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私、見る目がありますから!〜癖強クランで愛され異世界ライフ〜  作者: 阿井りいあ


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22 癒しのトリオ


 そんなこんなで、私の日常はある程度やることが決まって規則的な日々になりつつある。


 まず朝、食事の準備をしながら出かける人たちをお見送り。

 さすがに毎日は大変だろうからと言われたんだけど、料理をするのは好きだし、朝なら自分が食べるもののついでだからと毎日作るようにしてるんだ!


 おかげでみんなの好みもわかるようになってきた。

 朝からガッツリ派と軽め派、好きな味付けとかね。


 ただ、やっぱり一人だから夕食は時々になっちゃう。

 スィさんが手伝いの人を雇うまでは無理しないでと言ってくれたからお言葉に甘えてるんだ。


 というか……ギャスパーさんに頼まれた仕事もやって、夕食も準備して、ってやってたらスィさんに怒られちゃったのだ。働きすぎだって。


 この程度で? という感覚だけど、たぶん価値観の差だろうなー。


 日本にいた時に比べればかなり自由時間が多いし。大学の勉強や課題の時間もあったことも考えると、今はのんびりお茶したり散歩する時間もあるんだもん。


 そう考えると、遊んだりゆっくり過ごす暇がなかったあの頃のほうが異常だったのかな? という気もしてくる。


 ……香苗とも、もっといっぱい遊びに行けばよかったな。


 なんて、後悔したって仕方ないよね。


 だからこそ余計に、この世界では自由に過ごす時間を大事にしようと思う。

 スィさんに怒られたから、ってだけの理由じゃないからねっ。


 本当は一気に進めたいギャスパーさんの研究室の片づけ、もとい素材の仕分け作業も、時間で区切って

強制的に終わらせることにした。

 終わったと思ったらまた新しい素材を仕入れてきたりするから一生終わらない気がするもん。あきらめないけど。


 それに、ギャスパーさんからしたら私の作業は驚くべき速さらしいので、数日に一回働けばいいとさえ言われている。

 さすがに却下したけどね。絶対にダメ、それはダメ。


 そんなんだからいつまでたっても散らかったままの部屋なんだから!

 というか私がこの状態を放ったらかしにできないっ! 我慢ならない!


 目下の私の目標は、素材管理の部屋だけでなくギャスパーさんの作業部屋も綺麗に片づけること。

 いつになるかはわからなくても、必ず成し遂げてやる! もはや意地っ!


 ◇


「セレ、買い物に行きたいんだけど一緒に行ってくれる?」

「にゃぁ!」


 私が声をかけると、セレは軽く伸びをした後ぴょんと私の肩に跳び乗った。相変わらず重さを感じない。ふわふわは感じる。幸せ。


 今日も午前の作業を終えた私は、昼食の調達と食材の買い出しに向かうことに。

 買い物も日課になりつつあるんだ。だって食材なんてあっという間になくなっちゃうもん。


 よく使う野菜やパンなんかは配達してくれるんだけど、メインとなるお肉や魚は実際に見て良いものを買いたいからね!

 たくさん仕入れがあったとかで安く買えることもあるし、季節の野菜もあったりするし。


 なにより、買い物しながらメニューを考えたいし!


 この世界特有の食材も多いから、見てるだけでも楽しいんだよね。気分転換にもなって、一石二鳥なのだ。


 クランから一歩外に出ると、肩に乗っていたセレはぴょんと地面に降りて虎型へと姿を変える。

 どうやら私の護衛のつもりらしい、と知ったときはかわいくて愛おしくて思い切り抱き着いちゃった。最高のナイトだよぉ!


「おや、ルリちゃん。今日も買い物かい?」


 まずはお肉屋さん、と思って顔を出すと、店主のおじさんが気さくに声をかけてくれた。

 セレを初めて連れて行ったときはものすごく驚かれちゃったけど、二回目ですぐに慣れてくれた。適応力が高いよねぇ。


 同じ感じで、町の人たちも住人はすぐに慣れてくれた。外から来た人たちは相変わらずびっくりした顔をするけど。

 まぁセレはとってもおりこうさんだから、害がないってことをすぐにわかってもらえるのだ。


 ついでに私がごちゃまぜな工具ども(ジャンブルツール)に所属しているという話もいつの間にか広まっていて、なんというか、ちょっとした有名人になってしまっている。

 注目が集まるのは少し恥ずかしいけど、だいたいは好意的な目を向けてもらえているのである意味助かっているんだ!


 おかげで、買い物もしやすいから!


「こんにちは、おじさん! そうなんです。今日のおすすめのお肉はなんですか?」

「今日からウォーフロッグの肉が入荷してるよ!」


 ウォーフロッグ……? 初めて聞く名前に首を傾げながらその肉の塊を見ていると。


【カエルの肉です】


 カ、カエル……!? いや、でも食用ガエルとか聞いたことがあるしね。うん、食べられるのはわかるけど、ちょっとだけ抵抗が。


【ほぼ鶏肉です。ヘルシーで大変美味です】


 鶏肉……そっか、鶏肉と思えばいけるかも。

 ただその塊肉、カエルの足っぽいのが見えるぅ! 


 うぅ、言っている場合じゃない。旬のおいしくて安いお肉なら買い一択!

