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第16話 朝食と考察


「――まさか、ヴェラさんを送り込んでくるなんて」

「だろ? 連合会もアイドル認めてくれたって変な話じゃないか?」


 押し入れから出したちゃぶ台を亜里沙と二人で囲む。台の上にはコンビニで買ったおにぎりやサンドイッチが並べられている。


 これは先ほど近所のコンビニで買ってきたものだ。ちなみにヴェラは『日本観光してくる』といって亜里沙が目覚める前に早々と出て行ってしまった。マイペースなヤツ……


「もぐっ――で、なんで代表がそんな面倒くさいことをやったかってこと。だって、もう俺とアイツらは関係がないし、戸籍上、女としてはもう他人の他人。それなのにわざわざ俺に関わって来るなんて……」

「分からない。でも、きっと何か理由があるからだと思う。」


「理由?」

「うん、といっても何があってそうしたのかまでは分からないけど、理由がないとこんなことはしないよ! 何か重大なことを隠していたりとか……」


 亜里沙が思わせぶりなセリフを吐いた。「どういうことだ?」と、訝し気に尋ねると野菜のスムージーをチューとストローで吸ったあとに答える。


「具体的には分かんない。でも、現状彼らはノアさんと関わってもなんの利点もない。じゃあ、もしかしたらメリットとかデメリットとか考えてなくて本当にノアさんのことを応援したいから使いを派遣したんじゃないのかな? 打算だけで人間が動くわけじゃあないし……」


 亜里沙の考察に「はー」と納得がいく。だが、どこに居ても連合会の影響下からは逃れられない。なんかストーカーされてる感じにも思えてきて嫌に感じる。


 さてさて、どうしたものか……さまざまな考えを思い浮かべながら冷たいオレンジジュースを口にする。甘酸っぱい味が口の中に広がった。


「とにかく今はオーディションに集中しましょう!」

「そうだな。ふふっ、考えただけでも楽しくなってくるな」


 二人でお互いにこれからのことを妄想して話はより深みを増していった。しかし、俺たちはこの時は気づかなかった。俺が日本のさまざまな業界に多大な影響を与えることを――この時の俺らは知る由もなかった。

 今回もご愛読ありがとうございます。ブクマや評価もたくさんもらって嬉しい限りです。

 次からは練習へと入っていきます。本格的に第三章が始まります。必見ですのでどうか次もよろしくです。

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