⑧②話 黒坂真琴伊達領へ・勿来編
【時系列・原作書籍⑤巻・第四章・磐城巡察】
3日後、うちの家臣達と黒坂家の家臣団が護衛する黒坂常陸様は五浦城を馬で出発、陸路を進み磐城に足を踏み入れた。
「綱元、せっかくだから勿来の山に少し入りたい」
「はっ、お任せください。おい、道沿いに皆散らばり常陸大納言様に無礼働く者いないかしっかり見張れ、場合によっては切り捨て御免」
「おいおい、伊達領はそんなに物騒なのか?」
柳生宗矩が睨んで言うが、
「宗矩が変にプレッシャーをかけているせいでしょっとに」
「御大将?異国の言葉で圧力とかの意味でしたよねその言葉?私はそのつもりはないのですが」
「わかってるって、身を案じてのことなのは。だけど、切り捨て御免は聞き捨てならない。綱元、もしもの時には生け捕りをしてなんで俺に敵意向けたかちゃんと聞き出して処罰するからね、勝手に殺さないように」
「はっ」
うちの領内で常陸大納言様を恨んでいる者はいないが、関東の乱のあと流れて住み始めた者がいるためその者達の動きが読めないために命じたのだが、常陸大納言様の民の扱い方としては気に入らなかったのだろう。
勿来海岸から少し山に入る。
以前、伊達家が陣を張った勿来の山。
「お~丁度山桜の季節だね~新緑に紛れ咲いている桜綺麗だね~吹く風をなこその関と思えども道も背に散る山桜かな」
「お~御大将にしては良い歌を読まれましたな、その歌なら慶次殿も文句は言いますまい」
「はははははっ確かに芸事に厳しい慶次だからね。でも残念、これは源義家が読んだ歌だよ。俺ならそうだなぁ~『勿来関 永久に染めよ 山桜』かな~」
「ほう、随分短い歌にまとめられましたな」
「俳句だよ5・7・5の歌ならすぐに思いつくんだけどね」
「いや、それでも良い歌かと。それなら慶次殿の手直しはありますまい」
「はははははっ、だと良いけど」
常陸大納言様と柳生宗矩のたわいもない会話を静かに聞く。
「『勿来関 永久に染めよ 山桜』・・・・・・勿来が山桜のように繁栄を願う歌と受け取りました。伊達家が永久に山桜のように毎年毎年山を明るく染める様に繁栄を願う歌、ここに歌碑を作り刻ませていただきます」
「おいおい、そんな事まで歌に盛り込んでいないから・・・・・・ただ、この山は少し整備して欲しいかな。大波から民が逃げ込む地としてね、ここは海がすぐ目の前だから」
「はっ、承りました。すぐに手配致します」
「桜をいっぱい植えて領民が春を楽しむ地になってくれたらいいかなぁ~」
「わかりました。やりましょう、なんでも仰ってください」
「御大将、あまり色々言うと鬼庭殿はここに城でも築きそうなので」
「はははははっ、綱元、あまり無理はしないでね」
この検分の後、この山に簡素な砦を造り、街道を往来する旅人を守る為の役所を置く整備をすることとなる。




