【書籍版】59話 ガツンとボリューム感で勝負 #
いくつか報告することと、説明することがある。
一つは詩のぶが予告した通り、『詩のぶチャンネル』の動画投稿が再開した。
一本目の動画は『炎上YourTuberに起こった10のこと』というタイトルで、謹慎を明けてこれから動画投稿を再開する旨を冒頭で説明した後に、以前の事件の後に詩のぶの周りに何が起きたか、炎上に関する大体の出来事が説明される内容になっていた。ちなみに詩のぶが投稿を再開したことは、Yafooニュースにもなっている。
コメント欄は以下の通り。
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ヨギレン 一日前
最低一年は謹慎しろクズ
早く脱げ
Good 120 Bad 89
30つのリプライを表示↓
気合ヌ・リーブス 18時間前
Xtuberの動画と同時再生するとめっちゃシ●れる
Good 65 Bad 12
40つのリプライを表示↓
終わり課長 一日前
身体に気を付けて橈骨動脈が脈打つたびに投稿してください
Good 20 Bad 14
5つのリプライを表示↓
登録者一人につき日本列島を1cmずつ動かすオリエンタルテレビ 23時間前
おかえり!!!!!
Good 1 Bad 9
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まあ頑張ってくれ。
二つめに、俺の現在のレベルについて。
前回。ボス・オーガを直接的には俺が倒したことにより、レベルが2つ上がっていた。それにより、レベルは19から21へ。これに伴う能力値の上昇は全て『体力』に割り振ったので、現在の値は16から22となった。結構上がった方ではないか。だがそれでも、多智花さんの体力値には劣ってしまうのだが。巨乳恐るべし。
三つ目。試験演習で借用できるスキルについて。
こいつについては以下の通り。
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1.火炎:対象に火属性の4点ダメージ。スリップダメージ:3(燃焼)
2.爆発現象:2ターン秒の間、炎属性の魔法の威力を2倍にする。
3.ゴブリンの突撃:1ターン秒の間、あなたが与える近接物理攻撃ダメージにプラス3の上方修正を加える。
4.手を取り合う増幅:2ターン秒の間、あなたに付与される強化の効果を2倍にする。
5.透過:1ターン秒の間、あなたは物理攻撃を受けない。
6.拒否:遡って1ターン秒の間に対象が発動したスキル・魔法を一つ無効化する。
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という感じで、借りられる物は借用数の限界まで全部借りた。
新しいスキルとすでに持っているスキルの追加が半々、という感じか。
この中でも特に注目しているのは、4番目の『手を取り合う増幅』というスキル。こいつは強化を強化するという特殊な性質をもったスキルで、『スキルブック』の重ね掛け操作との爆発的シナジーが期待できる代物だった。
他に個人的に面白そうだと思うスキルとしては、『透過』と『拒否』がある。
『透過』は透明人間になるスキルではなく、あらゆる物理攻撃を無効化するという効果の、攻撃に対する透明化を実現するスキル。防御手段に乏しい『スキルブック』にとって、こいつは主力級の防御スキルとして活躍することが期待される。
『拒否』も一種の防御スキルと言ってもよい。ただしこちらは、相手の攻撃を無効化するのではなく、打ち消すという性質をもった面白いスキルだ。相手がどれだけ強力なスキルをもっていようと、この『拒否』で打ち消してしまえば問題ない。『スキルブック』を通して使えば、そんな操作がカードをかざすだけで可能になる。
他にもたくさん借りることができたので、演習中に色々と試してみることにしよう。
そうして、試験演習のために自衛隊の駐屯地に入った翌日。
洞窟性生物……いわゆるモンスターとの実戦戦闘演習が開始されるこの日に、俺は支給されたブーツや迷彩服を着込んで臨んでいた。自衛隊用の迷彩服にはポケットがとにかくたくさん付いているので、ケシーに入ってもらう場所には困らない。
ケシー? 居心地はどうだ? 建物の中を歩きながら、頭の中でそんなことを考える。『居心地はわりと良いですよー! ジーンズとかより全然いいです! 広いー!』なら良かった。
脳内でそんなことを話しながら階段を上っていると、上からあの川谷のペアである馬屋原という冒険者が降りてきた。
彼は元々がワイルドな風貌なので、支給された迷彩服も様になっている。40代の後半のようにも見えるのに、衰えを全く感じさせない若々しい雰囲気だ。こういう年の取り方をしたいものだな、と俺は思った。エイジングケアとか頑張っているのだろう。
軽く会釈して通り過ぎようとすると、彼が声をかけてくる。
「君。一つ聞きたいんだが」
「はい、なんですか?」
「……REAに入るっていう話は、本当なのか」
「今のところ、その予定はありませんよ」
嘘は言っていない。
「あの……もう一人の方が、R・E・Aに入るというのは?」
「無いんじゃないんですかね」
嘘は言っていない。
多智花さんは最初こそ乗り気だったものの、今現在は危険な冒険者ライフにビビり倒しているので、最終的には加入しない可能性の方が高いのではないかと思っていた。
俺がそう答えると、馬屋原はふっと安心したように笑う。
