ライアーの望み
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ライアーの企み、そして…
アルシュとインドラは、宇宙空間で爆発する。
その爆発は、100キロを超えて、そこから深紅のドッラークレスと、漆黒のドッラークレスが出現する。
赤き翼を伸ばすアルシュの深紅のドッラークレス。
漆黒の翼を伸ばすインドラの漆黒のドッラークレス。
その二柱の正面には、ライアーと、ライアーが従える100メートルのロボット兵器の軍団があった。
その万軍であるロボット兵器と、二柱のドッラークレスが衝突する。
強烈な爆発、その規模は数十キロ級ばかりだ。
脚部のスラスターと胸部に両腕部にある砲口を唸らせるロボット兵器の軍勢。
そこへ、アルシュとインドラのドッラークレスが突進して粉砕、さらに、数キロ級の顎門を開き、天地を包み込む程の閃光のブレスを放ち、誘拐爆発させる。
あっという間に、万軍は消滅するも、次々と15万キロの超巨大な要塞、エグゼディス・ソラリスから、無限にようにロボット兵器達が湧き出てくる。
倒しても倒しても出てくる兵器に、アルシュは苛立つ。
そこへ、ライアーが妻と共にドッキングしている創世神機、デウスマギウスを操縦しながらアルシュに攻撃を加える。
その強さは、アルシュが放つドッラークレスと同等だ。
アルシュのドッラークレスが後退するも、直ぐに体制を取り直して、ライアーに攻撃する。
世界を滅ぼす程の閃光をぶつけ合うアルシュとライアー。
アルシュが
「どうして、こんな事をするんだ!」
ライアーが
「知れた事、私の力を向上させる為に、この世界の技術を向上させる為に」
アルシュは
「嘘を言うな! それは仮面だ。お前は…オレと最初にあった時、オレと同じ者達と関わったと言ったな」
ライアーがフッと笑み
「その通りだ。アルシュくんと同じ、超越存在者と関わったさ。四人とも…すばらしい人物だったよ」
アルシュが
「…確か、その四人は…」
ライアーが
「そうとも、散々に利用されて、その力を欲する愚か者達の出し殻にされたのさ。私は四人と誓った。同じように来るであろう超越存在の者を自分のようにしないで欲しいと…。何とかして…努力したさ。だが…学習した。所詮! 世界を変えなければ、愚かな連中は、同じ事を繰り返すと!」
アルシュが
「オレを助ける為にか…」
ライアーが
「その通りさ。それが約束した四人との誓いだ!」
エグゼディス・ソラリスの最上部にある千キロ級のコロニーの一つが外れて動く、それが変形する。
それは、白銀に輝く巨大な装甲龍だった。
それが、ライアーの元へ来た。
ライアーがそれと合身して
「さあ、この世界を変えるぞ!」
ゴオオオオオオオオオオオ
千キロ級の機龍が吠える。
アルシュは、自分の十倍もある機龍を、ドッラークレスから見上げる。
まだ、自身のドッラークレスの力を上げられる。
だが…果たして…人に戻れるだろうか?
