⑤④話 最上家の野望
【時系列・原作書籍④巻付近】
「殿、山形に忍ばせている草からの知らせで最上義光殿はどうやら秋田おぼこなる娘を集めているそうで・・・・・・黒坂常陸様の元に送るために」
我の母の兄、伯父最上義光は関東の戦いで織田方として戦い、幕府から羽前羽後を領地として拝領。
羽州探題に任じられている。
奥州探題の伊達家とは同格。
そこからさらに力を強める為に黒坂常陸様と親密になるよう考えるの自然のながれ。
しかも、羽後・秋田の女子は肌白くきめ細かく美人で有名。
その羽後で美人が多い地域から若い女を集め、黒坂常陸様に奉公に上がらせようと画策している。
我と同じ考え・・・・・・。
伯父最上義光は父上様と時を同じく安土城に登城して織田家へ臣下の礼を取っている。
その時、黒坂常陸様が鮭を工夫した料理を食している。
下調べをしていたのか不明。
いや間違いなく、多くの忍びを家臣としているのだから下調べはしていたのだろう。
伯父最上義光は無類の鮭好き。
鮭の皮を焼き焦がした家臣を厳しく叱責しているのは耳にしている。
その伯父の舌を鮭料理で納得させるどころか、舌を負かせた。
その伯父が黒坂常陸様と近づきたいと思うのは我の父と同じ事。
だが少し出遅れ関東で大きな戦が。
父上様はその前に小次郎政道を黒坂家奉公という形として織田家の人質と出している。
その小次郎政道は真面目な性格からよくつくし若輩ながら大名格の領地を持つ黒坂家家老となった。
それに焦ったのだろう。
「殿、小糸小滝姉妹は愛の方様の教育のおかげで黒坂家に奉公に出しても恥ずかしくないまでに育っております。最上義光殿が送る女子より先に送りませんと」
「うむ、そうではあるが噂では女子を物のように扱うと逆鱗に触れると。だから急がん。しかし伯父御の息のかかった者が黒坂家に先にのぼるのは良くない」
「・・・・・・殿、黒坂常陸様は実は女子ではなく男色だと噂を流しましょう。幾人もの側室を持ちながらまだ子が出来ておりません」
「お~それは良い考え、小次郎政道の他、柳生や真田の若者が重用されているから真実味がある。今すぐその噂を流せ」
「はっ、ではすぐに黒脛巾組に」
伊達政宗と片倉小十郎景綱の企てが『最上義康』と言う黒坂常陸守真琴が信頼する大名になるルートが誕生するとは誰も知らなかった。