「……そりゃそうだよな。君やあの子がREAなんて、何の冗談かと思ったんだ」
「まあ冗談みたいな話ですから」
口調に棘を感じたものの、無視することにする。この世の全てに突っかかっていたら身体がもたない。映画のヒーローだってこの世の全ての悪徳と戦うわけではないのだ。
「君の話を色々と聞いたよ、水樹くん」
ずい、と彼は階段の手すりに身を寄せて、よりかかるようにして話しかけてきた。
「ボス・オーガの、雷属性の変異種を単独で討伐したんだって?」
「いや、あれは微妙に違うんですよ。そう伝わってるみたいですが」
「なるほどね、わかるよ。私にも、そういう時期があったから」
「そういう時期?」
「君、アレだろ?」馬屋原は、私には全てわかっているよとでも言いたげな視線で俺を見提げてくる。「神輿に担ぎ上げられちゃった感じだろ?」
「……どういう意味です?」
「冒険者界隈は市場規模が大きいから、そういうことが頻繁に起きるんだよ。事務所がゴリ押す大して可愛くない女優とか、演技もできないのに主演に抜擢されるアイドル俳優とか、そういうのってよくあるだろ」
「はあ」
「私も昔は、そんな感じでメディアに祭り上げられてな。ほら、俺って顔だけはテレビ映えするんだよ」
そう言って、馬屋原は自分の顔を軽く指さした。その厳つく人の目を引く風貌は、もう少し若ければ●代目ソウルブラザーズなんてユニットにいてもおかしくなさそうには見える。そうして言われてみれば、彼の風貌というのは一般人の『いわゆる冒険者』というイメージと合致するような気がした。
「それでテレビ局の目に留まって、大して実績も無い頃から『日本一の冒険者』なんて形で売り出され始めたんだ」
ははあ、と俺は思う。なるほど、そういう経緯があったのか。面白い。
「でもテレビで特番を見ましたよ。かなり大量のスキルを持っていたようですが」
「あれは全部、局が用意してくれたんだよ。当時は冒険者なんて日本に何人もいなかったから、やりたい放題でな。でもまあ色々と世話になって、今ではいっちょまえにやれてるわけだが。それで、君もそういう口だろ? どこのテレビ局だ? プロデューサーは何て名前だ? 知ってるかもしれん」
「いや、自分はそういうのじゃなくて……」
「わかってるって。REAも抱き込んで、次世代のスターは君というわけだろ? 俺もアレはすごく良いと思う。あのREAの隊長……キャロルなんて、とんでもなく綺麗な子だよな。テレビに出始めたら人気が出ること間違いなしだ」
うーむ、と俺は思った。
何か激しく勘違いをされているようだ。しかし彼が勘違いしているシナリオの方が、俺の実際の経緯よりもはるかに現実味のある筋書きであることは、一種の皮肉感が否めない。初ダンジョンでいきなりドラゴンと遭遇して妖精と同棲することになって、偶然壊れスキルを獲得して、女子高生YourTuberを助けて、巨大企業の社長からの密命を受けて英国最強冒険者集団と出会い、最強ボスを撃破して今はその最強パーティーにスカウトされている元証券マン…………よりは遥かに、現実的であり得そうな経緯である。というか困ったらそういうことにしておいた方が、面倒事を避けられるかもしれない。
そこで俺は、いかにも「実はそうなんですけど詳しくは話せないんです」みたいな苦笑を作って、肩をすくめてみせた。
「やっぱりそうか」
馬屋原はそう言って笑うと、スイと俺の脇を通り抜けて歩き去る。
「あとで連絡先を交換しておこうな。お互い助け合えるだろう」
彼の申し出には返事をせずに、俺はやはり肩をすくめた。
そのまま2階に上って、ペアである多智花との共同で割り当てられた部屋へと赴く。ダンジョン・アドバイザーと新部署の職員には、それぞれ専用の待合室が用意されているのだ。
なあケシー。『はいさいなんじゃらほいです』さっきの馬屋原って奴、何か変なこと考えてたりしたか?『いんや特にですね。嘘をついてる感じもしなかったですよ』了解、ありがとう。『あとですね、ズッキーさん』なんだ?『何かキャッチしたら教えますんで、何も言わなかったら基本問題無しって認識で大丈夫ですよ』助かる。サンキューな。『どういたしましてー!』
頭の中でそんなやり取りをしながら待合室の扉を開けると、そこには下着姿の多智花さんが居た。
「…………」
「…………あっ」
『おっ?』
下半身に紫色の下着と靴下だけを身に着けた多智花さんは、横を向きながら上のTシャツも脱ぐ途中で、ちょうどブラジャーをさらけ出した所だった。最近はなぜか女性の胸を見る機会が多かった俺ではあるが、多智花さんの胸はやはり、特に大きい。
女性のバストのサイズ感はよくわからないのだが、EとかFとかあるのではないか。着痩せするタイプだったのか?
贅肉の付いていない腰は細くくびれていて、腹には薄い筋肉のほどよい凹凸が隆起して、骨盤から胸までの扇情的なラインを形成している。キャロルの尻が小振りでツンと上向きに引き締まっていたのに対して、多智花さんのお尻は意外と、ガツンと全体のボリューム感で勝負みたいな印象だ。骨格自体は線が細い分、その出るところは突き出た豊満さが艶めかしい。俺は何を言ってるんだ。『私は何を聞かされてるんです?』
そこまでまじまじと見てしまったあとで、俺は踏み出した足を一歩下げた。
「えっと、すまん」
「あっ、はい」
ガチャンと扉を閉めてから、壁を背にしてふと思う。
命がけではないラッキースケベは初めてだ。『めっちゃ見ましたね!!』
【WEB版からの変更点⑥】
馬屋原の描写の強化。
WEB版で馬屋原くんが空気すぎたため。




