エレーナ・S・スタンナードの日記

　●月●日。

　今日から私(わたくし)はアイドルとしての一歩を踏み出しました。お父様はアイドルになることは反対でしたが応援してくださったお婆様やお爺様のためにも頑張らないといけません。

　絶対にトップアイドルになり認めてもらわなければ――そんな意気込みで臨んだ初日ですが一部のメンバーは散々たるモノでした。特にあの銀髪の子は統率を乱して全員に悪影響を及ぼすのは避けられない人物だと確信しました。

　もう一人の赤い子はよく分からないというのが正直な答えです。結局、彼女らは今日の練習には参加しませんでしたし、本当に私たちと事を構える姿勢のようです。売られた喧嘩は買う主義なので徹底的にやらせてもらいます。

　あとの他の二人は前述の二人に比べて同じスカウト組だけあってよく話が通じ合う人たちでした。

　見た目も性格もあの銀髪の子に比べて遥かに良くてきっとデビュー後には人気なれると確信できる子たちです。フランス出身のレティーさんは人柄も良くて接しやすいというのが正直な答えです。

　ダンスや歌唱能力もさすがといったところで上手でした。私にはまだまだ遠く及びませんけどね。しかし、少しポジティブ過ぎるところもあるので友人として上手くアドバイスをしていければと思います。

　もう一人のノアさんという方はとても警戒すべき人間であると同時にとても尊敬できる方だと感じました。レティーさんとは違って礼儀正しさを感じられて腰が低いところ。

　さらには自身に暴力を振るったであろう人間に対しても心配できる心があるという心の広さ。

　今日一日接しただけでもかなり良い人だと断言できる方でした。しかし、ここからが彼女の尊敬とともに警戒をしてしまうこと。それは彼女のあのずば抜けた音楽的センス――いや、センスとかではありませんね。あれはもうそんな言語化できるほどのものではありませんでした。

　私自身も習い事で踊りや音楽と言った教養を付けてきました。その過程でたくさんの人の前で演奏する機会もありましたし、コンクールとかでも入賞したことも何度もあります。

　だからこそ私はあの方のあの音楽の才にとてつもなく驚いてしましました。隙がないと言いますか……下手をしたらレッスンの先生よりも実力が上ではないのでしょうか。軽く三人で歌っただけでもあれほどの表現力と理解力の速さは本当に同い年の女の子かと疑ってしまいます。

　私がメンバーの前に立つリーダーとしてはあの子はその地位を脅かすのには十分な実力がある。まだ、ダンスの方は転んだり倒れたりと未熟ですがこれからの努力次第では彼女がメンバーの頭となるのも現実的なことではないかと分析します。

　だが、よく考えてみればルックスは私の方が絶対に上。身なりもあんまり気を使って無さそうですし――やはり、よく分からない子というのが妥当な評価でしょうか。

　ちょっとガサツなところがありましたし、今日も座っている時にスカートからショーツが見えてました。私の周りではレディーがやったらとてつもない大目玉を喰らうことばかりです。

　ライバルに身だしなみの極意を教えるのは納得いきませんが傍観してられません。ここは不本意ながらもレディーの嗜みというのを教えていかなければ――彼女もその提案に乗ってくれたので次回から始めていきましょう。

　では、総括して今回は私のリーダーとしての地位はしばらくは安泰という感じでしょうか。あの銀髪の二人はどうなるかは現時点では青木様は何もお答えにならなかったので分かりませんが、三人の中ではトップの実力が私にあると確信しました。

　そろそろもう夜も遅くなってきました。日記はこれぐらいにしておきましょう。

　最後に天国にいる親愛なるお母様へ

　私は絶対にお母様みたいな素晴らしい方になると誓います。名誉あるスタンナード家の最後の末裔として、そして、世界的なミュージシャンだったお母様の娘としてこの生活に尽力を尽くします。

　私のこれからの成長を見守ってください。それと、もう一つ日本に来た理由。必ず、悪魔は我々の手で捕まえます。一族の使命も全力で果たさせてもらいます。それではおやすみなさい……