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壊れスキルで始める現代ダンジョン攻略  作者: 君川優樹
【書籍版】残念、今日はここまで!
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【書籍版】75話 特に理由のない名誉毀損が水樹を襲う!


 遠方から加速し、墜落する飛行機のように襲い掛かるキャロル。


 彼女は火又の制圧が始まった瞬間に退避し、これまで遠方に隠れていたのだ。


 その襲撃を視認した瞬間、火又は身体からスッと力を抜き、背中を丸めて両腕を股下へと垂らした。

 何らかの予備動作であることは明白。スキルをもって迎撃する構えだろう。


「ケシーっ!」

「あいあいさーっ!」


 突如として俺の左脚ポケットから飛び出したケシーが、羽を素早くはためかせて火又の顔面へと突っ込む。

 予想だにしていなかったであろう『妖精』の奇襲に、火又の注意が引きつけられた。


「おぉっ!?」

「イエーッ! 弾丸ケシーちゃんでーっす! 奇襲(アンブッシュ)っ!」


 戦闘機の如き速度で飛翔したケシーが、陽動のために火又の目の前を飛び掠める。

 さすがに驚いた火又は、若干態勢を崩して身体を強張らせた。


 ケシーはそのまま空高く飛び上がり、戦闘機のようにくるりと翻って頭上から俺を見下ろす。


「ズッキーさん! 左の人、撃ちます!」

「『スキルブック』!」


 バンッ!


 左方からの銃声と、スキルブックの起動はほぼ同時。


 俺の身体を貫くはずだった銃弾は、左体側に発現したスキルブックに命中し、音もなく弾かれた。

 演習で明らかにしたスキルブックの性質。

 実体化したスキルブックはあらゆる物理攻撃を無効化する。


 パパパンッ。


 続けざまに、乾いた銃声が連続して鳴り響く。

 しかし、それは俺を狙ったものではなかった。


「ぐぁっ……!」


 複数の銃声と同時に、俺に銃口を向けていた隊員達が一斉に倒れる。

 遠方からこちらを狙っているREAの隊員が、狙撃によって援護してくれたのだ。


 その一連の刹那の中で————

 上空より飛来したキャロル・ミドルトンは、斬撃を伴って火又へと着弾した。


「やぁぁぁあああああっ!」


 キャロルは竜巻のように回転しながら、着地と同時に剣斬の連撃でもって火又に襲い掛かる。

 肉眼では追いきれない、巻き込まれればミンチにされること間違いなしの剣捌き。

 アレを食らって生存できる者はいない。


 よし、やった————!


「『自己催眠』」


 キャロルの両刃剣によって、その身体を真っ二つどころか八つ裂きにされる寸前。


 何らかのスキルを発動した火又の長い手足が、視認できない速度で素早く動いた。

 それはあまりに速すぎたので、俺は間のコマを飛ばした低予算アニメを見たかのような、どこかカクついた違和感を覚えさせられる。


 その異常なスピードでもって、火又は対空迎撃の回転蹴りを繰り出した。

 それは人間の動きというよりは、コンマ1秒の世界を戦う格闘ゲームのコマンド技のようにも見える。


 斬撃と対空蹴りが交錯する。


 先に相手の身体へと攻撃を叩きこんだのは、後手を踏んだはずの火又の方だった。


 バキンッ! レールガンで鉄球を打ち込んだかのような、凄まじい音が鳴り響く。


「グアッ!?」


 両刃剣を振り下ろしながらその横っ腹を蹴り叩かれたキャロルの身体が、ラケットに叩かれたピンポン玉のような速度で弾かれた。彼女は地面に身体を打ち付けながらも、体操選手のようなアクロバティックな動きで転がりながらさらに加速し、素早く起き上がろうとする。


 しかしその先には、すでに火又が待っていた。


「なっ————」


 バギッ。


 再び、金属甲冑が破壊される鈍い音が響いた。


 追撃の蹴りを食らったキャロルの甲冑が割れ砕け、辺りに破片が散らばる。

 それは人間の蹴りを食らったというよりは、対物ライフルから放たれた大口径弾丸の直撃を受けたかのような光景だった。


 ビシリという衝撃が、地面と空気を伝わってこちらまで伝わって来る。


 胸に二撃目の回転蹴りを受けたキャロルの身体が跳ね飛ばされ、高所から落下したかのような衝撃で地面に突き刺さった。新調した甲冑は二撃によって完全に粉砕されて、その衝撃で粉々に砕け散る。その下から顕れたのは、先日の探索で着ていた羞恥心対応型のエロ水着アーマー。やはり下に着こんでいたのだ。