 クランのお財布からお金を預かってるわけだし、私が抵抗あるからって理由で買わないのはあり得ないよね!


「じゃあそれくださいっ! あ、使いやすく切ってもらえます?」

「お安い御用さ! 他はなにか買ってくかい?」


 こういうのはまとめ買いがお得! というわけで、私はウォーフロッグの他にクリムゾンボアとホーンラビットの肉を購入。

 この世界における一般的な食用肉だってミルメちゃんもおしえてくれたからね。ついでに、新鮮で脂ののった部分もチョイス。

 おじさんから見る目があるね、って驚かれちゃった。そうなんです、ミルメがあるんです。


「セレ、これ全部持てる……?」

「ぐるぅ」

「すごい、力持ち! ありがとう、セレ。助かるよ」


 買ったお肉はカゴに入れて持って帰るんだけど、お肉って重いんだよね。それをセレは軽々と咥えて持ってくれる。

 まだお野菜も買いたいからすごくありがたいよ。かわいいしお手伝いもできておりこうさんすぎる!


 ……とはいえ。


「か、買いすぎた、かも?」

「ぐるぅ……」


 八百屋の店主の奥さんとおしゃべりしていたら、なぜか同情されてたくさんおまけをいただいてしまったのだ。

 別に私、クランで嫌な目に遭ったり我慢させられているとかもないのになぁ。そう簡単にクランの誤解は解けないみたい。しょんぼり。


 それはそれとして、今は目の前の問題をどうにかしなくては。


 セレがいるので重さは問題ないんだけど、セレが持ってくれるカゴと私が持つカゴに品物が入りきらないのだ。


 品物を入れるカゴと手が足りない……!


 バカバカ、私のバカっ! 考えなしすぎるぅ!


 いやでもね? 買う物に関してはちゃんと考えてたんだよ?

 でもあれもこれもおまけであげるって笑顔で渡されたら断れなくて……。ああ、脳内で言い訳している場合じゃない。


「どうしようかなぁ……一度さっきのお店で預かってもらって、また取りにこようかな?」


 もはやそれしかない、と思って引き返そうとしたとき、後ろからクイクイッとスカートを引っ張られた。

 驚いて振り返ると、そこには三人の子どもたちが。あ、この子たちは!


「トンくん、テンくん、カンくん!」


 クランに所属しているトンテンカントリオ!


 たしか、身寄りがなくて犯罪に手を染めようとしていた子どもたちを見かねたハマーさんが引き取ったとかなんとか。

 ちなみに名づけ親もハマーさんらしく、あまりに安易なネーミングにクランのメンバーからはいろいろ言われたのだとか。


 当の子どもたちはとても気に入っているみたい。私もかわいい名前だなって思うよ。

 ハマーさんにもよく懐いていて、よく働くとても良い子たちだ。


「ルリさん、すっごい荷物だねぇ」


 茶髪の癖毛がかわいい、三人の中で一番年上、十歳のトンくんが苦笑いを浮かべながらそう言った。

 続けて灰青色の長い髪を一つにまとめた九歳のテンくん、それから薄茶の髪を短く刈り上げている八歳のカンくんが立て続けに声を上げてくれる。


「ひょっとして、困ってる? オレたちが手伝おうか?」

「ボクも手伝う! ボクね、重いの持てるよ!」

「うぅ、正直すっごく助かるよぉ!」


 まさに救世主! しかもやる気満々でかわいい!

 あーでも、カゴがないから手で持つことになるよね。全部持てるかなぁ。


 そんな時、トンくんがカバンからじゃじゃーん! と布を取り出してくれた。


「僕、布を持ってるからこれで包んでいこう」

「わぁ、助かる! どうやって持って帰るかずっと悩んでいたの」

「へへ、ケガをしたら包帯代わりになるし、雨が降ったらしのげるし、便利だからいつも持ち歩いてるんだ」

「すごい、トンくん。準備がいい……」


 子どもたちの中で一番年上だから、テンくんやカンくんになにかあった時のことをいつも考えるようにしているんだって。

 うぅ、なんていいお兄ちゃんなの。涙が出そう。


「ボクがこれ持つ!」

「んー、この大きいのは背負えるから楽ちんなんだ。カンは力持ちだからこっちの大きな野菜を持ってくれないか?」

「んえ? いいよ! トンはそれ背負って楽してね!」

「ああ、ありがとう。カンは優しいな」


 どう考えても布で包んで背負う荷物が一番重いのに、カンくんの自尊心を傷つけることなく自分が持つ流れに……!

 本当にいいお兄ちゃんだ、トンくん。


「オレは手先が器用だから、細かい品物をたくさん持つぞ! だからカンはこの大きくて重い野菜を頼むな!」

「ん、任せて!」


 テンくんもいいお兄ちゃんしてる! なんだろう、この三人。見ているだけで癒される……。


 もともと素直で、そこにハマーさんの優しい教育があるからこんなに良い子たちになったんだろうな。


「よっし! 帰ったらハマーさんにお小遣いねだろうね、二人とも!」

「ルリ姉のお手伝いしたから、きっとたくさんもらえるぞー!」

「やった! ボクおやつ買う! いっぱい買う!!」


 んー、現金! それもまた素直でよろしい!!


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