クレティアの旅行
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クレティアの旅行に付き合うアルシュ達は…。
オラ、いや…オレはアルシュ。
現在、友達と共に豪華飛翔客船の旅をしているぞ。期間は一週間。
中々に快適…な筈だぞ。多分…
アルシュは、豪華飛翔客船の中央にあるプールサイドで、飲み物を持っていく。
待っているのはルシェルとクレティアだ。
「ほら…」
と、アルシュは水着のルシェルとクレティアに渡す。
ルシェルは白のワンピースのような水着と、クレティアは赤の胸とパンツだけの水着だ。
「ありがとう」とルシェルが微笑むと、アルシュは嬉しげに微笑み
「いいさ」
クレティアはそれが気に入らずに
「遅かったわね」
意地悪を言う。
アルシュが呆れ気味に
「目的の物が近くの店先になかったんだよ」
と、アルシュは二人が寝そべるビーチベッドの隣に開いているビーチベッドに座る。
クレティアは、アルシュを見詰める。
アルシュは急激に身長が伸びて大人の体つきになる。
対して自分は…まだ、発展途上だ。
あと、二年すれば…きっと同じ位に大人の体に追いつくはず。
アルシュがクレティアの視線に気付き
「なんだ?」
クレティアが
「別に…アンタ、急に伸びたから…」
アルシュは頭を掻き
「ああ…そうだな。急だったな」
クレティアが
「どうしたら、そんなに急に伸びるのよ。何か、変な物でも食べたの?」
アルシュは微妙な顔で
「いや、いたって普通だと思うぞ」
そこへ「おーーーーい」と呼び掛ける一団がある。
ノルンにカタリナ、そしてクロリアとクリティアの四人がプールでボール遊びしている。
カタリナが
「三人ともこっちに来いよ」
と、呼び掛ける。
ルシェルは飲み物を飲み終えて
「アルシュ、行きましょう」
アルシュは肩を竦めて
「ちょっと、ゆっくりしたいから、ルシェルは行きなよ」
ルシェルは肯き
「分かった。気が向いたら来てね」
「ああ…」
と、アルシュは手を振る。
ルシェルが四人の元へ行く。
クレティアと二人になった時に、クレティアが
「あと、もう少しであの慰霊祭ね」
アルシュは少し顔が固まり
「そうだな」
クレティアはアルシュを見詰めて
「慰霊祭に参加するのよね。何を言うつもり?」
アルシュは伏せ目気味に
「偉そうな事は絶対に言わない。今後、このような悲劇を絶対に起こさないようにするってだけしか…」
クレティアが
「後悔している? あのアルダーネ平原の戦いを」
アルシュは肯き
「している。もっと良い方法があった筈じゃあないかって」
クレティアが渋い顔で
「私が言ってもしかたないけど…でも、どうしようもなかったと思うわ」
アルシュは驚きの顔を向けて
「前に、土下座謝罪しろって言っていたヤツの発言とは思えないな」
クレティアの眉間が苦しそうに動き
「あの時は…色々とあったの。でも…今は…ないから。私も色々と考えたんだけど。だって、もし…何をしなかったら、アンタの国は蹂躙されていたわ。もし、アンタの立場だったら私も同じ事をしたと思う。だから…仕方ないと思う」
アルシュは空を見上げて
「どちらにせよ。オレは大罪者だ。沢山の人を殺した。それは事実だ」
クレティアが
「アンタがそうしなかったら。ヴィクタリア帝国では、もっと多くの人達が犠牲になったわ。いえ、寧ろ…今後、数十年は世界中で大戦が続いたかも」
アルシュがクレティアに微笑み
「まさか、君が慰めてくれるなんて…以外だ」
クレティアがアルシュの微笑みを見て顔を真っ赤にした次に視線を反らして
「まあ、そう思っただけよ」
アルシュが
「だが、その発現は今後、オレの前以外で言わない方がいい。クレティア、君は…ルクセリオン共和国の権力の中枢にある大貴族の娘だ。祖国を貶めるような発現は、クレティアの未来に傷をつける。気をつけろよ」
クレティアは苦しそうな顔で
「分かっているわよ」
アルシュが
「今は、同じ学校に通う学友という事で、この関係は許されるかもしれないが。数年後、オレが軍士官学校へ入った場合は、許されないかもしれない」
クレティアは飲み物を見詰める。
アルシュの言っている言葉の意味が分かる。
自分は、ルクセリオン共和国の一翼を担うロディオン家の人間。
アルシュは、ヴィクタリア帝国の皇子。
子供の頃に身分の違いは関係ない。だが、成長するに従ってそれが大きな意味を持つ。
身分や階級差をどうしようない事だ。それが人間社会だ。
だから、クレティアにはとある予感がある。
この曖昧な年齢の時間だけが、アルシュとの思い出を作れると…。
クレティアは、飲み終わったグラスを置いて、アルシュの手を取り
「さあ、行きましょう」
と、アルシュを連れて、みんながいるプールへ飛び込んだ。
この限られた思い出の時間を無駄にしない為に。
それはアルシュにも分かっている。
将来、きっと自分達は分断される。
それはどうしようもない事実なのだ。
そうして、慰霊祭までの間、クレティアの豪華飛翔客船の旅に付き合い、アルダーネ平原に来て、アルシュは慰霊祭に参加する。
大きな白い慰霊塔を前に、多くの人達が並んで慰霊祭が始まろうとしていた。
その白い慰霊塔の向こう側、遠くにはアルシュのドッラークレスのロゼッタストーンの残骸が見える。
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