アルシュの脳裏に過ぎったのは…クレティア達…友人と、アルテナとルシュルの家族達だった。
そして、みんなに渡したブラッドリレースの指輪を思い出す。
かけるしかない。たとえ、人としての己を失っても、家族が友人が戻してくれると…。
アルシュは自身の内側にドッラークレスへ更に呼びかけた。
爆発した。100キロの深紅のドッラークレスが変貌する。
赤き結晶で構築された翼を伸ばし、鎧のような龍の顎門を持つ1000キロ級のドッラークレスになった。
その頃、ワールストリアのヴィクタリア帝国の皇帝城では、アルシュ達の戦いをとらえた展望台の映像をアルテナ、ルシェル、クレティア、カタリナ、ノルンと、多くの人達が見上げていた。
ルシェル達は、アルシュが渡してくれた指輪が輝いているのを気づく。
それを無意識に強く握りしめる。
アルシュが帰ってくるのを念じる。
1000キロのドッラークレスになったアルシュの意識が保たれる。
ルシェル達の願いによって、自己意識が保たれる。
ライアーの機龍と、アルシュの超龍がぶつかる。
お互いが放ったブレスの閃光は、ワールストリアを覆い尽くす程の巨大さと苛烈を伴っていた。
◇◆◇◆◇◆◇
エドワードの救出に向かうヴァルハラ。
エドワードは捕まり、エグゼディス・ソラリスの千キロ級コロニーの一つ、その内部の宮殿の部屋に座らされて、アルシュ達の戦いを見せられている。
エドワードがそばにいるナレオンに
「こんな事を止めさせろ」
隣に立つナレオンが
「では、我らの王になっていただけますな」
エドワードが苦悶の顔で
「どうして、それ程までに、オレを王にさせたいんだ!」
ナレオンが
「貴方は、妹が王に相応しいと…。それは残念な事に妄想だ。あの王女には…人を治める力なぞ…」
エドワードが
「知恵だけで人を統治する事はできない。人身をまとめる象徴こそ、王だ!」
ナレオンが冷たい目で
「ならば、貴方は、知恵と象徴、権威を纏った王になればいい。私たちがこのようになったように」
と、ナレオンの背中から、鋼の翼が生える。
ナレオンの額が電子回路のような模様を明滅させる。
エドワードはそれを見て
「まさか…人を捨てたのか…」
ナレオンは嬉しげに笑み
「貴方の為に…人を捨て。アイオーンになることに戸惑いはない」
エドワードが座る椅子、それは王座だ。
その前に、かつてのエドワードを王にさせようとした貴族の子息達が並んでくる。
全員が鋼の翼を持ち、額や見える袖に、黄金の電子回路を全身に広げる。
彼らは、人を捨てた。アイオーン…機構天使になったのだ。ライアーの力で。
そこへ、天井を破る、青のレッドリーレス。
ヴァルハラのレッドリーレスだ。
素早くヴァルハラは、エドワードをつかみ飛翔、コロニーに開けた穴から脱出しようとするも、亜光速で追いついた。
「クソ!」とヴァルハラは悪態をつく。
その右手にいるエドワードが
「もういい、オレを…下ろしてくれ」
エドワードは自分の浅はかさを知った。
ナレオン達を追い詰めたのは自分自身だ。
だからこそ…そこで死ぬしかないと…。
ヴァルハラが
「出来ないね。アンタの帰りを待っている連中がいる。アンタの妹と約束した。必ず取り戻すってなぁ…」
エドワードは悲しげな顔を、ヴァルハラのレッドリーレスへ向けた。
ナレオンのアイオーン達が攻撃を放つ。
ヴァルハラのレッドリーレスさえ破壊すればいいのだが…。
その攻撃を弾いた存在がいた。
それはつなぎ目がないロボット、機神達だった。
ヴァルハラが
「遅かったなぁーーーーー」
「全くこっちにも準備があるんですよ!」
と、開けた穴には、無数の機神を従えているエネシスだ。
エネシスの背には緑のレッドリーレスがある。
エネシスが従える機神達が、ナレオン達のアイオーンと交戦する。
ヴァルハラは、飛翔を強め、エネシスの脇を通り過ぎ
「何時まで待たせていたんだ」
エネシスが
「こちらにも戒律があるんですよ。ですが、もう…大丈夫です。大いなる父の降臨がなされましたから」
◇◆◇◆◇◆◇
アルシュとライアーの超龍がぶつかるそこ、ワールストリアの中央部に、巨大な空間の歪みが出現する。
そこから、巨大な世界をつかむ機神の腕が伸びる。
それは、惑星サイズを遙かに超える白き機神だった。
全長、エグゼディス・ソラリスの15万キロと同等の、木星サイズの白き機神。
