第20話 ただの友人同士ではないスキンシップ
それから、ショッピングモールに移動した私たちは、服屋や雑貨名なんかを見て回った。
あおいちゃん曰く、おしゃれアイテムというのは知っているだけで会話が広がるらしい。
そんな魔法のアイテムならと私はあおいちゃんにいろいろと教えてもらっていた。
そんなふうにウインドウショッピングをしていると、突然私たちの前を歩いていた知らない女子二人が自然と手を繋いだ。
「おおっ」
私はあまりにも自然なスキンシップの取り方に感動して声を漏らしてしまう。
特に声がけをすることない、理想的なスキンシップの取り方。
そこには不自然さも、いやらしさもまるでなかった。
あれが女子同士のコミュニケーションなのか……使いこなすには、難易度が高すぎる。
「ゆりちゃん、どうしたの?」
「女の子って、あ、あんなに自然に手を繋ぐんだなって」
私が声を潜めてそう言うと、あおいちゃんは私の視線の先を見て『ああ』と声を漏らして優しい笑みを浮かべた。
「まぁ、みんながみんなって訳じゃないけど、手を繋ぐ人もいるかな。そんなに驚くようなことでもないような気がするけどね」
そう言われて思い出して見ると、学校でも仲の良い女の子が手を繋いでいる所を見たことがある気がする。
あんまり気をつけて観察をしたことがなかったから、気づいていないだけで、学校って結構百合空間なのかな?
私がそんなことを考えていると、こつんっと私の右手にあおいちゃんの左手が当たった。
私はすべすべとしたあおいちゃんの手の甲の感触に、どきりとしてしまう。
私が大きくなった心臓の音を落ち着かせようとしていると、今度は二回あおいちゃんの手の甲が私の右手の甲を優しく叩いた。
……偶然ぶつかったわけじゃないよね?
そう考えてあおいちゃんを見ると、あおいちゃんは耳の先を真っ赤にしていた。
どことなく緊張感があるような雰囲気を感じて、心臓の音が大きくなっていくのを感じた。
もしかして、手を繋ぎたいということなのだろうか?
そんなわけがないことを考えてしまい、私はあおいちゃんを強く意識してしまう。
気がつけば、私はそんなあおいちゃんから視線が外せなくなっていた。
すると、あおいちゃんが私の視線に気づいてちらっと私を見た。
それから、あおいちゃんは私の耳に口を近づけると、内緒話をするような大きさの声で話す。
「ゆ、ゆりちゃん、私たちも手繋いでみる?」
「て、ててて、手⁉ ここで⁉ ひ、人多くない?」
私は妄想していたありえない展開に思わず取り乱してしまう。
私があわあわとしていると、あおいちゃんは前を歩く手を繋いでいる二人を見る。
「こ、恋人同士のスキンシップじゃないんだから、人前でやるのが普通だと思うんけど!」
「そ、そうかも、しれないんだけど」
私はあおいちゃんに釣られて、目の前で手を繋いで歩いている二人を見た。
確かに、あの二人は何事もないかのように手を繋いでいるし、周りの人もそれを見ても驚いてはいない。
……でも、なんとなくだけど、あの二人と今の私たちは雰囲気が違う気がした。
私の考え過ぎなのかもしれないけど、今の私たちが手を繋いだら、それは女子特有のコミュニケーションとは別物な気がしてしまう。
しかし、そんな私の考えに反するように、あおいちゃんは私の手の甲に自分の手の甲を当ててきた。
どくどくと心臓の音がうるさくなって、体温がぐんっと上がっていくのを感じる。
そして、私が緊張のあまり体を固くしてしまうと、するっと私の手のひらにあおいちゃんの手が滑りこんできた。
優しく握ってきた手のひらと、細くて長い指の感触に、胸の奥の方をきゅうっとさせられる。
「~~っ!」
私はあおいちゃんから伝わってくる体温から離れたくなくなり、弱弱しくあおいちゃんの手を握り返した。
「ゆりちゃん、顔赤いけど大丈夫?」
「だ、だいじょばないっ」
私がろくにあおいちゃんの方も見れずにそう言うと、あおいちゃんは小さく笑ってから私の手を引いてくれた。
私はゆりちゃんの隣で、目の前にいる手を繋いで歩く二人を見てから、ちらっとあおいちゃんの顔を盗み見る。
……とても、前を歩く二人と同じことをしているようには思えない。
これって、人前でやっていいことなのかな?
そんな風に考えてしまうのは、私があおいちゃんのことを意識し過ぎているからなのだろうか?
あおいちゃんの赤くなった耳を見ると、何となくそうではないような気がしてしまった。
そして、私は心の奥底でありえないことを願ってしまっている、自分の存在を強く感じてしまうのだった。
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