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第18話 オーディション当日!


「ノアさん頑張って! 絶対にミスしたらダメだからね?!」

「大丈夫だってそんなヘマするわけないだろ? 亜里沙もあとで()()()()()


 運転席に座っている亜里沙に対して言葉を投げかけるとウンと強く頷く。その様子を見た俺は微笑を浮かべて車の扉を出る。


「――じゃあ、行ってくる」


 彼女を心配させないように意気込んで得意げな表情を浮かべる。亜里沙は「ふふっ、吉報を待ってるね」と優しく微笑みながらそう言った。


 俺が落ちるわけないだろ。厳しい戦いになると思うけど頑張るさ……!


 そう決意すると――バンッ! と、扉を閉めて亜里沙の車を後にした。しばらく歩かないといけないが亜里沙のおかげでそこまで距離はない。


 行くぞ! と、街の中を歩いてスターズプロダクションの事務所の方へ向かって大きな一歩を踏み出した。もはや通行人の視線は今となってはある一種のステータスだと思ってしまう。


 少し前までは恥ずかしい視線だったんだけどな。今はどれだけ人を魅了できるかそれが求められる。今日は亜里沙に頼んで勝負服も用意してもらったしな。


 ビルのガラスの扉に反射して映る自分の姿――大胆にドレスとかでも良かったんだけど、アイドルはそれはあんまりイメージに合わない。


 というわけで今回は膝丈のプリーツスカート。上は可愛らしいフリフリとリボンがたくさんついた男を可愛さで魅了するには充分な女の子百点満点な服。


 靴も綺麗な真っ白な傷一つないスニーカー。年頃の女の子が着るには充分な服装だと思う。あとはこの金髪の髪とサファイヤブルーの宝石のような瞳があれば鬼に金棒といった具合だ。


 ふふっ、男どもよ俺に見惚れるが良い! こんなにかわいい子はまったくお目に掛かれぬぞ。ははっ、どーだどーだ!


 もはや街の中でもファッションショー。それだけ今俺は容姿に自信があった。


 あの女になった日から自分のことはかなりの上玉だったしこれを使わない手はないだろう。確かに、鼻の下を伸ばしたような視線は嫌だけど仕方ない必要な犠牲というやつさ。


「――……おっ! やっと見えてきた……」


 しばらく歩いていると大きなビルが見えてきた。その周りにはホール練習施設などが並んでおり都会の地にこれだけの敷地を確保するだけあってこの事務所の大規模さが見るだけでも感じられた。


 本当に大きいなぁ――まさに栄光の地って感じ。えっと、確かビルの一階で受付をしたあとに指示に従えだっけか……?


 ここに来る前に言われたことを思い出すと敷地内で一番存在感を占めている巨大ビルへと足を踏み入れた。中はエアコンが起動して居心地は良かった。それにしても本当に広くてここだけでも軽くステージ発表できるんじゃないか? 知らんけど。


 そうしょうもない感想を抱くと受付と思われるところを探す。練習できるように時間よりも早く来たから大丈夫かなぁと思っているとスーツを着た女性の事務員がこちらに歩いてくる。


「おはようございます。ご用件はなんですか?」

「はい、スカウトを受けてオーディションを受けに来たんですが……」


「あら、随分とお早いんですね? ふふっ、張り切ってますね! 応援しますよ!」

「あ、ありがとうございます!」


 お姉さんにそう言われて素直に嬉しがる。きっと彼女から見たら俺が男なんて分かるはずがないだろう。自分は男だと思ってるのに相手からはそう認識されない変な気分だ。


「では、ご案内します――お名前を伺ってもよろしいですか?」

「はい、姫川望愛(ひめかわのあ)です」


 自分の本当の名前を彼女に教える。オーストリア生まれだとしても日本人の父は日本人の名前を望んだ。それで母の提案によりどちらでも通用する望愛という名前を付けられた。


 望愛――実はこれ女だから望愛に変えたとかじゃなくてもともとこんな名前なのだ。男の時はすっごくいじられたなぁ。今はこの名前がしっくりする名前になっちゃったけどな……あはは。


「――確認ができました。今から番号カードと控室に案内しますので受付の方まで来てください」

「はい、分かりましたっ」


 彼女にそう返事を返すと誘導されて受付を簡単な用事を済ませる。俺の番号は三十番らしく面接や発表などの時に全てにおいてこの番号が適応される。


 自分の左胸にも三十番と示される番号が掛かれたプラスチックのプレートが留められた。


「――では、一度外に出てもらって練習ホールに向かってください。そこに控室がありますので」

「了解です。それでは失礼します……」


 おじぎをして礼を言うと指定されたところに向かう――そんな時だった。


「ふ~ん、アンタ逃げずにオーディション受けに来たんだー」


 聞き覚えのある高飛車な声が耳に入った。後ろを振り向いて声の主を確かめると予想した人物が立っていた。銀髪に水色の瞳に俺よりも白い雪のような肌……


「ド、ドリンクバーの時の……」

「覚えておいてくれてありがとね?」


「あんなこと忘れるはずない――」

「『ちゃんと覚えています。先輩』でしょ? だーかーら、私の方が年上で先輩なの? 分かった後輩ちゃん……?」


 相変わらず俺に対する当たりが強いなこの子。逆にこの度胸がアイドルには必要なのかもしれないけど。それにしても、ちょっと態度がでかすぎないかこの子……?


 相変わらず直そうともしない態度に半ば呆れていると銀髪の子がずかずかと俺の方までやって来る。


「まっ、貴女が後輩になることはないと思うけどね」

「どういうことだよ……?」


「敬語!」

「ど、どういうことですか?」


 なんでこの子はこんなにも年齢にうるさいんだよ? 年功序列の化身かなんかか?


「そのままの意味よ。貴女はオーディションに受からない……だって、見たでしょ? あの課題曲」

「は、はい……思ったよりも簡単でしたけど――」


「……え?」

「――ん?」


 なんだ? 上手く話が噛み合わない。彼女は俺の発言を信じられないという目つきで見てくる。


「バ、バカなこと言わないでよ! だってあの曲は前回のよりも難しいのよ? もしかしたら、貴女そんなことも分からないぐらいに下手なのかしら?」


 まるでゴミを見るかのような目をして大声を出す。何人かの職員は俺たち二人に釘付けになってる。反論しようとしたが彼女はくるりと背を向けると――


「ちょ! ちょっとはその度胸に免じて認めてあげたけど撤回よ! 貴女が落ちて泣きべそをかいてる姿を楽しみにしてるからね。せいぜい無様な姿を見せてね!!」


 そう捨て台詞を放つとどこかに行ってしまった。本当に良く分からない子だ……

 今回もありがとうございます。ブクマなどもたくさんもらって創作活動がとても楽しいです。本当にありがとうございます。


 次回からオーディション本番になります。久しぶりに主人公の本領発揮となるので必見でございます。どうか次回もよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 物語の始まりは、今後どう展開していくの、いつもワクワクします。 素敵なお話、ありがとうございます。
[良い点] 頑張れー。次話待ってます。
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