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ぼく最強の皇帝になります!  作者: 赤地鎌
13歳から

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54/63

帰国、アルシュとルシェル

次話を読んでいただきありがとうございます。

よろしくお願いします。


アルシュは夏期休暇で、帰国してルシェルと…


 アルシュは、久しぶりに故郷に帰国した。

 一人で飛翔船のチケットを買って、一人でヴィクタリア帝国に帰って来た。

 迎えを寄越すと、ヴィクティア母上は言っていたが、一人でやってみたいとして、自分でチケットの手配から色々とした。


 学園都市戦艦ムツは、夏の長期休暇に入った。

 この夏休みの日数は、三週間程度と短い。

 その代わりに、秋と冬に、年明けに二週間程度の長期休暇が入って、総合的には日本の夏休みや冬休みより多いだろう。


 アルシュは飛翔船の個室で横になっていると、端末に通信が入る。

 その相手はクレティアだ。

「なに?」

と、アルシュは不機嫌な態度で出る。


『オホホホホホ。アルシュ・メギドス・メルカバー・ルー・ヴィクトリアくん。

 貴方は、どんな休暇をお過ごすのかしら。私は、南の島にいってバカンスや、遺跡巡りや、豪華飛翔客船に乗ったりの、優雅に過ごしますわ』


「あ、そう。切るわ」

と、アルシュは切ろうとしたが


『そこは、うらやましがる所でしょう!!!!!』

と、通信のクレティアは止めて

『でも、どうしても加わりたいって言うなら…』


「いや、どうでもいい。いらんわ。じゃあな」

と、切ろうとするアルシュに


『ま、待ってーーー アルシュくん』

とクロリアの声が

『その…クレティアお嬢様は、アルシュくんともっと仲良くなりたいと思っていますから。ねぇ…。そこを』


 更にクリティアが

『アルシュくん。お嬢様が素直じゃあないって分かっているでしょう。だから…ね』


 アルシュは淡々と

「その辺りは分かっている。だが、今後の予定は入れられない。国に帰ったら色々とやらなければならない事がある。前みたいに妾の子だから…外される事がなくなったからな。式典やら祭典に参加する義務があるんだよ。

 それに…家族とも友達とも、そして…許婚とも会いたい。過ごした」


『そうですか…』

と、クロリアの声がして

『分かりました。じゃあ、お気を付けて…』


「ああ…」とアルシュは切ろうとしたがクレティアが

『じゃあ、もし…そちらに行ったら、家族を紹介して…貰えるのは当然よね!』

と、途中から高慢な言い方になった。


 アルシュは眉間を寄せた次に

「まあ、ルクセオン共和国の外交としてきた貴族なら、それなりの対応をするがね」


 クレティアは

『オホホホホホ! それは当然ですわ!』


 アルシュは面倒クサくなって切った。

「ウルセぇ…女だなぁ…」

 もう、端末を手にしたくなくて、テーブルの上に雑に置いた。


 そして、暫し休み、夕食を取り、飛翔船が移動する下にある夜景を通路甲板で見ていると、不意にルシェルの事が過ぎった。

 

 アルシュは、呆れように頭を掻いた。

 帰ってから会いたい人物にルシェルが過ぎったのだ。

「全く…」

 自分で思いもしないくらいに、ルシェルの事が気になっていた。

 要するにルシェルの事が好きなのだ。

 だが、自分の気持ちを押し通して、ルシェルを不幸にしたくない。

 ルシェルは、自分を一番に大事にしてくれる女の子だ。

 その女の子の幸せを一番に考えなくてはならない。それが自分でなくてもだ。


 誰かを一番に大切に思うなら、ゲスな我執、私心より、相手を思いやる相手の為の行動と言葉だ。

 恋愛とは、自分のエゴを通すなんて漫画で読んだ事がある。

 確かにエゴという自分勝手、相手の勝手を合わせて、繋げるのが恋愛なのかもしれない。

 だが、恋愛の時期は短い。

 十代くらいから、二十代後半までだろう。

 好きだ惚れたで十分かもしれないが…それだけを重点に置いた人生に意味は無し。

 人生とは色んな答えや真実を含んでいる。

 人それぞれの人生の答えや真実、道がある。どこへ辿り着こうと、それはその人の人生なのだ。

 どこかの胡散臭い、設定がありきたりのテレビドラマとは違うのだ。


「はぁ…説教くさい中山 ミスルってのが抜けないなぁ…」

 自分の顔を、夜の窓に映して見る。

 何となく、近い顔立ち故に、同じ事を考えてしまうのかなぁ…。

 だけど、中山 ミスルとは人生が違う。

 きっと、この人生にも、その時には無かった答えや真実に出会うだろう。

 そう思いつつ帰路の旅を終えて、ヴィクタリア帝国に帰って来た。



 ◇◆◇◆◇◆◇

 

