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ぼく最強の皇帝になります!  作者: 赤地鎌
13歳から

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57/63

頭痛なアルシュ

次話を読んでいただきありがとうございます。

よろしくお願いします。


クレティアがアルシュの元に来る事になり…


 アルシュは頭が痛かった。

 その原因は、クロリアとクリティアの連絡だ。

 魔導端末に、二人から…

 

 クレティア様が、そちらへ向かいます。

 どうか…クレティア様のお願いに乗って、一緒に旅行してください。

 どんな不満も愚痴も私達が聞きます。お願いします。


「おお…」

と、アルシュは頭が痛かった。

 折角、ヴィクタリア帝国に帰って来て、ルシェルや、アルテナ、ノルン、カタリナの四人と共に楽しくすごしていたのに…台無しだ。

 メルカバーの自宅の部屋で隣にルシェルと共にベッドで寝転がっているアルシュは

「よし! 病気という事で…会えませんにしよう」

「んん?」

と、ルシェルは首を傾げ

「どうしたの? さっき端末を見ていたけど…」

 アルシュは正直に

「会いたくないヤツがくるから、仮病を使って会わない事にする。だから、ルシュル…オレの看病のフリをして欲しい」

 ルシェルは困惑を見せるも…

「ああ…うん、分かった…」

と、同意してくれたが…。


 ドアがノックされ母のファリティアが顔を見せ

「アルシュ! 明日、留学先のご友人が来るらしいから…会ってあげなさい」

 アルシュはファリティアを見て

「会いたくないから! 病気で寝ているって伝えてくれ!」

 ファリティアは戸惑い

「ええ…元気だって言っちゃったわよ」


 アルシュは、上にいるベッドに背中から沈んだ。

 終わった…あのクソ女に会わないといけない。

 楽しかった帰宅が…終わった。

 ルシェルと最愛の許婚を得て、本当に将来、帰ってくるのが楽しみでしかたなかったのに…あのクソ女のせいで…全部、気分が台無しだ。

 この絶望を何処に向ければいい。


 落ち込んでいるアルシュにルシュルが近付き

「どうしたの…?」

 アルシュは、ルシェルの腰に抱き付く。

 怒らない、ルシェルは優しくアルシュを撫でてくれる。

 本当に自分だけの女神だ。


「最悪なヤツが来る…」

 アルシュの冷たい声が、気持ちを物語っていた。


 母ファリティアは、顔を引き攣らせて

「いや、だって…ロディオン家のご息女よ。そんな悲観的に」


「そのご息女様は、前にオレに、いちゃもんを付けて奴隷にしようとしたんだぞ」


 アルシュの飛んでも無い言葉に、母ファリティアとルシェルは固まる。

 本当に嫌いなんだ。好感度ゼロ。

 今までそんな人間に会った事がない二人は、アルシュの態度にちょっと驚いている。


 ルシュルが

「そんなに嫌いなら…会わなくてもいいよ。家にいようか…」

「うん。そうする」

と、アルシュは同意した。


 でも…そんなに上手くは行かなかった。



 ◇◆◇◆◇◆◇


 アルシュはヴィクタリア皇帝城へ呼ばれた。

 なんと…ルクセオン共和国の四大貴族の一角であるロディオン家、子女。

 クレティア・ハーベスト・ロディオン

と、しての表敬訪問だった。


 アルシュは顔を引き攣らせる。

 父、ヴィクタリア皇帝アルファスの右でアルシュは皇族の皇太子の正装をして、お出迎えになる。

 引き攣った顔のアルシュの目の前には、深紅の豪華なドレスを纏ったクレティアと、両脇に女性用のタキシードを纏うクロリアとクリティアがいた。

 無論、この場にも、もう一人の母にして正妃のヴィクティアと、次期皇帝のアルテナがいた。

 アルテナは、父アルファスを挟んで左にいる。

 

 クレティアがお辞儀して

「お初にお目に掛かります。ルクセオン共和国のロディオン家、子女

 クレティア・ハーベスト・ロディオンでございます」

と、普段の高慢極まりの態度とは打って変わって、淑女だ。

 