 吹き飛ばされて芝生を削りながら転がるキャロルは、地面を蹴ってあえて加速することで、再びアクロバティックに回転。そのまま遠方へと着地し、握った剣をその場に突き刺して運動エネルギーを殺し、その場で何とかストップする。


「ヅゥッ…………!」


 苦し気に表情を歪めながら、彼女は剣を握り直した。


 キャロルは胴体部および胴回りの甲冑を全損。

 しかし頭に装着した胸甲騎兵帽は脱げておらず、腕や脚を保護する甲冑も残っていた。破壊された甲冑の下から登場したエロビキニは、戦闘による発汗を吸収してすでに透け始めている。恥部の先端以外は全て曝け出し、逆に隠さなくても良い場所しか隠せていない逆バニーを思わせる背徳的歪さ。いや、そんなことを連想している場合ではない。『ほんとにですねーッ!』


 パパパン……と銃声が鳴り響く。


 ここではない、どこか遠方にて銃撃戦が開始されたようだった。

 おそらくはREAの部隊が、狙撃地点にて火又の配下との交戦を始めたのだ。


 さらなる追撃を仕掛けずに様子を眺めていた火又は、戦闘服の襟を正して「ふぅ」と息をついた。


「危なかったな……MAXの『自己催眠』が間に合っていなかったら、殺されていた」

「『自己催眠』による脳の制限(リミッター)解除……」


 『龍鱗の瞳』を起動したキャロルが、彼を睨みつけながら憎々し気に呟く。


「さらに、条件付け(オペラント)による反射攻撃か……っ!」

「ご名答。おかげでちょいと脚がイカれちまったようだがな。痛覚抑制を解いた時が怖い」


 そう言いながら、火又はキャロルの方へと歩を進める。


「————ッ!」


 キャロルは剣を握り直し、彼を迎え打つ構えを取った。


 しかし、彼女は表情にこそ出さないものの、先ほどの二撃でかなりダメージを負っているようだ。

 肩が深く上下し、剣を支える左腕が震えている。

 彼女の皮膚から汗がさらに噴出し、発汗を吸収したエロビキニはより一層透けようとしていた。


「以前は君の方が強かったのに。鍛錬をサボってるんじゃあないか?」

「…………次は、その喉笛を斬り刻む」


 静かにそう答えたキャロルに対し、火又はため息を吐き出す。


「降参したまえ、キャロルくん。大人しく投降してくれれば、命までは奪わない。水樹くんはちょっと借りることになるが、事が終われば君の下に返してあげよう」

「ミズキは私の夫だ」


 剣を握りしめたキャロルが、火又を睨みつける。


「お前の物ではない。私の物だ。決して譲らん」

「残念だ。去年ならいざ知らず、今の実力差は明白だというのに……色恋にかまけて弛んでしまったんじゃないのか? 大体、その変態衣装はなんだ?」

「これはミズキの趣味だ」

「そうか。まあ……人の趣味嗜好はそれぞれだからな。何も言うまい」


 唐突に熱い名誉棄損を受けた気がしたが、そんなことに気を遣っている場合ではなかった。


 俺はすでに『火炎』と『爆発現象』のスキルカードを抜き、握った指の間に挟み込むようにして構えている。


「火又! お前の相手はキャロルだけじゃないぞ!」


 緊迫する二人の横合いへと、俺は叩きつけるように叫んだ。


「降参するのはお前の方だ! そこから一歩でも動けば、『火炎』をぶっ放す!」

「ああ?」


 火又はゆらりと背中を仰け反らせると、俺の方を振り向く。


「精神防御系のスキルすら持っていない雑魚が……私とキャロル君との決闘に水を差すな」


 火又は俺を睨みつけながら、一段低い声色でそう呟く。


 そのとき、火又の瞳が。

 不意に、暗い赤色に輝いたような気がした。


「まあいい……ちょっと手駒に加えておくか。『催眠』」

「えっ」


 キィン……という耳鳴り音が響いた。


 その瞬間、俺の意識は遠のいていく。


 音もなく落とし穴に落ちるかのような、暗い薄暗がりの中へと沈んでいく感覚。

 それはとても深い、深すぎる暗闇だった。


 その奥底へと落下してしまった俺は、泥沼の中に囚われて、身動きが取れなくなった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 散々火又の能力聞いてたのにバカすぎる。 何故警告する必要がある? やっぱり主人公はキャロルくらい 真っ直ぐな方が好感持てる。
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