 アルシュは、渡り橋を降りていると…。

「アルシューーーーー」

と、手を振ってくれる女性がいる。ルシェルだ。

 ルシュルは十四になった。

 ドレスを纏い、着実に大人の女性への道を歩んでいる。

「ルシェルーーーー」

と、アルシュは手を振って近付くと、ルシェルが走ってきてアルシュに抱き付く

「お帰りーーー」

 身長差25センチ、アルシュの身長は175センチになり、まだ伸びている。

 ルシェルは150センチ、年齢相応らしい。

 抱き付く様は、どこかの兄が妹を抱き締める穏やかな雰囲気がある。


 アルシュはルシェルを抱き締めながら

「ありがとう。お迎え…」


 ルシュルはアルシュに抱き付いたまま

「うんん。こうして、アルシュを一番に抱けるんだから、役得よ」


 アルシュがルシェルの頬に触れながら

「なぁ…どこかで二人だけで食事をしよう。色々と話したい」

 ルシェルは肯き

「うん。行こう…」


 アルシュとルシェルは手を繋ぎ、港街にある何処かのレストランに入って食事をする。

「そういや…ノアド兄とユース兄は? 一緒に来るはずじゃあなかったの」

 隣に座るルシェルは、肩を竦めて

「士官学校で、急な試験があったらしいから、行けないって…」

 アルシュは首を傾げ

「急な試験?」

 ルシュルは苦笑して

「軍に所属すると、緊急の案件があったりするから。それに対する演習だと思うわ」

 アルシュはカップを飲み

「実戦的なんだなぁ…」

 ルシェルは額を擦り

「確かに士官候補生としての勉強もあるらしいけど、半分は、実戦を想定した訓練ばかりだからね。軍隊ってのは民間とは違うのよ」


 アルシュはルシェルから、軍隊と民間が違うという言葉を聞いて少し驚いた。

 軍閥にいる貴族は、民間との違いが分からなくなる可能性がある。人は住む世界によってしか世界を見る事でしか分からない。

 ルシェルなりに、自分の家、陸軍系統の大貴族ダルシュン家と、周囲とでは違うという空気を感じ取っているのだろう。

 少しばかりの許婚の成長を見られて良かったと…アルシュは思った。


 アルシュが

「ノルンとカタリナは…確か…」

 ルシュルが

「ええ、家の作っているキングス級ゴーレムの製造方法を勉強しているから忙しいって」

 アルシュは

「もし、こんな事にならなければ、一緒に勉強していたかもなぁ…」


 話していると、料理が二人のテーブルに運ばれて来た。

 軽めのスパゲティと、サラダにラザニアと、スープだ。

 アルシュとルシェルは、テーブルに並んだ料理を、二人で分け合って食べる。

 その風景に違和感はない。それが当たり前として、二人して料理を食べ合い分け合う。


 そうしていると、ルシェルが

「ねぇ…向こうの学園都市戦艦ムツってどんな感じ」

 アルシュが

「いや、何時も端末で話している通りだよ」

 ルシェルが、少し俯き加減で

「クレティア・ハーベルト・ロディオンって…どんな人?」

 アルシュが嫌な顔をして

「ああ、あのバカ高慢クソ女ね」

 ルシェルは酷い言い方に吹いてしまった。

「ちょっとアルシュ…言い方が…」

 アルシュは嫌な顔をして

「事実だ。何時も高慢で、とにかく偉そうで、上から目線で、相手をしているだけで疲れるクソ女だよ」

 ルシュルは微妙な顔で

「嫌いなの?」

 アルシュは肯き

「ああ…嫌いだ。そのクソ女の所為で、学園都市戦艦ムツに残る事になったし、まあ…サポートって言う嫌がらせだな。まあ…ソイツに付いている付き人のクロリアとクリティアには、世話になっているけどね」

