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第5話 暇なのでゲームをしてみる


『じゃあ、行ってくるね~』


 亜里沙の軽いノリの声が玄関に響いてから数分程度が経った。特に何もすることがない俺はベッドで大の字になって天井をボーっと見上げていた。


 右手の甲を両目のまぶたの上に当てて「はぁ~」と大きなため息をつく。ため息の理由は朝からいろいろあって疲れていたこともあるけど何よりもショックなことが一つあった。それは――


 たぶん、力が落ちてピアノ弾けなくなってる――いや、正しく言えば上手く弾けなくなってるかもしれない。音楽から少し離れられるって言っても今までできることができなくなることは結構辛いことだった。


 まあ、でも、正確に言えばやろうと思えば弾ける。でも……手がなぁ……


 天井に小さくなった白くて頼りない女の子の手を伸ばす。小さくなったせいで今まで通りに演奏できなくなってるのも確定だし、筋肉が衰えたせいで鍵盤を叩く力加減の調整をどうすればいいのか今のところ全く見えない。


 まあ、練習すればある程度はそんなに時間が経たなくてもすぐに元に戻るだろうけど……その、なんだ……俺はあんまし練習とかをやるタイプじゃないっていうか……面倒くさい。こんなこと言ったらダメなんだろうけど。


「う~、この調子じゃあ、声の方も少し不安だな~! どうしよ……」


 仰向けになっていた体を今度はうつ伏せにして、だらだらとベッドの上でうな垂れる。ネガティブな気持ちが溢れ出てくるが考えてても仕方がない。練習するしかそれしかない!


 ……うん! そうだそうだ! 考えてもしょうがない! 気分を切り替えようそうしよう! ――よし、気晴らしに動画でも見てよ。今日、土曜日だしなんかやってるだろ。


 半分、現実逃避の形で枕もとに置いてあった大きなスマホを取り出す。ロックを外して某動画配信アプリを起動する。たくさんの動画がスマホに映りそれをスライドさせていき何か面白いモノがないか探していく。


「――あ、有名声優の金藤結友が新曲発表したんだ……あとで聴いてみよ」


 少女の声でそう呟くとお気に入りの動画へ一覧へと飛ぶ。お気に入り登録した動画投稿者たちの動画がズラリと表示される。同じくスクロールして目的の動画を探す。


 んー、なんか面白いの――……おっ、ほほろさんが生やってる! ……ん? 参加者募集中? ボイチャ……なるほど。亜里沙が帰って来るまで時間あるし参加できるもんなら参加してみようかな。


 生に入ると俺の大好きなアニメ系ゲームの実況者であるほほろさんが自前のイケボを使ってゲームをしていた。登録者はそんなに多くはないが俺を含むアニメ好きの視聴者から愛されており、今絶賛成長中のゲーム実況者だ。


 チャット欄には『上手い』『いい声ですね』やアニメなどの話題で盛り上がっていた。配信を見るとそこは剣を持った女の子が大きなモンスターと複数人でチームを組んで戦っていた。しかも、このゲームはよく見る光景だった。


 ――マジか! 今ちょうどハマってたやつじゃん! よし、ちょうどいま手元にゲーム機もあるし参加しよ……! ちょうど枠も空いてるし行けるぞ……ッ!


 配信とこのお祭り感に乗せられた俺は、()()()()()()()()()()()()()()()稿()()()()()()()()()()()になっていることを気づかないままチャット欄に「参加したいです」と打ち込み、即座にゲームを起動して配信に女の子の声でボイチャに参加してしまった――

 前章から呼んでくださった方は引き続き本当にありがとうございます。今回はから新しい章になります。だいたい、前章よりも少し短い話になると思います。

 今作はこのように短編を重ねていくという感じになっていくと思います。もちろん、大筋としてのアイドルは根幹にちゃんとあります! なので、ゆっくりとお話に付き合ってくださればこちらとしても嬉しい限りです。

 今回もご愛読ありがとうございました!

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