない。

 いつもこのくらい優しければいいのに。くすん。


 ハンカチを借りてしばらくして、ようやく落ち着いた。

 黙って待っててくれたトウルさんはバツの悪そうな顔で頭を掻くと、どこから取り出したのかパニーニのようなホットサンドを手渡してくれた。


 まだあったかくて美味しそう。ハムとチーズの香りが食欲をそそる。


「いつでも食えるように、こういう軽食を常に用意してんだよ。遠慮なく食え」

「ど、どこに用意してたんですか……」

「収納の魔法だな。俺が使えるちと特殊な魔法だ。誰にも言うなよ」


 収納の魔法? 私が持ってるたくさん入る財布みたいな感じかな。

 不思議に思って目をぱちくりさせていると、トウルさんは何もない空間から今度は温かな紅茶まで出してくれた。


 す、すごい。これは秘密にするのもわかる気がする。


 私は小さく頷くと、渡されたパニーニと紅茶をありがたくいただく。

 はぁ、胃が落ち着いた。やっぱりお腹が空いていると思考も悪いほうに向かっちゃうもんね。

 単純かもしれないけど、おかげでトウルさんを怒る気も消え失せたよ。


 私がのんびり食事を楽しんでいると、トウルさんが食べながら聞いてくれと話を切り出してくれた。


「これからクランに面倒なヤツが来るんだよ」

「面倒なヤツ?」

「そう。この国の王太子だ」

「おうたいし……王太子!? 王子様ってことですか!? んぐっ、けほっ、けほっ」

「おいおい、大丈夫か? 紅茶飲め」


 だ、だって急にとんでもないこと言いだすんだもん!

 一生関わることはないだろうと思うような、やんごとない身分の人が突然身近に……!


 ふぅ、落ち着こう。私に関係があるわけじゃないんだから。紅茶がおいしい。


「で、その王子サマってのが口うるさくてよ。顔を見るたびに結婚相手を紹介しようとしてくんだよ」

「……トウルさん、王太子と顔見知りなんですか……?」

「まぁな。言っておくが別に俺は貴族でもなんでもねぇぞ」


 ますます信じられない話を聞いてしまった気がする。

 普通、王太子と顔見知りになんてならないよ? え、ならないよね?

 トウルさんがあまりにも当たり前かのように言うから自信がなくなってきた。


 それに、トウルさんの言葉。いくら見る目のない私でもさすがにわかるよ。


 自分は貴族でもなんでもないだなんて、怪しい。


今は(・・)貴族ではありません】


 ほらー!! 今は、って協調してるもん、ミルメちゃんがー!


「……昔は貴族だったんですか?」

「……」

「沈黙は肯定と受け取りますからね」


 王太子と顔見知りもびっくりだけど、トウルさんが元貴族っていうのにもびっくりだよぉ!

 クランのみんなは知ってるのかな? いやいや、そんなことよりどうして今は貴族じゃないの?


 なんというか……貴族が平民として生きてるっていうのは、私の感覚ではだいぶ普通ではない事態だと思うんだけど。


 訳あり、だよね。間違いなく。

 この世界に来て、私は随分察しというものが良くなったんじゃない? 嬉しくない!


「はぁ、驚きすぎて何から言えばいいか。もう開き直る準備はできたのでなんでも話してください。聞くだけ聞きます」


 これ以上、驚くようなこともないでしょう。どうせ私には関係のない世界のことだし、今の状況をちゃんと理解するためにも説明してもらわなきゃ。


「ほう、度胸があるな。それでこそルリだ。じゃあ遠慮なく言うが……」


 ……あ、待って。嫌な予感がするかも。だってトウルさんの顔がにやけてるから!


「俺は国王の庶子なんだよ」

「……王族?」

「まぁなんかいろいろと面倒だから、問題起こして地位をはく奪してもらった」

「なんか怖いのでこれ以上詳しいことを聞くのはやめておきます!!」

「なんでも話せっつっただろうが」


 いやだって! さすがにこれは庶民が聞いたらまずい話では!?

 もーーーー、やめてよぉぉぉ! ちょ、トウルさん、笑いすぎっ!!


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