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第28話 初顔合わせ

最後に大切なお知らせがあります。よければ見ていってください。


 ずいぶんと個性的なメンバーが集まった。確かにトップを目指す大企業スターズが選抜したメンバーだから目立つ子たちが集まって来るとは予想はできていたが想像以上だ。


 まあ、音楽界に居た時もこういうかなりの変わり者さんたちと演奏することはあったけど結局はなんとかなったものだ。音楽とか美術とかの人間って変人は多いし何もおかしなところはない、結局は慣れの問題だよ。


 こうしてこの五人で練習したり食事を共にしたりと集団生活をやっていくうちに慣れていく。それにハーフの女の子たちと音楽をやるなんてどんな音楽ができるのか考えるだけでもぞくぞくする。


 最初はおそらくだけどバラバラなハーモニーを奏でるだろうが仲良くなるうちになんとでもなる――……と、この時まではそう考えていたんだけど……結果は悲惨たるものになった。


 その悲惨な事件はエレナさんと対面した後のミーティングの時間に起こった。この俺自身は長い音楽人生を送ってきたのだけどここまで火と油みたいな関係性のメンバーは初めてだった……


「じゃあ、さっそくだけど初メンバーでミーティングを始めまーすッ!!」


 遡ること一時間前。青木さん――いや、もう青木マネージャーと呼ぼうか。彼女が初顔合わせとこれからの練習などの予定を話すためにここ練習室三番に俺たち五人を集めた。


 部屋は小さな体育館のような造りをしている。五人で踊ったりするには十分な広さはあり、廊下側の壁にはホワイトボードが張り付いていて、反対側には大きな窓が設置してあって高層から街を一望できるようになっている。あとは音楽プレイヤーなどの道具が少々。


 そんなところに俺たち五人は横一列に並んで腰を落としていた。ちなみに俺は一番左端に座っていて右隣にはレティ―が妙に近い距離に俺にくっ付くかのようにして体を寄せている。


「なんか近くない?」

「ご、ごめん……ちょっと隣の二人があれで……」


 苦笑いというか乾いた居心地が悪そうな愛想笑いをこちらに向けてくる。なんだ? と思い背中を反らして彼女の後ろの方を見るとそこには睨み合う金髪と銀髪の影が。


「…………チッ」

「なんですか? 舌打ちをしたのですか?」


「ええ、そうよ、アンタたちが気に食わないから」

「奇遇ですね。(わたくし)も一目見た時から感じの悪い子だなって思ってたのですわ」


 尖った牙のような憎しみに満ちた眼光を向けてくるエリザさん。それに対して表情一切変えずに涼しい顔をして言いのけるエレナさん。ひえぇ、女の子って怖いな……男でよかった。


「ふんっ! 何が私は高貴なるイギリス貴族よ? バッカじゃないの~?」

「庶民には分かるはずがありません。この高貴な血筋の人間を前にそのようなことを」


「口ばっかりね。どうせ名誉だけで中身は大したことないんでしょ? 没落貴族さん」

「さあ……? ――と、だけお答えしておきます。だけど、これだけは言い切れますよ。貴女よりは何倍も上を行きます、その大口を叩けるのも今だけでしょう……」


 白熱する二人の口喧嘩。バトルが熱くなっていくたびにレティーは隣に居るエレナさんから遠ざかるようにこちらに寄って来る。思えばここで止めておけばああはならなかったのかもしれない。


 だが、俺は何もしなかったレティ―とこの二人のやり取りを蚊帳の外から何も言わずに傍観しているだけだった。内容がアレだし二人の間に入ったら両方からなんか言われそうだし話し辛い状況だったからだ。


「あぁ、こんなんで本当に大丈夫なのか……?」

「二人とも怖いよね。仲良くすればいいのに」


 独り言で言ってたつもりだったのに聞かれていたのか小声でそう返してくるレティー。彼女も心配そうな表情を浮かべて二人のやり取りをジッと見守っていたが、喧嘩がさらに白熱してくると申し訳なさそうにこっちに顔を向けた。


「ごめん、ノアちゃん。もう少しだけそっち行ってもいい?」

「へ? うん、いいよ。俺も離れたいから少しだけあっちの方に――」


「ううん、いかないくていい。そのまま動かないで」

「――ん? ど、どういうこと?」


 言っている意味が分からなくて唖然としてしまうがレティーは構わず俺に身を寄せてくる。動かないでって言われたから動いてないけど――……これ、密着っていうよりか完全にレティーに半分は抱き抱えられてる……よな?