その中核にいるのは、白と黒の髪を交差させる四十前後の男、エネシスの告げる大いなる父であった。
機神を自在に創造、現化させる機神人類、ファイブ・エクソダスが第二世代にして、このワールストリアを見守る現人神が降臨した。
イブアベルが告げる。
「ライアーよ。そこまで、憎いか…」
アルシュは呆然として超龍を止め、ライアーは機龍から
「ああ…私は人の愚かさに辟易しているのさ」
イブアベルが、15万キロの機神の手をエグゼディス・ソラリスに伸ばし
「確かに、人は愚かだ。だが…その愚かさがあるからこそ、新たに進める。ライアーよ。お前は見たはずだ。あの四人を殺めてしまった者達の最後を…」
ライアーが
「自殺してわびた所で、何が変わる!」
イブアベルが
「人は、弱さを受け入れられるのだ。このアルシュの時代は、変わりつつある。ならば…」
ライアーが皮肉に笑み
「いいや、私は…私の父と同じく、人の悪意を信じるね」
イブアベルが
「そうか、ならば…決裂だな」
と、イブアベル、大なる父の超巨大機神が、エグゼディス・ソラリスの中央に正手を浴びせて破壊した。
だが、それは手応えのないモノだった。
砕けたエグゼディス・ソラリスの柱部分が、まるで結界のように配置される。
ライアーが笑みを浮かべて
「全ては揃った。さあ、完全なる者達よ。シャンバラを…ここに…」
ワールストリアがある次元の遙か上の高次元に、一人の神人が立っていた。
その神人は、ニヤリと笑み、何かを振り下ろした。
次元を突き破り、その一線がワールストリアがある場所の空間に到達して、その場の高まった次元の力を解放した。
超位存在であるアルシュとインドラにヴァルハラ、機神人類であり世界の父であるイブアベル、そして…次元を超える叡智の恩恵ライアー。
その全てを飲み込んで、巨大な次元のバイパス領域を構築する。
そこは、七色に輝く世界である。
「ああああああ!」
アルシュは、急激に力を吸われて意識が飛びそうになるも…
”アルシュ!”
と、アルテナ、ルシェル、クレティア、ディリア、ノルン、カタリナ、クロリア、クリティアの声が聞こえて、踏み止まるも、1000キロの超龍が溶けていく。
むき出しになるアルシュへ
「掴まれーーーーーー」
ノアドとユースが操縦する宇宙船のタラップから手を伸ばすインドラとヴァルハラにエドワード。
それにアルシュは手を伸ばして、インドラにヴァルハラとエドワードがその手を掴んでアルシュを回収した。
アルシュを回収した宇宙船は、ノアドがフルにスロットを解放して、エンジンが焼き切れる寸前まで回す。
ノアドが叫ぶ
「いけええええええええええ」
宇宙船が唸る。
その背後には迫る七色の空間。
それから脱兎して、ワールストリアへ宇宙船は帰還した。
七色の領域で、ライアーが佇み装備を解放すると、補助をしていた伴侶のキャロルが
「以外とやれたな」
ライアーが笑み
「ああ…予定通りだ」
そこへ亜肥子 礼祖が来て
「調節が終わった。後は…オートで済む」
ライアーが
「助かった。裏方ばかりさせてすまない」
亜肥子 礼祖は笑み
「別に、こういうのは得意だ。だが…ナレオン達が…」
ライアーは笑み
「大丈夫だ。こうなれば、ナレオン達の望み通りになるのは必定よ」
亜肥子 礼祖が
「しかし、ありとあらゆる、関連ある時空文明をつなげるバイパス都市を構築するなんて…驚く事をする」
ライアーは頷き
「これで、私の望みは叶った。後は…裏で操作するだけ」
◇◆◇◆◇◆◇
ワールストリアの近くの宇宙域に、ワールストリアと繋がる次元バイパスが出現する。
その拡大を抑える為にイブアベルの超級機神が広がりの領域を掴み、力を込めて拡大を固着させた。
イブアベルは、その次元バイパスから見える領域に驚く。
「なんと言う事だ」
見つめる先には、膨大な数の平行世界の惑星達が見えた。
その惑星達の中で、この次元バイパスに気づく者達がいた。
その気づいた者達が見ているモノ。
全長15万キロの地球独楽のように変貌したエグゼディス・ソラリスに向かって、調査の宇宙戦艦や、時空戦艦を飛ばして来る。
そして、その次元バイパスの一つに、イブアベルが普段いる惑星もあった。
ワールストリアは…幾つもの次元を結ぶ交差点の時空都市を持った。
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