「チィ」とアルシュが苛立ち気味で舌打ちする。

 それを父アルファスと、姉同学年のアルテナは聞いて、アルシュに困惑を見せるも、礼儀正しいクレティアに

「よくぞ、来てくれた…」とアルファスは労い「其方は…我が息子の友人だと…」

 クレティアは、信じられない程の美しい穏やかな微笑みで

「はい、何時もアルシュ皇太子様には、常々、お世話になっております」

 丁寧な礼節ある貴族の態度である。

 またしてアルシュは「チィ」と舌打ちする。

 二度の舌打ちに、アルファスとアルテナは、クレティアを嫌っているのを察する。

 

 正妃ヴィクティアは、フッと口元だけの笑みだ。

 事情を知っているからこその…だ。


 クレティアは、微笑みをアルシュに向け

「アルシュ皇太子様…急な、わたくしの訪問を」

 ズカズカとアルシュはクレティアに近付き

「猫かぶるのは止めろ! ウソくせーーんだよ」

 言葉が荒いアルシュに、父アルファスが

「お、おい、アルシュ…その言い方は…」

と、心配になって止めに入る。

 アルテナも

「アルシュ。ここは公式の場よ。それなりの態度で…」

と、父と共に止めに入る。


 正妃ヴィクティアは、静観する。


 クレティアがフッとバカにした顔の次に

「流石、おバカ皇太子ね」

と、礼儀正しい口調が変わった。


 付き人であるクロリアとクレティアは項垂れる。


 クレティアは偉そうに胸を張り

「お元気ですか、ぼっちの皇太子様。故郷にしか友達がいないなんて、なんて寂しいんでしょうね」

 アルシュも胸を張り堂々と

「ウルセぇ。お前みたいに、家の権威で人を従えているバカよりは、ましだ」

 クレティアは偉そうに

「おほほほほほ。妾の子が皇族になれたからって偉そうに! アンタの母親なんて所詮、売女」

と、告げた頬をアルシュは叩いた。

「ウルセぇ! オレの母親をバカにするなんて許さない!」

 一瞬で、アルシュの怒りを引き出したクレティアは、叩かれて顔を横に背けたが、直ぐに鋭く偉そうな目を戻して

「レディーを殴るなんてどういう教育をされているのかしらねぇ…」

 アルシュが鋭い目で

「お前なんてクソ女、レディーとは思っていないから安心しろ!」


 険悪な雰囲気のアルシュとクレティア。

 アルテナとアルファスは、本当に二人は険悪であると理解した。

 そこへ正妃ヴィクティアが来て

「クレティア殿…どういう事で、表敬訪問なされたのですかな?」

 クレティアは、偉そうに胸に手を置き

「わたくし達、ロディオン家が建造しました。豪華客船への旅へのお誘いに来ましたのよ。アルシュ…さっきの無礼を跪いて詫びるなら…豪華客船の豪華な旅のお供をさせてもよろしくてよ」

