⑧③話 黒坂真琴伊達領へ・いわき湯本旅編
【時系列・原作書籍⑤巻・第四章・磐城巡察】
勿来から北に進み、鮫川を渡り海岸線から離れ佐波古の湯に向かう。
この道は、佐波古の湯と小名浜城、そして我が磐城平城を結ぶために切り開いた道。
田畑が続く道を常陸大納言様は田植え前の準備をしている農民に目を向けていた。
「領民が安心して田畑で作業出来ているみたいだね」
「えぇ、常陸大納言様が広めている農業改革を取り入れており不作で悩まされる事が減り、農民の暮らし向きが少しずつですが良くなってきております」
「そうか、あれ取り入れてくれたか、米一作頼りだと天候に左右されて一度冷夏にでもなれば飢饉だからね。様々な作物を作って飢饉に備えないと」
「しかし、雑穀は値が付かなく・・・・・・」
米が豊作の時には稗や粟など値が付かない。
しかし、飢饉の備えとして農民に一定数作るよう法度を出している。
「俺は稗とか好きなんだけどね。まぁ~米が人気なのは仕方ないか。んとね、まだ畜産まで手出していないでしょ?伊達殿は?」
「ちくさん?」
「鬼庭殿、当家では鶏の他、豚や牛など食べるために飼育を進めております。それらを増やし飼う事を畜産と呼んでおります。こちらは高山右近なる者が奉行となり進めているのでいずれ農政改革のように指南書が出来るでしょう。肉は人々の体を強くする、そうでございますよね?御大将」
「四つ足として嫌煙されていた肉だけど人の体を強くするのには必要な食材なんだよ。余った雑穀はその家畜の餌にする流れを作っている最中なんだ。飢饉が起きたときには雑穀も家畜も人が食べれば飢えの難から逃れられるでしょ」
常陸大納言様が作られる料理に四つ足が使われることは有名で大殿様も大変気に入り、しし肉で真似をしていると聞いている。
「作物を無駄にしない、なるほど、そこまで考えられているとは」
「しばらく行き場がない雑穀あったらうちで買い取るから財政を任せている森力丸の所に仕えを出して。農民の暮らしが困らぬ値を付けるようには言ってあるから」
「はっ、その際はよろしくお願いします」
その様な話をしながら日が傾きだした頃、佐波古の湯温泉街入り口近くにある温泉神社の前に到着した。
「おっ、なにか賑わっているね」
「御大将、なりませんぞ」
「も~宗矩は心配性なんだから。神の力をお借りする俺が参拝しない失礼出来ると思う?」
「うっ・・・・・・それを言われると・・・・・・」
常陸大納言様と柳生宗矩がしばらくやり取りをすると私と柳生宗矩の警護で参拝する事となった。