 ルシェルは固い顔で

「異性としては魅力ある?」

 アルシュの眉がへの字に曲がり

「中身を知らない野郎だったら…外見だけ見れば、確かに美人だ。だが…オレは中身を知っている。クソだな。昔、中山 ミスルの時に聞いた歌で

 ♪外見だけのクソな女に、惹かれているオレ等、パンピーポー♪

 なら、良いかもね。オレは違うけど…」


 ルシェルは、アルシュの酷い言い方にちょっと引いてしまうも…

「そう、それなら…心配ないか…」

 アルシュがルシェルを見詰め

「心配って?」

 ルシェルがアルシュから目を背け俯き加減で

「その…クレティア・ハーベルト・ロディオンのロディオン家は、アルシュと娘のクレティアが結ばれれば、良いかなぁ…って噂がね」

 アルシュが苛立った顔で

「あのクソ女に惚れるくらいなら、死んだ方がいい」

 ルシェルはフッと笑み

「もう、そんな酷い言い方、外でしないでね」

 アルシュが遠くを見る目で

「善処するが…険悪の仲だからな…。当人と罵り合っても問題ないだろう」

 ルシェルは苦笑いをしていると、アルシュがそれを見詰めて

「なんで、そんな事を聞くんだ?」

 ルシェルは、アルシュを見詰めて

「アルシュとの許婚の条件て、お互いが25歳までの間に、好きな人が出来たら解消するって誓っていたから…」

 そう、ルシェルは不安だったのだ。アルシュの気持ちが変わってしまい、自分がフラれるかもしれないと…。

 アルシュは右にいるルシェルを抱き寄せ

「そんな事は絶対無いから。気持ちが揺らいで誰への所へ行くなんてないから」

と、ルシュルの黒髪を優しく撫でる。

 ルシェルは、アルシュの胸の布を掴み

「ねぇ…もう…許嫁なんて約束…止めない」

 アルシュはハッとする。

「そうか…ルシュルには…」

 ルシェルは首を横に振り

「許婚じゃあないくて、アルシュと将来を共にする伴侶になりたいの」

 つまり、許婚から婚約者になるという事だ。

 アルシュが

「約束の…期限が…」

 ルシェルは

「もう、この気持ちはずっと変わらないから。アルシュが遠くに行って不安なの。アルシュは将来をどうするつもり?」

 アルシュはルシェルを抱き締めながら

「それは勿論、ここへ帰ってくるさ」

 ルシェルはアルシュの胸に頬を寄せ

「帰って来た後は?」

 アルシュは優しくルシェルを撫でながら

「次期ヴィクタリア帝国皇帝アルテナの下に入る為に、何処かの軍士官学校に入るつもりだ」

「何年後に?」

「18の四年後にだ」

「アルシュ、ヴィクタリア帝国では、男女が18歳になると、お互いの意思で結婚が出来るの。私ね。アルシュと交わした約束を思い出すと不安になるの…。お互いに誰か別の好きな人が出来たら終わりって…私…不安で堪らないの。私が未熟なのかもしれない。でも…やっぱり、好きな人と離れているのって辛いの。ほんの数ヶ月前まで、当たり前に傍にいてくれた好きなアルシュがいないだけで…不安なの、怖い…」

 

 アルシュは辛い顔をする。

 端末の文面では、ルシェルは元気に見えた。でも、実情は違ったようだ。

「オレは…どうすればいい?」

 ルシュルはアルシュの腕の中で、アルシュの顔を見上げて

「新しい約束をして、四年後に私を迎えに来るって。アルシュの伴侶としてズッと傍に置いてくれるって…」

 アルシュは、今までにない展開で困惑していると、ルシェルが顔をアルシュの胸に埋め

「お願い。私をアルシュの妻に、お嫁さんにして…」

 

 アルシュの頭の中で、尾崎豊のI Love youが流れてくる。

 ルシェルの気持ちが痛い程に伝わる。

 腕のなかで、ルシェルが震えている。拒絶される恐怖と、自分の気持ちに嘘をついていない本気を込めている。


 始めてだった。こんなに女性を、彼女、ルシェルを好きになっていく自分をアルシュは感じる。

 だから、アルシュはルシェルを深く抱き締め

「本当に良いのか? オレで?」

「アルシュがいい。アルシュの隣がいいの…」

「オレも…ルシェルの隣がいい。だから、新しい約束をしよう。四年後…ルシェルを迎えにくるよ」

 ルシェルは顔を上げて涙を零している。

「うん。だから…もう…頬や額だけの、いたわりのキスじゃなくて、本当の…」

「分かった」

と、アルシュは、ルシェルに顔を近づけ、額を合わせてお互いに見つめ合いつつ愛し合う二人の口づけをした。

 少し口づけして、そして次は…深く長く続くキスをした。


 中山 ミスルの時に感じる事がなかった、本当の愛し合うキスに、アルシュの気持ちが満たされてしまう。


 どのくらい続けたのか分からないくらいの口づけを交わした二人は、自然とお互いに寄り添ってしまう。

 二人だけの余韻に漬っていると…。


 ボキボキとアルシュの左にある通路で、指が鳴る音がする。

「随分、愛し合っているんだなぁ…お前等…」

「ルシェル…アルシュ、何をやっているんだ…」

 なんと、そこにはノアドとユースの怒りのオーラを出している状態があった。


『あ!』とアルシュとルシェルは声を上げた。


 素早く、ノアドはアルシュの左、ユースは妹ルシェルとアルシュの間、アルシュの右に入り、二人してアルシュをガッチリと肩に腕を回してホールドして

「おい、小僧! どういう事か説明して貰おうか…」

と、怒りの不動明王のノアド

「じっくりと説明する責任があるよね…アルシュくん…」

と、笑っているが青筋を額に浮かべるユース。


 アルシュは、ホールドされる両肩にもの凄く重い力を感じつつも、ここで引いては、ダメだとして

「ルシェルと約束したんです。四年後に迎えに、伴侶にすると…だから、いだだだだだ」

 ノアドとユースのホールド力が倍になった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いします。

ありがとうございます。

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