 アルシュは、直ぐに背を向け

「知るかボケ」

と、離れようと背中にクレティアは持っていた扇子を投げた。

「淑女の誘いを断るのは、紳士としての無礼! そんな事では、将来のヴィクタリア帝国の安泰も危ういですわね」

 アルシュは肩を竦めて

「オレは、皇帝にはならない。将来のヴィクタリア皇帝は、姉のアルテナだ。このバカ女」 

 クレティアは、早足でアルシュの前に行き、アルシュを叩こうとしたが、その右手をアルシュは止めた。

 クレティアが叩こうとする右手に力を込め

「将来、アンタが…ヴィクタリア帝国にいられなくなっても、助けてやらないわよ!」

 アルシュはその右手を強く握り

「けっこうだ。死んでもキサマの世話には、絶対にならない」

 怒りで握る力が強まり

「痛い!」とクレティアが叫び、アルシュが冷徹な顔をして離して、クレティアが握られた右手の手首を押さえて

「ああ…痛い…これは折れたか、ヒビが入りましたわ…。どう始末をつけるのでしょうね…。この無礼を」

 アルシュは、見下した顔で

「分かった。医者に診せるから、さっさと、ここから出て行け!」

 クレティアは苛立ち

「フン。全く、レディーの扱いを知らない乱暴者! 将来は、独身で寂しく死ぬのが決定ですわね」


 周囲が困惑を見せる。

 暫し、間が空く。


 クレティアは、何故…間が空いたのか…分からなかった。


 アルシュが淡々と

「オレには、婚約者がいる」

 クレティアが困惑を見せる。

「今…何と?」

 アルシュは冷静な目で

「オレには、将来を誓った婚約者がいる。だから…あと…五年後の18になった時に、婚約者と結ばれて、ヴィクタリア帝国の軍士官学校へ入る」

 クレティアが、クロリアとクリティアを見ると、二人は申し訳ない顔をする。

 伝えていなかった。アルシュがルシェルと婚姻して、五年後にヴィクタリア帝国へ必ず帰ってくると…。

 

 クレティアの目付きが更に鋭くなり、左手でアルシュを叩こうとした。

 それをアルシュが防いだ瞬間、クレティアは右足でアルシュの左足の弁慶の泣き所を蹴った。

「ぐおおお!」

と、アルシュは痛みで蹴られた泣き所を押さえて跪くと、クレティアは、その場から背を向けて離れて行った。

 それに従者のクロリアとクリティアは、困惑しつつも、一同にお辞儀して

「失礼しました」

と、クレティアを追い掛けていった。


 痛みで足を押さえるアルシュにアルテナが

「アルシュ…あの態度は…良くないと思うわよ」

 アルシュが苛立ち気味に

「嫌いなんだよ。あのクソ女」

 そこへ、ヴィクティアが近付き

「アルシュ…わたくしの言葉を憶えていますか?」


 ギリッとアルシュは歯軋りする。

 アルテナの荒い素養の慣れる為に、クレティアに付き合わせていると…。

 事実、クレティアの傲岸不遜に慣れたお陰で、アルテナが普通のレベルになるくらいになった。


 要するに強い刺激に慣れる為に、更に強い刺激に適度に晒されろ…と。


「ああああああ」

と、アルシュは苛立ちで頭を掻いて

「謝ってこい…と」

 ヴィクティアは冷静に

「女を敵に回すと、後が怖いですよ」


 アルシュは背を向けて

「分かりましたよ!」

と、クレティアの後を追った。



 クレティアは、皇帝城を着飾ったドレスで走るも、思うように足が進まない。

 なので疲れ切ってしまい、トボトボと庭園が見える廊下を歩く。


 クレティアは、ワガママだ。

 自分が大家の貴族として生まれ、周囲は何時もクレティアの伺いを立てている。

 疎外感だ。自分は普通の子供達とは違う。

 何時も傍についてくれる、クロリアとクリティアも、所詮はロディオン家の名があるからいるだけ。

 それを覗けば…自分は一人だ。

 だからこそ、周りを試すようにワガママになった。


 そして、自分のワガママの一環として、ルクセオン共和国を復興させている財団主のアルシュを従えようとした。

 自分の大切な叔父も酷い目になった事もあり、そうしたが…。

 成らなかった。

 圧倒的すぎる力を見せつけられて恐怖した。

 同時に凄いと…感じた。


 そして、自分の思い通りにならないアルシュが…忌々しくも嬉しかった。

 この世には、自分と対等な人物がいる。

 自分の嫌な感情をぶつける事もあったけど、向こうも同じく返してくれる。

 同じ人としてケンカが出来た。

 だからこそ…あることを思った。

 自分と対等な人間、しかも異性だ。ずっと隣にいてくれないか?…と。


 アルシュの傍にいる時こそ、自分が自分であり、孤独ではないと…。

 アルシュの容姿も、クレティアの好ましい容姿だ。

 身長が急に高くなり、端正な顔立ちとなり、眼光が鋭い。

 知性も高い。

 何より、強大な力を持ち、何者の支配さえも及ばない。

 性格は、理屈っぽいので、異性にはモテないだろう。

 許婚がいると聞いたが…アルシュの性格では、許婚に嫌われてしまうのは目に見えていた。

 将来のヴィクタリア帝国での立場も危ういと知っている。


 お互いに言い合って、腐れ縁のような感じで、対等で…そんな二人の未来を描いた事があったのに。

 クレティアは、傍にある柱に顔を寄せ「…ぅ…ぐ…」と隠れて泣いた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いします。

ありがとうございます。

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