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012-上裸導きし、星。

「しかし、敵のレパートリーが少ないな」


 それからも変わらず定期的に現れるホーンウルフを片付けながら道を進んでいたのだが……不意に、ホーンウルフ以外のモンスターと遭遇していないことに気付いた。

 まあ、このホーンウルフという連中、中々に動きは素早いし、攻撃してくる瞬間までは不規則な移動を続ける他、頭数が増えれば時間差の攻撃や同時攻撃などの連携も取ってくるので、こんな最序盤に初心者が相手取るとしたら結構な難敵だろうので、十分といえば十分か。

 街中のNPC達の話を聞く限りでは、より『極北天の神星骸(ポラリス)』に近付く程―――〝層〟が上がる程―――モンスター達も強力、狂暴、多様になる……ということでもあったし、やはり『角獣の神星骸』……ならびに、キャラメイクにて選べた他の5種の神星骸こと『第一層』はチュートリアル扱いということだろう。


「……ん?」


 普段であれば多少は物足りなさを覚えたところだが、いまは事情が事情のため、むしろ有難く感じ……そういうことならとっとと【減重】の星痕を手に入れさせてもらおう、と歩む足を速めようとしたところで。


「こいつっ……くそッ! ちょこまか動くなっての……!」


 恐らく『角獣の神星骸』へと続いているのであろう道から少し外れたところで、4……5、6体ほどのホーンウルフに囲まれた様子のプレイヤーを発見した。

 ……プレイヤー?

 そういえば、ここに来るまで全く見なかった……発売から半年経ち話題性も無くなりすっかり過疎ったマニアクスのように。

 だが、『角獣の街』には発売直後のマニアクスでも中々見られない程度にはプレイヤーがごった返していたので……どうにも、狩り場でのトラブル(EXPも金銭も稼げないこのゲームで狩り場の概念があるかは微妙だが)等を回避するため、モンスターが出現するエリアではマッチングするプレイヤーの数を制御しているようだな。

 となると、今度はこのプレイヤーと俺がマッチングしたのが不思議だが―――いや、不思議でもないのか。

 どう見ても彼は窮地に陥っていて、俺はここに来るまでホーンウルフ達を虐殺に近い形で処理してきている。


「……星の導き、とでも言ったところか」


 ようは助けてやれ、ということなのだろう。

 ……まあ、そんな義理は全くない上に、俺は別にゲーム内なら目の前で人が死んでも気にならない性質だ。

 なにせ、基本的にこいつらは全員マニアクスをクソゲーと呼び捨てる存在だからな。

 どんな形であれ生まれてしまった命を容易く唾棄する連中など、ゲーム内ぐらいなら死んだとて問題あるまい。

 とはいえ―――。


「おい! 良ければ手を貸すぞ!」


 ―――だからといって救えるものを救わなければ、それこそ俺もマニアクスをクソゲーと吐き捨てる連中と同じになってしまうのも、また事実。

 誰かに優しさを求めるならば、まずは自らが誰かに優しくするべき……父のそんな言葉を思い出しつつ、一応、オンラインゲームにおいて他者の戦闘に介入するのは横槍等呼ばれてバッドマナー扱いされることもあるため、ホーンウルフに囲まれている彼へと救援が必要かを問う。


「えっ!? うお……いや! 頼むわ! 助けてくれや!」


 すると、窮地のプレイヤーは俺を見て一瞬ばかり目を見開き硬直し、直後に首を縦に振った。

 …………。

 ……。

 今絶対俺の恰好を見て一瞬引いたよな?

 やっぱり助けるのやめようか……。

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