⑨⑧話 伊達藤次郎政宗到着
【時系列・原作書籍⑤巻・第四章・磐城巡察】
◇◆◇◆鬼庭左衛門綱元
お江の方様がお見えになったことでさらに警護が増え賑やかになった佐波古の湯街。
黒坂家の兵は町民に対して偉ぶらず丁寧に接する。
物を買うときも強引な値引きをしなく気前が良いと噂が広まり周辺の者が物売りに来て昼間は祭りでもやっているかのごとくの賑わいとなった。
しかし早朝は流石に静かで鳥のさえずりが聞こえる。
常陸大納言様が寝起きの湯に浸かる前に風呂場の確認を済ませ自室で腹ごしらえをしていると馬の蹄の音。
しかも十数頭と思われた為、槍を手にして慌てて外に出ると殿だった。
「どうやら足止めを上手くしていてくれたようだな左衛門」
「はっ、一週間ほど佐波古の湯で湯治をして待つと常陸大納言様がおっしゃっていただきまして逗留の運びとなりました」
「そうであったか、祝着である。で常陸大納言様はまだお休みか?」
「今の刻限だと朝の風呂かと」
「随分早くから風呂に入られるお方なのだな・・・・・・よし、風呂から出られたらすぐにお目通りを願おう」
埃まみれで髪も乱れている殿に対して片倉小十郎景綱が、
「殿、身なりを整えませんと」
「そうであるな、近くの宿で身なりを整えるか、左衛門用意致せ」
「はっ」
伊達家が使っている宿屋にすぐに案内し、私は朝風呂を済ませ朝食を食べている常陸大納言様の所に向かった。
「失礼致します」
「ん、入って良いよ」
「はっ、失礼して」
部屋に入ると常陸大納言様とお江の方様が朝食を食べているのはわかるが、小糸小滝姉妹も一緒に朝食を食べているのに驚いたが今はそれどころではない。
「朝食の最中に失礼して申し上げます。仙台より伊達藤次郎政宗到着。常陸大納言様にお目通りのお許しをいただきたいと申しております」
「はははははっ、会うために待っていたんだから許しもなにもないよ。好きにしていいよ。仙台から早馬で来たんでしょ?温泉浸かってしっかり疲れ落としてからで良いよ。なんなら一眠りしてからで構わないよ。あ~そうだ、夕食をともにでも」
「そんなもったいなき御言葉ありがたき幸せ、殿に代わって御礼申し上げます。いまの御言葉そのまま殿に伝えさせていただきます」
殿にそれを申し上げると、常陸大納言様をこれ以上待たせるのは心苦しいとおっしゃったため昼前にお目通りの運びとなった。




