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第9話 おいおい、俺は見世物じゃないんだけど?


 夕方の黄昏色に染まる街。朝から女になってしまうというこの世のものとは思えない珍事に直面したはずの今日。俺がどうなろうと日本の町は相変わらず安寧の様相を見せていた。


 だが、一つだけいつもとは違う現象が俺を襲っていた。それは――


「おい、なんかこっちジロジロ見られてないか?」

「当たり前よ。こんなに綺麗な金髪で青目の白人美少女なんて普通は目立つに決まってるでしょー? ……でも、一緒に歩いているこっちも落ち着かない気分になるわね」


 亜里沙と俺は辺りを見回しながらそう言った。その変な現象とは周りの人たちの眼差しのことである。地方都市といってもそこそこの人口はある。かなりの人数の男どもの赤い視線――いや、女の視線も多い……なんで街を歩くだけでこんなことに。


「なあ、早くその予約した店に行こうぜ? 町の中を歩くのすら疲れる」

「賛成! この後の予定もありますし急ぎましょ」


「おっし……って、予定? なんのことだ?」


 首を傾げてそう尋ねると「ふふっ、あとのお楽しみ」と言ってこの話は終わった。


 それからは特に会話もなく歩く。急ごうと言ったので亜里沙も歩くことに集中しているのだろう。俺も慣れないスカート姿だけど、一生懸命亜里沙についていくが……気のせいかいつもよりも移動に体力を使うような気がする。


 さっき歌った時も肺活量が減ってた気がしたし、もしかしたら結構なハンデが男の頃に比べてあるのかもしれない。そうなると、一から体を鍛えなおさないといけないのだが……面倒くさいなぁ。もう……!


 歩きながら腕組をして顔をしかめる。通行人は相変わらず俺たちをチラチラと見てくる。男の時にもハーフだから注目は浴びたけど前とは比べ物にはならない量。


 車や人が大量に移動する街のなかの移動だ。ただでさえ疲れるのに……「ぐぬぬ」と時折、歯ぎしりや通行人と顔が合わないように逸らしながら歩く。でも、なんかやけに今日は人が多いような……?


 いつもより人間の数が多い。考えてみれば車の量も多いぞ? なんだこれ? 休日にしてもおかしいだろこの量? やっとのことで駅前のお目当ての料理屋に着いたが……これはなんだ?


「ふぅ……やっと着いたよ!」

「そうだな――……なあ、なんか人多くないか?」


「ん? あー、今日は人気女子アイドルがなんか近くでライブしてたらしいよ? そのために人が集まってたんじゃない?」

「ふ~ん、そっか……」


 理由が分かって一つの疑問が解消される。アイドルか~同じ舞台で音楽とか発表するのは同じだろうけどやっぱり見る景色が違うんだろうなぁ……正直、なってみたいぐらいだ。半分ぐらいは冗談だけど……もし、やれるなら……ねぇ?


 歌って踊っている女の子を想像して妄想に入り浸る。どうせ、今は音楽家としては生活できないんだし、暇だから新しい夢に向かうのもいいかもな~。そんなに簡単に成れるものじゃないんだろうけど。


 そう思いながら俺たちはここら辺で人気のイタリア料理屋へと足を踏み入れたのであった。まだ、この時の俺はあんなことになろうとは知る由もなかったのであった――

 まずはブクマ100ありがとうございます!! まさか、こんなにもたくさんの人に見られるなんて本当に感謝です! 改めて評価とブクマ、たくさんありがとうございました! まだ、未熟ですがこれから腕を上げてご期待に答えられるように頑張っていきます!

 今回からですが新しい話に入りました。はじめは導入といった感じですね。これからは物語がついに本格的に動き出すという感じでございます。今までの章と違い中核的なモノになるのでそこそこ長めになると思います。

 最後に何度も言いますが本当にありがとうございました! 心からとても感謝しています……!

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