 目と鼻のすぐ先に来た彼女の顔を見ると「えへへ」と恍惚としただらしない笑みを浮かべていた。もしかしてこの子も結構な変わり者なのかな……? あっちの二人に比べたら可愛いもんだけど。


「もしもーし! 完全に私のこと忘れてない? お嬢さんたち」


 完全に注意を三人に向けていたから気づかなかったけど、青木マネがミーティングのこと話していたの完全に忘れてた! 突然、話しかけられて驚いた俺はさまざまなスケジュールが書かれたホワイトボードの前に仁王立ちする青木さんの方へと急いで目を向けた。ここに来てやっと喧嘩が止まる。


「もう! 大事な話なのよ? いつまでもずっと子供じゃないんだからちゃんと話は聞いてよね。エレナとエリザは喧嘩を止めなさい。ノアとレティーもキャッキャッしてないで聴いてよね」

「は、はい……すいません」


 彼女にそう言われて俺は素直に謝る。レティーも「ごめんなさい」と続けて頭を下げたがエリザとエレナはへそを曲げたかのような表情をしてそっぽ向いてる。本当にプライドが高い人たちなんだな。青木マネもそれを見てヤレヤレと肩をすくめる。


「はあ、先が思いやられる……ちゃんと聞いててくれたのはサラちゃんだけだよ……」

「ごめんなさい。私もボーっとしててあんまり聞いてませんでした」


「えー! じゃあ。ここまで話してた私が――はあ……もう、いいわ。もう一度だけ言うからしっかり聞いてよね!」


 大きな声とため息とともに青木マネは赤色のマーカーに持ち替えてホワイトボードに重要なところに捕捉を入れるようにして書き込んでいく。


「じゃあ、今日はとりあえず簡単なストレッチと歌唱をやります。練習着は支給しますのでそれに着替えてください。着替えは三番ロッカー室のとなりにある更衣室でお願いします。今日は簡単なことだけど翌日からは本格的な練習を行います。基本的、基礎的なことから――……」

「青木さん、ちょっといいですか?」


 順調に話していたがそこに割り込むかのようにしてエリザの声が割り込んでくる。ん? 何か質問でもあったのか? 青木マネもそのように思ったのか別段何か疑うこともなく「いいよ、言ってみて」と口にする。


 エリザはそれを聞いた後に「はぁ……」と大きなため息とともに立ち上がり、俺とレティー、エレナさんを心から見下したうざったらしい表情をしたあと、青木マネの方を向いて質問する。


「練習ってどんなことをするの?」

「まあ、簡単な運動みたいなモノよ。歌の方も簡単なヤツを」


「じゃあ、明日の本格的な練習って?」

「講師の方を呼んで五人でチーム練習よ。ダンスとか振り付けもみんなで考えたりとか歌の方も実践的なレッスンをしていくわ。本番のことを見据えた本格的なことをしていくことになるね」


「ふ~ん、じゃあ、私とサラは一緒にやる必要はないわね」

「えぇ、そう――って、ちょちょっと!? な、何を言って――」


「だって、私とサラは経験を積んだ熟練者よ? アイドル初心者と合わせて練習するよりも私たち二人はレベルにあった練習をした方が効率がいい方に決まってるわ」

「だ、ダメっ! 貴方たちはチームなのよ? 五人で息を合わせてやらないといけないのよ!?」


 自分勝手なことを言う彼女を必死に説得しようとする青木マネ。初めて会った時からとんでもない人だと思っていたけどこんなことを表情一切変えずに言い切れるなんて……ヤバい子だ。


 理解できない。青木マネの言う通りこれはチームプレイだ。確かに個人個人のレベルが高かったらぶっつけ本番で合わせてもそれなりに上手くいくだろうけど、やっぱり音楽を合わせて五人の特色を合わせる練習というのは絶対に必要になってくる。


 それが普段の練習以外の人間関係だったり、個人個人がいったいどんな人間でどんな考え方をするのかといったことを仲間内でお互いに深く理解し合わないといけないことだったりと、決して個人のレベルアップでは補いきれないチーム全体で何かをするということ。


 特にアイドルとなればそういうことは一番大事になってくると思う。だけど、この子はそのことが分かっていないのか? 本当に俺たち三人と違ってずっとアイドル事務所に身を置いてきた人間なのか? さっきの発言を聞くと疑わずにはいられなかった。


 悲しい? 怒り? 自分でもよく分からない顔をして彼女の方を向くが何も変わらない。唖然とした表情をしているレティー、明確に怒りの表情を浮かべているエレナさんに対してこう言って見せた。


「チーム……ねぇ。私はこの三人はまだ認めたつもりではないんですけど……?」

「なんてこと言うのッ!? いい加減にしなさい!」


 ついに青木マネが怒ってしまって怒声を響かせるがなんともないような顔をする。流し目で俺たち三人、青木マネの顔を確認すると座っていたサラさんの手を引いて立たせる。


「行こ、私たちだけでやりましょ?」

「エ、エリザちゃん……」


 サラさんは申し訳なさそうにしていたがエリザは眉一つさえ動かさない。二人は部屋の出入り口に向かってとぼとぼと歩いていく。それを見ていた青木マネは二人の背中に向かって再び部屋に声を響かせる。


