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第24話 ブロンズ髪の少女

 毎日更新を掲げていたのにサイレント外しをした挙句に、こんなにも更新が遅くなってしまってすいません。

 大きな事情があってこうしないといけなくなってしまった理由があります。詳しくは後書きに書かせてもらいますのでどうか見ていってください。


 あの女の子という辛さを体験した翌日のこと。寝起きのボーっとした重い頭を引っ提げてスターズプロダクションの事務所を目指していた。


 ニコニコとスマホ片手に電話をするサラリーマン。楽しく笑顔な小さな子供連れの母親とその子供。小鳥たちの朗らかなさえずり。


 オーディションの日とは違ってなんだか景色が変わったように目に焼き付かれた。どれもが楽しそうな景色。日常という穏やかな景色。見ていて自然と微笑んでしまいそうな景色。


 不思議なことにポジティブな光景ばかりが目に入った。どこからともなく吹いてきたさわやかな風がゆらゆらと俺の金髪を揺らす。いい気持ちだ。


 ――でも、考えてみたら昨日はあんなことがあってあんまり合格した実感はなかったのになぁ。


 昨日のあの出来事のことを思い出す。ひたすらに怠くて大変で合格という文字が頭に浮かび上がることすらなかったこと。合格という現実を受け止めることができなかったこと。


 だけど、こうして体調が戻っていざ通うことになると、青空で存在感を放っている太陽のようにメラメラと心が燃えて、新しい生活を想像し胸を激しく躍らせる。


 いったい、どんな子がいるのか?


 どんな人とこれからを共にするのか?


 どんな練習やステージが待っているのか?


 俺はこの青い気持ちを持って大きく一歩一歩と足を踏み出す。まるで、栄光を掲げた軍隊の行進のように進んでいった。


 事務所へと続く歩道をリズミカルに歩く。レンガで敷き詰められた舗装されたタイルを靴音鳴らして叩く。


 ビルとビルの狭間を進み、しましまの横断歩道を渡って、いい匂いが漂ってくるパン屋さんの前を進む。


 バターと小麦粉の甘くて香ばしい匂いが鼻を掠める。凄く美味しそうだ。


 足を止めて出来立てと書かれた看板が掲げられたお店を目にする。そこにはお客さんが群がるように集まり列を成していた。


  ……ぐうぅ――あっ、お腹が鳴った……朝ごはんまだだしカレーパンとかあるかな?


 ブンブンと首を振ってお腹が鳴ったことを周りの人に聞かれてないかを確認してから、ネズミのように群がる人の間を掻い潜ってそそくさとお店の前に置いてある看板まで移動する。


 ――えーと、フランスパンやクロワッサン、たまごパンにピザもある! カレーパンもあるか……! 時間はあるし買っていくのもいいかも。


 香ばしい匂いに包まれながら「う~む」と顎に手を当てて唸る。ここまで匂いの下に晒されたらもう俺の胃袋は耐えられない。「よし、買うか」と即決。


 ひょいとお店の入り口から伸びているそこそこに長い列に並ぶ。


 思わず涎が垂れてしまいそうな香りの中、パンに噛り付いている自分を妄想する。初めて来る店だからいったいどんなパンがあるのかとても楽しみ。特にカレーパンの味が。


 「むふふ」と奇妙な笑い声を唇の間から漏らす。まるで、何か野望を抱いている悪役のような願望に溢れた怪しげな笑み。


 出来立てパン。意識しなくとも口の中が食物を求めて唾液が溢れてくる。この時の俺はどんな顔をしているのだろうか? きっと、ニタニタと汚い笑みでも浮かべているのだろう。


 ……今からアイドルになる人間なのにねぇ。パン一つで涎を出しそうになってるなんて我ながらだらしないなぁ。


 ――と、自嘲的なことを考えていたその時。俺の後ろに一人の女の子が列に付いた。


 「ん?」並んできた子に不思議なものを感じて振り向いた。普通ならスルーするが後ろの彼女は目立つ要素を持っていた。


 ――……あ、この子。日本人じゃない……のか?