「ど、どこに行くのッ!?」

「いつもみたいに個人練習。簡単なヤツはそこの三人だけでやってて」


「エ、エリザ……貴女、もしかしてまだあのことを……?」


 何を言っていたのか聞こえなかったが青木マネは何かを呟いた。彼女は止める気はないのか泣きそうな顔で事の成り行きを見守っていた。だが、俺も傍観ばかりはしてられない――いや、こんな行為は絶対に見過ごしたらダメなんだ。


 誰も止めない。じゃあ、自分だけでも止めてやる。俺は颯爽と立ち上がり駆け出すと二人が向かうドアの前に立ちはだかり二人の進行を邪魔する。


「どこにも行かないでくださいっ! 五人で練習しましょうよ!」


 出ていこうとする二人は俺を見て歩みを止めた。エリザは邪魔する俺に対して苛立ちを押えられないのか怒りを露わにして鋭い眼差しをこちらに向けてくる。


「ホント、ムカつくわねアンタ。ちょっと音楽ができるからって調子に乗らないでくれる?」

「調子になんか乗ってません。五人で曲を合わせるのならそれはチームプレイと同じです。五人で練習しないと意味がないんですっ!」


「そんなことぐらいは知ってるわよ。でも、私はアンタたちが気に食わない……一緒に居たくないのよ? 分かる? それにアンタたちが私たち二人に着いてこれるわけない――分かったなら早くどいてよ」

「いいえ、絶対にどきません! 全員で練習するまで」


「…………ホントにうざっ」


 唾を吐き捨てるかのように俺のことを見下すかのような言い方。だけど、こっちだって引き下がりたくはない。こんな彼女でもチームはチームだ。間違っているなら仲間として正してあげたい。


「考え直してみませんか? 俺たち三人と練習――」

「ホントに邪魔ねアンタ……どきなさいって言ってるのよッ!!」


 部屋全体をビリビリと響かせるほどの怒声。それとともに俺の体に大きな衝撃が走りバランスを崩した俺は地面に投げ飛ばされる。


「――きゃあっ!?」


 自身の口から出たとは思えないか弱い悲鳴を上げて床に倒れる。その直後にドアが開閉する音が聞こえたことから二人はきっとこの隙に出て行ってしまったのだろう。いてて、まさかここまでしてまでも一緒に居たくないのか……はは、本当に大丈夫なのかよ。


「怪我してない? ノアちゃん……?」

「あ、無事です。ちょっと腕が痛いですけど」


 俺の身を心配して青木マネが駆け寄ってくる。手を貸してくれたので掴まるとそのまま立ち上がる。彼女はドアの奥の方を見るように睨んでいた。


「ごめん、さすがに今回のは怒ったわ。私、あの子らの方に行ってくるから貴方たち三人で練習してて、そこにある紙にメニュー書いてあるからよろしく!」


 そう言うと風のように部屋から出て行ってしまう。呆然と立ち尽くす俺のそばに今度はエレナさんとレティーが歩み寄ってくる。


「とんだお人よしさんですね。私はあのような不届き者にそこまでしようとは思いませんわ」

「ノアちゃん、大丈夫?」


「大丈夫だけどまさか、突き飛ばされるとは……」

「暴力なんて品のない方たちです。私の方から練習のご一緒するのはお断りしたいですわ。あの方たちとか関わるなんて言語道断……ノアさん、レティーさん、私たち三人だけでやりましょう」


「うん! 私も暴力をやる人たちとはやりたくないよ。三人だけでやろ!」


 一連のやり取りを見て二人は完全にエリザさんとサラさんに愛想を尽かしてしまった様子だ。あっちのみ関わらずこっちの二人も彼女らに悪印象を持ってしまっている――……こんなんじゃあ、音楽を合わせることなんてできるはずない……いったいどうしたもんか……

 とても長い間待たせてしまって申し訳ありません。修正と投稿再開の予定が立ったので再び今日から本格的に再開をしていこうと思いますので改めてよろしくお願いします。


 さっそくですが、なろうの運営様にお問い合わせしたところ各話の部分の消去を行っていいということなので一部のエピソードを訂正と消去をさせていただく予定でございます。いきなり消してしまうと驚くと思いましたのでここで報告させていただきました。修正予定日は三日後の27日を予定しています。それまでにこの修正前のお話を保存などしておきたい場合はそれまでによろしくお願いします。


 今後はこのような急な修正などをして混乱させないようにしっかりとしていきます。これからも本作の方をどうかよろしくお願いします。

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