 一瞬、少女の綺麗なブロンズ色の髪の毛が目に入ってそう思った。だけど、顔つきは完全に日本人で黒い瞳と高くない鼻と欧米の顔ではなかった。俺も目は青いけど顔は日本人っぽいけどね。


 んー、ただ単に髪を染めているだけなのかな? でも、地毛っぽいし……


 ジロジロと彼女の容姿を観察する。身長は今の俺よりも少し大きいぐらい。まあ、あまり背丈は差異はない。でも、体つきは俺よりもがっしりしている。


 ひょろひょろな俺とは違って健康的な体つき。きっと、運動とかちゃんとしてるんだろう。


「……? 私の顔に何か付いてますか?」

「あ、い、いえ! すいません! なんでもありません! すいません!」


 普通に流暢な日本語が飛んでくる。てか、すっかり相手の顔をジッと見過ぎた。苦笑いを浮かべて困っている彼女に対して何度も頭を下げる。


 少女は首を軽く傾げて銅色の髪を揺らす。その後、頬の筋肉をゆるりと緩めて笑顔を作る。


「そ、そんなに謝らなくてもいいですよっ!」

「……そうですか? 髪の色が気になってつい――」


「あ、あー、これですか? 確かに目立ちますもんね。って、私的には貴女の方がもっと目立つとも思いますけど? 目も青くて綺麗だし」

「は、あはは……ですよね。こっちの方が目を引きますよね」


「ホント、羨ましいです。私のなんてほら……くすんだ色で」


 肩に掛かるぐらいの長さのブロンズの髪の毛を掴んで、見せつけるようにゆさゆさと握っている手を振る。羨望の眼差しと悶々とした表情をこちらに向けてくる。


「いやいや、そんなことないですよ。綺麗じゃないですか?」

「でも、私の母は貴女みたいな綺麗な色で――……あ、あの、貴女って何人なんですか?」


「私ですか? 日本人――まあ、半分はドイツ人ですけど」


 生まれはドイツ(あっち)だけど完全に日本(こっち)で育ったのであくまで日本人と言っておく。でも、唐突だな。出身を聞いてくるなんて。


「ドイツ……! ハーフだったんですか!? 余計に羨ましいです。私も同じなのに」

「同じ? 貴女もドイツ人なんですか?」


 気になった発言だったので聞き返してみる。彼女は「いえいえ」と手の平をこちらに向けて軽くジェスチャーをすると、誇るように何かの発表をするかのようにこう言った。


「私はフランス人――日本人とフランス人のハーフです!」

 まずは今回もここまで読んでくださりありがとうございます。投稿してない間もたくさんのブクマや評価、誤字脱字報告などのたくさんの応援をありがとうございます。


 前書きに書いた通りになぜ更新が遅くなったことの理由ですが、前々から音楽関係で歌詞を消したり表現を曖昧にしたり等の修正をしていたことはご存じな方はいられると思います。事情というのはそれに関連するものです。


 全ては言えませんが先日。権利的、法的なものは全てクリーンにしたいのでなろう運営様に問い合わせをしました。


 結果だけ言います無事に回答(歌詞、翻訳歌詞、などは注意を払った方が良いとの内容)をもらい、内容と物語を照らし合わせた結果。既存のプロットを全て見直さなければいけないことになってしまいました。これによりプロット段階からの物語の見直しや表現のどこまでがセーフかの線引きなどを今の今まで考えていました。


 現時点ではある程度まではプロットを構築し直すことはできました。なので、ようやく執筆に入れたというのが現状です。今回の話の時点でもうかなり前のプロットは話が変わってしまっています。


 これでようやくドンドン書いていけます。と言いたいのですが、まだまだ未熟なところもあるので考えないといけないところもあります。非常に申し訳ないのですがまだ更新が以前ように安定するまで時間が掛かりそうです。


 また、今まで出した分も大幅に改稿する場合もあるかもしれません。音楽の著作権という曖昧なモノが付いて回る以上蔑ろにできない部分なのでどうかご理解とご了承ください。


 別作品に関しては問題ないので近々投稿予定です。そちらは投稿次第にお知らせしますのでどうか楽しみにしていてください。次回もどうかよろしくお願いします。

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